再生可能エネルギー(再生エネ)の導入コストを回収するための電気代への上乗せが、一般的な電気使用量の家庭の場合、2015年度は年5688円(月474円)になることがわかりました。2014年度の年2700円と比較して約2倍で、ここ数年倍々に増え続けていることになります。上乗せ額が増えた請求は5月から開始されます。
主な増加理由は、再生エネの9割超を占める太陽光発電が続々と発電を開始しているため。国は2011年から再生エネの買い取り制度を本格的に開始していて、電力会社は「固定価格買い取り制度」によって、企業や個人が再生エネで発電した電気を購入することを義務付けられています。
太陽光や太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーは、温暖化対策と脱原発依存で強い注目を浴びています。買い取り制度によって、企業や個人は導入コストを回収しやすくなりますが、電力会社の購入費用が電気代に上乗せされ全体の負担増につながっている一面も。
再生エネは今後も拡大し続ける見通しで、負担増は止まりません。政府は買い取り価格を下げるなど、制度の見直しに取り組んでいますが、現状の負担増を抑えるための具体策は手付かずのままです。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q.福島第一原発事故以降、再生可能エネルギーの需要は急激に高まっていると思います。しかし、コストを考えると積極的導入は時期尚早ではありませんか?
A.時期尚早というより、この制度自体が成り立つのかな?と感じてる。
この制度は福島第一原発事故が起きて、当時の民主党政権がドイツの買い取り制度を参考に”無理やり”作ったもの。だいたい、利益を上げなければいけない民間企業の電力会社に「買い取れ」というのは無理があるでしょう。そりゃ電気料金はどんどん上がっていくよ。
国民も原発よりクリーンエネルギーがいい、という総意であれば、電気料金が高くなっても納得しないとね。高いのは嫌、でも原発も嫌、というのはムシのいい話。
そろそろ資源のない日本が、どういうエネルギー政策をするのか、真剣に考えないといけないんじゃない?
Q.先日、メルケル首相が来日しましたが、ドイツはエネルギー政策を強く推進しています。日本の政策に何かフィードバックできるものはあるでしょうか?
A.うーん……参考程度になら、なると思う。
同じ再生エネを推進していても、ドイツと日本には決定的な違いがある。それは、日本は領土が海に囲まれた島国である一方、ドイツは隣接するフランスの原発から送電線で電力を買い取れる、ということ。
日本はすべて自前で賄わなければいけないんだから、ドイツと同列には語れないよね。
コストの問題はあるけど、太陽光発電の機器が技術革新によって随分と安くなってきたことは追い風。こちらの技術革新を続けることの方が、無理やり制度を作るよりも近道のような気がする。
スイッチをひねれば簡単に点く電気も、政府や民間電力会社がかかわるこれだけの仕組みや動きがある。クリーンエネルギーを語るなら、これも貴重な資源なんだと、みんなが思うことが大事じゃないかな。
(佐藤尊徳)
[参考:「再生エネ家庭負担5688円 来年度 電気代、年間上乗せ倍増」(日経新聞朝刊 3面2015年3月19日)]
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