経済

キーワードは2強体制 いずれ3メガバンクも2メガバンクに?

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2016年大発会は600円弱の値下がりで始まった。金融の逆回転が起こる予兆ではないか。かつて、1989年大納会は38915円87銭の過去最高値で引け、誰もが4万円乗せすると思っていた。しかし、1990年の大発会は20221円86銭安で引けた。その後10カ月で株価は半値にまで下げた。歴史は繰り返す。同じように金融危機が起きないとは限らない――。

金融危機は10年ごとに起こる?

「リーマン・ショックが2008年に起こったが、その前のマーケットの混乱は1997年から1998年にかけてのアジア通貨危機の時代であり、これはリーマン・ショックの10年前である。その前はブラックマンデーで、1987年、さらにちょうど10年前。このように一種のシニカルな資本主義の動きを見ていると、2015年は、リーマン・ショックから8年経っているわけであり、別に運命論者ではないが、あと2、3年のうちにマーケットの混乱があってもおかしくはないと考えている」

全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は2015年11月19日の記者会見でこう述べた。市場が非常にボラタイル(値動きが激しい)な状況になっていることについて聞かれ私見を述べたものだが、バンカーとして40年近い経験を持つ佐藤氏の目には、次の金融危機の芽が確実に育ちつつあることが予感されているのであろう。

新興国を巡ったマネーはアメリカへ

リーマン・ショックを契機とした世界的な金融危機に怯えた世界の金融当局者は、中央銀行による過剰なまでのマネー供給に奔走。非伝統的な金融政策と銘打って中央銀行が国債のみならず不動産や株式を金融商品化したREIT、ETFまで買い上げた。その有り余るマネーは新興国を潤し経済成長を助長。中国の勃興はその象徴にほかならない。いまや世界のGDPの4割は新興国で占められている。

しかし、その潮流は転換点に差し掛かっている。口火を切ったのはリーマン・ショックの震源地、アメリカだ。FRB(米連邦準備制度理事会)は12月15~16日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決断。これまでの政策金利(0%~0.25%)を0.25%~0.5%に引き上げた。リーマン・ショック直後の2008年12月のゼロ金利政策導入から7年ぶり、前回の利上げから実に9年半ぶりの大きな政策転換である。

FRBの利上げが招く負の影響

このアメリカの利上げを市場は冷静に受け止め、政策の不透明感が払拭されたとしてニューヨークダウをはじめ、先進国の株価は総じて上昇した。しかし、市場の不安が完全に払拭されているわけではない。すでに新興国に流れ込んでいた大量のドルがアメリカに巻き戻され始めており、「巨額なドル建て債務を抱える新興国経済にとって負の影響は避けられない」(佐藤氏)というのが市場の共通認識だ。

その象徴がヘッジファンドからの大量の資金流出とリスク度の高いハイイールド債(高利回りの債券)の苦境だ。これまで過剰に供給されてきた緩和マネーを背景に規模を拡大してきたヘッジファンドの中には、閉鎖に追い込まれるところも出てきている。

そして、いずれヨーロッパも日本も非伝統的な金融政策からの出口を強いられる。そのときに起こるショックは想像の域を出ないが、少なくとも金利は上昇する。果たして大量の国債を抱えた日銀はどうするのか。

GDP対比で見て、世界最大の財政赤字を抱える日本にとって、国債価格の低下に直結する金利の高騰は致命傷になりかねない。想定外に金利が急騰した場合、日本の財政は破綻しよう。株、債券、円が暴落するトリプル安に見舞われ、次の金融危機は日本発という悪夢も考えられる。そのとき、金融機関はまたも公的資金で救済されるのか。そして、その先に待つのはさらなる金融再編ではないのか。

逆回転しはじめた歯車

1997~1998年の金融危機では、日本発の世界恐慌さえ懸念された。都銀の北海道拓殖銀行、4大証券の一角であった山一証券が破綻し、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が国有化。残る主要銀行も公的資金でどうにか生き延びたものの、再編を余儀なくされていく。2000年代初頭にかけて都銀、信託、長信銀は3メガバンクに収斂していった。

お互い身を寄せ合うことで危機を乗り越えた日本のメガバンクは、いまやこの世の春を謳歌している。リーマン・ショックにあえぐ欧米の金融機関の資産を買い漁り、アジアを中心に海外進出に邁進。トップバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループは2015年3月期に1兆円を超す純利益を計上したが、その約4割は買収銀行を含む海外部門がたたき出した。

その順回転の歯車が逆回転しはじめている。アメリカの利上げと中国の景気減速は高成長を遂げたアジア諸国に伝搬し、メガバンクのバランスシートをむしばみつつある。

「2016年の最大のテーマは産業再編。キーワードは2強体制への収斂だろう」

ある中央官庁の幹部はこんな見通しを吐露する。産業の各セクターで再編が起こり、2強体制に移行するとの読みだ。苦境にあえぐ東芝、シャープなどの電気メーカーはその筆頭というわけだ。そして、産業界が動けば、コインの裏表の関係にある金融も動かざるをえない。いずれ3メガバンクも2メガバンクに収斂されてもおかしくはないだろう。

銀行は2つで十分のような気がする

 

銀行は合併の歴史だ。旧三和銀行(現三菱UFJ)は3つの銀行が1つになった。太陽と神戸で太陽神戸。三井が加わり太陽神戸三井からさくらになり、今は三井住友銀行に。20年前に13行あった都市銀行が潰れると誰が思ったか。北海道拓殖銀行が潰れ、大和銀行が経営危機でりそな銀行に集約された。

みずほの中のひとつ、第一勧業銀行も、第一と勧業が一緒になったが、人事部が2つあり、頭取はいつもたすき掛けで、いつまでたってもひとつの銀行になったとは言い難かった。みずほは今でも、興銀、第一勧銀、富士の3つの銀行が権力争いをしていると聞く。

今やメガバンクが3行になっているが、これが2行になったところでもはや驚きではない。というより、2つで十分のような気がする。だいたい、旧職のときにみずほ銀行の対応があまりにひどく、銀行法違反ではないかということもあった。二度とこの銀行とは取引をしないと心に決め、無くなってしまえばいいと今でも思っている。この銀行が飲み込まれて2つになるのなら、願ったり叶ったりだ。