社会

ビジネスマンの悩みを禅で解決 第1回かけこみ全生庵

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人間関係、仕事、将来への不安……。いつの時代もビジネスマンに悩みや不安はつきものだ。かといって、近くにいる人に相談できないことだってある。そこで、仕事に悩む読者の声を平井住職にぶつけ、解決法を聞いた。

 納得してやってきた仕事が、ときどきものすごく退屈に感じるときがある。今の仕事以外に、ほかの道があったのかもしれないと考えてしまう。(30代・男性)

A 当たり前ですが、過去を変えるのは不可能ですよね。現時点までその仕事をやってきたのですから、その道しかなかったということなのです。人間ですから飽きがくることもあります。誰にでも起こりうる感情なのですから、それを特別に問題視する必要もないでしょう。変わりたいと思うなら過去を振り返るより、これからどうしていくかを考えるべき。

 会社の飲み会に行くのは気が進まない。誘ってくる上司の心証が悪くなる気がするので毎回行くようにしているけれど……。(30代・男性)

A 優秀な上司であれば、たとえ飲み会に来なくとも、普段の仕事をきちんとやっている部下に対してマイナスな感情を抱くことはないはず。そこで不満を抱くような上司は、結局それだけの度量しかないのです。逆にいえば、飲み会にさえ行けば機嫌がよくなるような上司なら、扱いやすいともいえますよね。全部断らずとも2回に1回くらい行けば、ちょうどいいかもしれません。

 

 自分は2人兄弟の次男で実家の農業を手伝っているが、長男は定職につかずいまだにふらふらしていて家業を継ぐ気もなさそう。夢を追いかけるか、家業を継ぐべきか、決めきれないでいる。(30代・男性・農家)

A 一度きりの人生ですから、悔いのないようにするべきです。ただし、必ず自分で決断してください。もし人に頼って決断したら、後々人のせいにしてしまうでしょうから。そして、自分で下した決断も後悔しないように。もし家業を継がないという選択をするなら、家族に嫌われることもあるかもしれません。夢を追うことを選ぶのであれば、それぐらいの覚悟をもっていくべきでしょう。

転職の経験は

転職の理由は

転職のしなかった理由は

 女性の多い職場の陰湿な人間関係が苦痛。仕事は楽しいので、このまま我慢して残るか、転職するか悩んでいる。いつか状況は変わるものなのでしょうか。(30代・女性・銀行員)

A 人間関係は常に変化しますから、いつまでも今の状況が続くことはないはずです。ただ変化した後に、状況が良くなるか悪くなるかはわかりません。そもそも楽な仕事などないし、人生は苦しみに満ちているのですから、仕方ないことだと思ったらいいではないですか。人は苦しみを感じると解決を試みますが、しょせん答えなど出ません。強いて言えば、周囲に期待するくらいなら自分が変わればいい。例えば、周囲に負けないくらい強くなるとか(笑)。それが一番簡単な方法だと思います。

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平井住職によるココロの警策

一生懸命、目の前のことに取り組みなさい

よく世間では「夢を持ちなさい」と言います。そうすると夢が見つからないといって悩む人も出てきますが、私は持っても持たなくてもどちらでもいいものだと思っています。

仏教では、今を生きることが大切だと考えます。だから私たちは一生懸命目の前のことに取り組む。仕事であれ、趣味であれ、そうして懸命にやっていれば、自然と「こうなりたい」「ああなりたい」という目標が見えてきます。会社員が実力をつけていったら、「社長になりたい」と思うようになったりもするし、専門職なら「この分野では誰にも負けないようになりたい」と思うようになったりもする。わざわざ夢を持とうとしなくても先のことはおのずと見えてくるものなのです。

私自身、父が亡くなり寺へ住み込みの修行に入ったときは、24時間逃れる場所も暇も、プライベートもまったくなく、何もかもが嫌で仕方ありませんでした。でも、あるときこれでは意味がないと気づき、毎日の生活と向き合うようになりました。そうして今では全生庵の住職を務められています。

「プライベートと仕事を分けたい」なんてこともよく聞きますが、行為自体は分けられても、心の中を完全に切り替えることはできませんよね。考えるだけ無駄です。とにかく悩んだら、目の前のことに一生懸命になる。これが、行き詰まったときの最良の抜け道だと思います。