写真/若原瑞昌 文/編集部

政治

地方に権限を!正しい地方分権の進め方 内閣府 平 将明×小泉進次郎

0コメント

メディアに地方創生のキーワードが飛び交い、全国的にも地域復興の熱が高まりつつある。「地方」が力をつけるにはそれなりの権限も必要だが、「国」はどう考えているのだろうか。前号に引き続き、内閣府地方創生を担当する平副大臣と小泉政務官に中央政府の考えを聞いた。

【前編】バラマキを超えられる? 地方創生で国が地方にできること 平 将明×小泉進次郎×尊徳編集長

 衆議院議員

平 将明 たいら まさあき

1967年2月21日生まれ。早稲田大学法学部卒。衆議院議員(4期)自由民主党 選挙区:東京4区(大田区)。内閣府副大臣(第3次安倍改造内閣)。サラリーマンを経て家業を継ぎ、経営者として働く傍らで公益社団法人「東京青年会議所」理事長を務める。2005年、初当選し政治家に。自民党経済産業部会長、衆議院決算行政監視委員会理事、経済産業大臣政務官、衆議院内閣委員会理事などを歴任し、現職。現在4期目。

続きを見る

 衆議院議員

小泉 進次郎 こいずみ しんじろう

1981年4月14日生まれ。関東学院大学経済学部卒業後、米コロンビア大学大学院政治学部修士号取得。米国戦略国際問題研究所(CSIS)研究員を経て、衆議院議員小泉純一郎氏の秘書を務めた後、2009年9月、衆議院議員初当選、現在3期目。内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官。

続きを見る

株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

続きを見る

国から地方へ権限を移して人口減少対策を

尊徳 例えば衛星都市を作って、都市部に人を集めた方が効率的という声もあります。

 確かに、日本は今でも東京などの都市への一極集中ですが、出生率が非常に低い。一方、地方の出生率は高いのです。出生率の高い地方から、低い都会へと人が移る”負のスパイラル”を断ち切るためにも、地方に魅力ある仕事や制度を作るのが、国の役割です。

地方は観光、一次産業など、ビジネスチャンスにあふれています。でも、観光にはビザ、農産物の輸出には検疫・関税の問題がありますから、そこは国が関与しないといけない。国が一緒に、若い人にも住みやすい地方を作る努力をします。
現実に人口は減っていくので、インバウンド(訪日外国人)のための政策を加速させて、流動人口を増やしていかなければなりません。

尊徳 それをやるには、もっと権限を国から地方に移譲していかないと。

小泉 分権に関しては加速していかないといけません。放っておくと、国は自然と肥大化します。国会議員として、その点は葛藤がありますね。

立ち返って考えると、国が手を差し伸べなくても民間がやるべきことや、任せられるものはたくさんありました。結果として民間の活力を奪っていることもありますから、政治家は常に問うていくべきです。

アメリカは”なるべく政府の力を弱く”という考えが強いですが、日本は明治以来、極力、国の力を強くしていこうという歴史。一筋縄ではいかないと思いますが、権限委譲して民間や地方に任せていかないと、国の経済力の底上げはできないと思っています。そんななか、地方も身銭を切らないと町作りができないと思うようになってきたので、そういうところは後押しをしていきたい。

小泉進次郎

権限委譲して民間や地方に任せていかないと、国の経済力の底上げはできない(小泉)

写真/若原瑞昌

「気合」「根性」に続く「根拠」が大事

小泉 一方、地方創生といいながら、国の規制ではなく、地方自治体の規制で民間の活力を削いでいるものがたくさんあります。例えば最近、ジビエ(野生肉)が流行りですが、猟師さんたちから「もっと罠を仕掛けたいけど、規制があるので国に何とかしてほしい」と要望があります。確かに罠の数も大きさも規制があるのですが、調べてみると国はすでに県へ権限を委譲緩和していて、県の規制が壁になっているケースがありました。

そこで地方自治体は、RESAS(リーサス、地域経済分析システム) を活用すべき。ほかの地方との比較など数値の裏付けができるので、その規制が適切かどうかわかります。「気合」と「根性」も大事だけど、もうそれだけではなんともならない。そこに「根拠」(数値)が加わり、新たな3K(気合・根性・根拠)で地方の活性化が進むのです。今後も私はRESASの勉強会を開いていこうと思っています。そうすれば二元代表制(首長と議会)の地方も変わり、根拠を示した議論ができるはずです。

尊徳 本当はチェック機能としての地方議会なのに、オール与党でなあなあの関係を築いてきましたからね。

 一方で、単純に国の権限を地方に下ろしていけばいいわけでもないと感じています。地方は住民に近い分だけ、既得権のプレッシャーを受けやすいという面もありまして……。

平将明

単純に国の権限を地方に下ろしていけばいいわけでもない(平)

写真/若原瑞昌

簡単に権限譲渡できないジレンマ

小泉 これはジレンマです。すべてを地方に権限委譲をすればいい、というものでもありません。

地方自治体の本音では、「ここは国が嫌われ者になってくれ」ということがよくありますから、事情を理解して、ある場面では嫌われ者になる覚悟が必要です。その余地を残さないと、分権自体が目的化してしまい、地方創生が進んでいかないということになります。

 そうそう。「最後は国の力でなんとかお願いします」と陳情されることが多々あります。今後はますます民主主義を機能させて、団体のプレッシャーではなく、国益や県全体の利益を考える政治家を選ぶということが有権者の責任にもなりますよね。

尊徳 今までは国に任せておけば全体が潤ったけど、成熟社会においてそれはあり得ないから、国民自身も、痛みを伴う覚悟を持たないといけない、ということですね。

小泉 構造改革をするには時間がかかりますから、そのための時間稼ぎというのもアベノミクスの理由のひとつ。アベノミクスで景気が回復すると、「構造改革しなくてもなんとかなる」と考える人は官僚の中にもいますが、構造改革をしないのであれば本末転倒です。

尊徳 まさしくその通り!

 珍しいね(笑)。政治家の言うことに「その通りなんて」。

尊徳 僕だっていつも反対してるわけじゃないよ(笑)。これだけの金融緩和をして市場を活性化したんだから、副作用は必ず出る。だからこそ今、規制改革、構造変化をしないと。

佐藤尊徳

今、規制改革、構造変化をしないととんでもないことが起こる(尊徳)

写真/若原瑞昌

 これまでのアベノミクスは、25年間停滞した日本の経済に効くものを一気に投入した劇薬でもありますが、人口減少などの根深い問題を解決する政策パッケージとは違います。

今、さまざまな政策を立案し、いろんな利害関係者の了解を取って法律という形にていますが、これに間髪入れず地方創生を投入できたのは非常に良かった。これこそが本質の政策です。

平・小泉・尊徳

若者は地方創生の起爆剤になりえる

尊徳 これからを担う地方の若者はどのような印象ですか?

小泉 被災地の大槌高校(岩手県)の生徒たちが東京大学と組んで、町の将来像を作り、町の議会に提言しました。町議会もそれに答えて50万円という予算を付け、具現化したというケースがあります。高校や中学時代から税金を使って町の取り組みに参加できる、このような仕組みを全国で広げてほしいです。

また、「自分たちの町には会社が少ないから、作りたい。高校を卒業したら起業したいので、国が支援してほしい」と私に言った陸前高田の中学生たちもいました。素晴らしいけど、いくつか助言もしました。「本気なら学生時代に起業することはできるし、国の支援をあてにしているようでは、起業は成功しない」とね。しかし、このような中高生がいることは大変に希望を持てます。

尊徳 被災したことでたくましくなってるんでしょうね。乗り越えていくには、国の支援をあてにするだけじゃなく、自分たちの努力も必要だしね。

小泉 講演会でRESASの話をすると、目を輝かせるのは若い人たちです。うまく活用すれば若者の政治への関心度を高める起爆剤になると思うので、全国の若者たちにRESASの価値を知ってもらいたい。そうすれば、政治は大きく変わるはずです。

尊徳 若者に関して最後にもうひとつ。参政権が18歳に引き下げられ、2016年の参院選から適用されます。若い人が積極的に政治に参加するためにはどうすればいいのでしょうか。

小泉 これは教育の責任があると思います。戦後、教育と政治を過度に遠ざけてしまったと思います。基盤となる政治の知識を植えつけずに、いきなり「投票に行きましょう」といっても無責任な気がします。今後の課題ですね。

また、私個人としては親御さんが、子供が小さいときから手を引いて投票所に一緒に行ってもらうことも大事だと思います。親が投票に行ったことがないとなれば、自分が行くとも思えませんから。