社会

海外でテロに巻き込まれる危険性を考える

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 3月18日にチュニジアの首都・チュニスのバルドー博物館で起きた無差別銃撃テロで日本人3名が亡くなりました。チュニジア大統領府は容疑者9人を逮捕とした報道、犯行組織をイスラム原理派のアンサール・シャリアと断定。一方、「イスラム国」も犯行を認める声明を出していて、信ぴょう性は定かではありません。

 チュニジアは中東・北アフリカ地域では比較的治安がよいとされていて、2014年には日本人約6000人が訪れています。安全と思われていた地域で起きた事件だけに、政府も情報収集に苦戦していた模様。軍事や治安情報を担当する防衛駐在官が、チュニジアには不在であったことも大きいようです。

 この事件を踏まえ、外務省の海外安全ホームページの渡航情報に設置された「危険情報」が更新され、チュニス市は4段階中最も低い「十分注意」から下から2段階目の「渡航の是非検討」を促すものに引き上げられました。事件以前に2段階目以上に指定されていた地域はアルジェリア、リビアとの国境付近が中心でした。

ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説

Q.チュニジアは「イスラム国」が侵攻しているリビアの隣国です。島国である日本は隣国を強烈に意識することがないので、こういった事件に感情移入しにくいかもしれないと思うのですがどうでしょうか?

A.リビアの隣国でも、チュニジアは比較的治安が良いとされていたからショックだよね。

 日本は四方を海で囲まれているから、越境してテロリストが来ることは他諸国よりも難しい。でも、今回の実行犯は隣国から来たのではないよ。

 僕も初めて聞く名前だけど、反政府組織のアンサール・シャリアの犯行と断定された。名前を聞かなかっただけで、イエメン南部を拠点に今までもテロ行為は繰り返していたという。「イスラム国」などの手法をマネて、世界的な影響を狙ったとも考えられるよね。実際に世界的に報道されているし。

 こう考えると、世界のどこにでもテロの脅威はあるし、日本国民の中にも格差や社会への不満からテロリストに同調する人が出てこないとも限らない

 チュニジアは国としての条件も違うし遠く離れてもいるけど、”他国の話”にするのではなく、世界各国が格差など社会への不安を持たない社会を作っていくという問題意識を持つことが大事だと思うよ。

Q.チュニジアには防衛駐在官が不在で、情報収集が困難であったということですが、この防衛駐在官はどのような条件の下、派遣されるのでしょうか?

A.もともと、軍事情報の収集などのために防衛省から派遣されている人らしい。

 テロなどの危険情報を収集するというよりも、駐在国の軍部との情報交換などが主な任務なので、”テロの脅威がある国”という尺度ではなく、先進国など日本と関係の深い国に置かれている

 今、派遣されているのは40ヵ国ほどだけど、邦人がテロに巻き込まれる事件も起きてきたので、これからは順次派遣国も増えていくと思う。

Q.外務省による「危険情報」に強制的な拘束力がないのはなぜですか?

A.憲法で海外渡航の自由が保証されてるから。

 移動の自由もあるから、行かないように強制力を行使はできないよね。だから2月初頭に、シリア取材を計画していたフリーカメラマン・杉本祐一さんのパスポートを外務省が回収した件は、ネットでもいろいろ議論が出ているんだ。
(佐藤尊徳)

[参考:「民主化襲うテロの脅威 チュニジア3邦人死亡(日経新聞朝刊3面2015年3月20日)「渡航警戒レベル上げ 政府、旅行者保護に限界(日経新聞朝刊3面2015年3月20日)]

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