日経新聞による世論調査(回答:1043件)の結果、アベノミクスによって、今後景気が「よくなると思う」と考えている人は36%で、「よくなるとは思わない」の47%を下回っていることがわかりました。また、世帯の所得増に関しても「期待できる」の14%に対し、「期待できない」が77%と、ネガティブな感想を持っている人の方が多くなっています。
春の労使交渉では、大手企業を中心に賃上げの傾向が見られ、また、政府による3月の月例経済報告では、景気の基調判断を8ヵ月ぶりに上向きとするなど、景気の向上を示す報道が見られますが、世論の回答には反映されていないようです。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q連日、日経の1面では景気の向上がうかがえる報道がされているように感じますが、今回の調査でそれを実感している旨の回答が得られなかったのはなぜなのでしょうか?
A日経はどちらかというと、大企業の経営者寄りの新聞だから。
新聞は事実を曲げて書くことはないけど、それぞれの色がある。日経は、アベノミクスの経済政策には賛成していて、君が感じたように、景気の向上を”煽る”というか、潜在的に植えつけてるよね。「景気」という字の通り、国民の”気分”が景気を大きく左右する。私は、その気分を上向かせるのも新聞の役割だと思ってる。
実際、大企業を中心に景況感は確実に上向いているよ。ただ、地方を中心とした中小企業はまだまだその恩恵が巡ってきた実感がないから、景況感の向上が感じられないということだろう。経済を引っ張るのは大企業だけど、数的には圧倒的に中小企業の方が多いからね。
Q春の労使交渉で賃金を引き上げた企業が多いのは、政府主導だとの指摘もありますが、尊徳編集長はどう考えますか?
A現在の安倍政権と経団連の蜜月を見ると、ある意味、そう思うよ。
安倍政権と経団連(会長:榊原定征[東レ会長])の、「景気回復」という思惑は一致しているので、経団連は政権の要望に最大限協力する姿勢を示している。
実質賃金が上回らないことにはデフレ脱却は実現しないから、政府としては、とにかく企業に賃金を上げてほしいと思ってる。今回の賃金引上げは、法人税減税など企業側に配慮した政策をとる政府の要望に応えて、企業側が最大限配慮した結果だね。
トヨタなど経済界を先導する企業がお手本(大幅な賃上げ)を見せて、ほかの経団連企業が”右へ倣え”した感じ。自分の企業だけ賃上げしないとなると、優秀な人も来なくなるし、非難も浴びるだろうからね。
(佐藤尊徳)
[参考:「景気『よくなる』36% 内閣支持・不支持層で差」(日経新聞朝刊2面 2015年3月23日)]
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