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「巨大になった安倍政権は昭和のにおいしかしない」蓮舫議員に民進党の進むべき道を問う

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民主党政権時代のマイナスイメージを払拭できないまま、党名を変更し、野党第一党の威信を取り戻そうと模索する民進党。誰もが世代交代の必要性を感じるなか、相変わらずベテラン議員は執行部に居座り続けた。そんななか、岡田克也氏の代表退任に伴い、次期代表選が行われる(2016年9月15日投開票)。蓮舫議員が当選すれば結党以来、初めての女性代表だ。決戦を前に、蓮舫議員へ民進党が進むべき道を聞いた。

蓮舫 れんほう

1967年、東京生まれ。青山学院在学中に芸能界デビュー。司会やレポーターを経て報道キャスターに転身。2004年7月、民主党から参議院議員選挙に立候補(東京都選挙区)、初当選。民主党政権時代は、内閣府特命担当大臣(行政刷新担当)、内閣総理大臣補佐官などを歴任。2015年1月より民主党(現民進党)代表代行。19歳の男女の双子の母。

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――現在の民進党が支持されていないのはなぜだと思いますか。

民主党政権時代の印象が悪いということが大きいと思います。また、批判しかないと思われているのが最大のデメリットです。

これだけ信頼のない民進党ではありますが、衆参合わせて約150人。一人ひとりはとても優秀です。議員立法の数もこの通常国会で64本出していますし、それが届いていないのは信頼がないからですよね。聞く耳を持っていただけない。

演説等も野党癖がついていて、批判から入るんですよね。国会の質問もそうです。今の時代、批判からは何も生まれないと思っています。それでは共鳴も共感もありません。私自身は質問、あるいは街頭演説では批判から入らないようにしています。

評価できるところ、できないところ、自分たちならこうやるということを示せば、聞く耳を持っていただけるし、立ち止まっていただける。これは自分の中でとても強い力になっていて、全員がこの方向を見てくれたら、民進党は絶対に変われる。そのためにも”世代交代”、これに尽きると思います。

野党癖がついていて、批判から入るんですよね(蓮舫)

――とはいえ、何度も期待を裏切ってきた民進党です。どうやって変わりますか。

答えは簡単です。40代の女性が代表になる、それだけで変わります。それ以上の答えはないでしょう。問題はそこから先です。最初だけでなく、持続性をどれだけもっていくことができるか。

野党であるわれわれの舞台というのはとても少ないのです。国会が開いている間の予算委員会ぐらいしか目立つ場所はありませんよね。よく「発信力に期待する」といわれますが、政府与党の発信力に比べれば、野党の発信力というのは本当に小さい。そんななかでは、”インパクト”を続けるしかないんですね。それは”質問力”だと思います。ただ、それも国会が閉じてしまえば続かないものがあります。

そこにおいてはネット、あるいは地元のローカルメディアが代わりになります。そういう部分で汗をかいて発信していくやり方と、夢をちゃんと売れることができるだろうかということ。それをメディアによって使い分けて訴えていく。平たく言えばメディア戦術ですが、いわゆる紙媒体や今使われているような媒体ではないやり方を進めたいと思っています。

――巨大与党に権力が集中するのは良くない、という考え方を持っている人はたくさんいます。現在の与党に対して、民進党はどういう方向に向かい、政策的には何をしていくのでしょうか。

私たちがやることは、”選択肢を示す政党”しかないと思います。もちろん、既存の政権の良いところは評価をしますが、軌道修正できずに戻れなくなっている経済政策等がある。そんななかで私たちが失敗したのは、財源無きまま夢の政策をばらまいたこと。最悪なやり方でした、大失敗です。

野党は批判していると楽なんですよ。気持ち良く質問もできますし、言いっ放しですから。だけど、美しくない。そこには夢もない。若者もついて来ない。「野党の役割なんてそんなものでしょう」「だけど裏では手を握っているのでしょう」というようなイメージがついてしまったのは、私にとっては最悪な過去です。

そうではなくて、財源は政府が用意してくれていますから、その同じ財源で何をやるのかということをしっかりと示す。こういうことを積み上げるしかないと思います。例えば同一価値労働同一賃金でも、われわれが目指しているものと、安倍内閣が目指している同一労働同一賃金は”質”が違いますので、どちらがいいのかをきっちり示すことが重要だと思います。

敵は身内ではない、安倍政権なんだということをリーダーがしっかり定めることが必要(蓮舫)

新しいリーダーの下、安倍政権の方に向いて戦わなければならない

――改めて聞きますが、民主党政権を振り返って、反省や誤ったという認識はありますか。

反省というか、ダメダメですよね。ダメなんてもんじゃないです。行革をやった私が思い切って言えます。身内がみんな私の足を引っ張りました。

――よかった、わかっていらっしゃるんですね。今回、党をまとめる立場に立候補されています。維新の党などが加わって、旧民主党とは違う多様性があるわけですが、もしかしたら足を引っ張る人もいるかもしれない。それをどうやって同じ方向にまとめていこうと考えていますか?

与党はいいな、と思うのは、リーダーが頑張らなくても”政権”という求心力があること。また、「大臣になれるかもしれない」という目の前のニンジンがあるんですよね。いいな~と心の底から思います。

野党はやはりポストも少ないし、あわよくば自分が取って代わりたいという方もたくさんいる。やっぱり旧民主党、現民進党は、昔の悪い癖というのか……、向かうべきところは現政権なのに、身内を見るんですよ。

自民党の野党時代は、きちんと野党として徹底していました。口汚く罵りながら国会で罵倒し、罵詈雑言を浴びせるという、ホントに醜い国会質問でしたが、彼らは敵を与党・民主党だと見ていた。身内ではなく。私は罵倒したり罵詈雑言をまねしようと思いません。あまりにも美しくありませんから。ただ、一丸となり与党を追及するその姿勢は十分に学ぶべきです。

――今の民進党のリーダーに求められるものは何だと思いますか。

民進党のリーダーに求められるのは、向き合うべき対象をしっかり定めることです。身内ではない、安倍政権なんだと。安倍政権のこの政策なんだと。常に目標を掲げて率先して戦い続けていく。

そんなに大きな、過大なリーダー像を語ったって、私たちの今の身の丈は本当に小さい。だったら現実的なリーダー像から始めていって、それをさらにバージョンアップさせていくしかないと思います。

――それは、ほかの方たちは理解されているんでしょうか。

大変なのは、人は皆、自分の過去を否定されたくない。特に政治家の場合はその傾向が非常に強い。国のトップにしたって、経済政策が間違っていたら、後戻りをしないような姿勢ですから。

例えば、私が先ほど申し上げた、民主党政権はダメダメだったという一言だけが走ると、「何言っているんだ!」というハレーションが強く起こる。ですが、ハレーションが出ること自体がおかしいことだと思うのです。

われわれがどんなに頑張っても支持率は上がらないし、みんな立ち止まってくれないのは事実。目先だけではなくて、何を私たちは間違ったのか、振り向いてくれない理由は何なのだろうかと振り返らないと、前に進めませんよ。

まだこのスタート地点に立ってくれない人はいると思いますが、私は先頭に立ってリーダーになります。

――当然、代表は政権を取れば総理大臣になります。今、参議院議員ですが、自身は何か考えていますか。

もちろんです。

――今残っている議員の方たちは、あの厳しい選挙も勝ち抜けてしまうくらい強いですよね。だから自分は正しいんだと思い続ける。そういう人たちが執行部にいることはどう思われますか。

弱い人ばかりでは政党は絶対に弱くなります。選挙に勝ち続ける強い人がいるというのは大事です。ただ、その人たちだけがいつも執行部にいるというのはダメです。新陳代謝が良くないので。基礎代謝だけに頼るのではなくて、いろんな筋肉、いろんな血液を動かさなければなりません。これは人事含めて刷新可能だと思っています。

その上で、「自分は強いからこのままでいいんだ」という人は、そんなにいません。ただ、本当に政権交代を見ているのか、2大政党を見ているのか、という覚悟が問われてくると思います。どこかで「もう無理だよね」と思ってしまう強い人がいたら、この党は終わります。

蓮舫5

民進党は”脱昭和”をして”平成の政策”を目指す

――政策についてうかがいます。安倍政権は何が良くなくて、民進党としてはどんな政策の違いがありますか?

今の安倍政権と自民党がこれまで巨大になっているのを見ていると、昭和のにおいしかしません。昭和は大好きですよ? けれども、平成生まれの子が28歳になる、今の時代に合った政治なのかと強く疑問に感じます。

例えば経済政策。トリクルダウン、大企業、輸出企業。そこにずいぶん大胆な財政出動しましたけども、3年経って昭和のモデルは通用しないということを見事に体現してくださいました。やっぱり平成に合わせるしかないということです。

高齢者が増えて、子どもが減って、人口が減って。それこそ現役世代がどんどんいなくなり、地方がなくなってくる。安倍総理は言っていることは一見正しいです。女性活躍、地方創生。同一労働同一賃金。でも中身が昭和のままでバージョンアップされていないのです。

この4回の補正予算で約20兆円以上使っています。全部経済政策。でも結局結果が出ないで、またこの秋に補正を組むという。私はこれまでの補正予算はムダ金だったと思っています。その税金を人に回すことができたら。これから人が減っていくので、労働生産性が低いところにおいては、次を担う世代に投資を思いきりするしかないと思います。教育や職業訓練。あるいは税についての学習など。

今のままでは、この国の子どもたちは何か生きていく上で大事なことを欠落させて、道徳とか愛国心を学ばせても、たぶん生き残っていけなくなってしまう。地方に行ったら仕事ありませんから。東京に来たら負の連鎖で、非正規雇用、結婚できない、子どもも産めない、結婚もできず家庭も持てない……。

こんな次の世代に夢を持てない政治はおかしい。民進党は、昭和な自民党政権に対して、”平成の政策”をしていきます。”脱昭和”は、われわれの、特に私のキーワードです。

安倍政権は、いつまで昭和のことを考えているのだろうと思う(蓮舫)

――最終的には少子化をなんとかしないと、国としての繁栄はないですからね。具体的にはどんな政策がありますか。

例えば、待機児童の問題があります。少子化なのに、と思いますよね。結局、保育士の数が足りないのです。保育士がいないと、どんなに箱があっても預かる子どもの数には限界が出てきますから。

何で保育士がいないのかといったら給与が低いから。こんなシンプルな答えありませんよね。でも、今の政権は50万人の子どもが入れる保育所を整備していって、国有財産を安く貸し出すということを言いました。……いつまで昭和のことを考えているのだろうと。ソフトを充実させる必要があるんです。

われわれは保育士の給与を5万円引き上げる法案を提出しました。5万円アップさせることによって、高卒で働いている方の平均給与に、ようやく国家資格である保育士の給与が並びます。それくらいまでにせめてしてあげないと、やっていけない。でも自民党は6千円上げるという。しかも補正予算財源。来年からはまだ予算がありません。

こういう明確な違いを持ったときに、どちらに投資をしますかということです。5万円上げたら2千億円が必要ですが、今の政権は4回の補正を組んで基金に2兆円積んでいて、その基金の昨年度の残高は1.3兆円あります。使われていない。もったいないお金の使い方をしているなとすごく思いますよね。

各野党との協力はありえるが、次の衆議院選で共産党との連携は無理

――民進党の議員からは、選挙のために政治家をやっているようで疲れるという声も聞きます。党として政権を取れるという姿勢を示していかないと、そのうち優秀な人材も入って来なくなってしまうでしょう。先の参院選、都知事選で、共産党をはじめほかの党と選挙協力をしましたが、世間的には共産党という名前も含めてちょっと拒否反応もあると思います。

参院選での野党の連携は、評価されるべきだと思っています。宮城、新潟、山形といった一人区は、重点区として安倍総理も何度もお入りになられましたが、われわれが勝たせていただきました。これは効果があったと思います。一方で、私は東京で共産党や社民党を落とすために戦っているわけです。その私が一人区で何を言うんだという矛盾もあります。私の中では、違う種類の選挙が同時に起こったように感じています。

まだ総括しきれていませんが、ひとつは地域性に着眼をしたときに各野党との協力というのは、間違いなくある。ただ、党として次の衆議院選挙を戦うときに、全面的に各野党、特に共産党と連携……はできるわけないじゃないですか。綱領が違いますから。あまりにも刺激的な綱領です、まだ。無理です。

ただ、今の若い子たちも、共産党アレルギーが徐々に薄まっていますよね。そういうなかで、しっかり私たちを見てもらうようにするのが次の私の役割だと思います。

真ん中にどれだけメッセージを届けることができるか

――先の参院選の投票率が54.7%。多くが保守的な与党を支持しています。投票していない人の中にはリベラルな人も多いと思いますが、民進党をはじめとする野党は、そういう人たちの受け皿としてどう考えていますか。

「リベラル」っていうカテゴリーはすごく日本的ですよね。世界的にはもっと広い意味で使われていると思いますが、昔の社会党的な何が何でも護憲という文化は、残念ながらこの日本ではそろそろ役割を終えていくのだろうと思います。

憲法9条を守るというのは私の信条ですが、やっぱり国民の声があったら憲法含めて弾力性をもって考えていくことが必要です。その部分では、安倍総理のひとつの功績は、”憲法”に国民の意識を向かせたことです。これはすごいことですよ。そこから先の手段、やり方は全面的に否定をしますが、そういう意味では、時代に合った選択肢を示すということはとても大事だと思っています。

それと、投票率が低いのは、民進党がつまらなかったからですよ。投票に行こうって気にならないじゃないですか。前回(2014年)の衆議院選挙は候補者を立ててもいないんですから。選択肢が共産かおおさかとか、おおさかと自民とか、自民と共産とかって、何がなんだか。そこに手を挙げなかったというのは致命的でした。

投票率を上げるというおこがましいことは言いませんが、私たちがキラキラした期待できるものになったときに、間違いなく来てくれると思う。そういう党にしたい。

私たちを支援してくださっている方たちの中には、護憲でガリガリの方もおられれば、自民の右の方向じゃないよね、という良質な保守の方たちもおられる。でも、すっぽり真ん中が抜けているんですよね。

特に安倍総理はずいぶん右に行ったので、今は真ん中が広くなっています。この真ん中に、どれだけ私たちはメッセージを届けることができるか。これは政治への期待に絶対につながる。やりたいんですよ、それを。

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