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民進党・蓮舫新代表就任へ 野党の救世主か、万年野党へ誘う堕天使か

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野党第一党である民進党の代表選が2016年9月15日に投開票される。蓮舫代表代行と前原誠司元外相、玉木雄一郎国会対策副委員長による三つ巴の戦いだが、岡田克也代表の実質的な後継者である蓮舫氏が優勢。国民人気の高い、初の女性代表は”自民一強”の壁に風穴を開けることができるか。それとも批判ばかりの”万年野党”へと突き進んでいくか――。

人気の蓮舫氏、代表経験のある前原氏、若手ホープの玉木氏 争点はどこに

改名した民進党にとって初めての代表選には、所属国会議員と国政選挙の公認内定者、地方議員、党員・サポーターが投票できる。国会議員票は合計294ポイント、公認内定者は118ポイント、地方議員は206ポイント、党員・サポーターは231ポイント。国会議員票では蓮舫氏が優勢だが、全ポイントの過半数を占める”地方票”が勝負の行方を握る。

毎日新聞が3日、4日に行った世論調査で「新代表にふさわしい候補」を聞いたところ、蓮舫氏が32%でトップ。前原氏は19%、玉木氏は4%だった(「関心がない」は34%)。投票権を持つ民進党支持層では蓮舫氏が61%で、20%の前原氏、7%の玉木氏に大差をつけた。女性で容姿が整い、弁も立つ蓮舫氏なら「党のイメージを変えられそう」との期待が集まっている。

政策面での最大の争点は”野党共闘”と”改憲”だ。岡田代表は今夏の参院選で野党共闘を進め、1人区を中心に共産、生活、社民の3党とともに候補者の一本化を図った。「一定の成果があった」との評価がある一方、保守系議員や支持母体である連合(日本労働組合総連合会)からは共産党との協力に不満も出ている。

岡田代表の後継である蓮舫氏は野党共闘路線を継承する考えを示しているが、保守派の代表格である前原氏は「一度リセットすべきだ」と指摘。玉木氏も「基本的な考え方の違う政党と一線を画す」とし、共産党との共闘に慎重な姿勢を示した。

改憲については、旧社会党グループなどリベラル系議員の支持を受ける蓮舫氏が「憲法9条は絶対に守る」と明言。玉木氏も「海外での武力行使を認めるような9条改正には反対だ」と述べており、「9条は立憲主義の観点で最も不安定な条文だと思っている」と語る前原氏との立場の違いが浮き彫りとなっている。

ただ、選挙戦の軸となる蓮舫、前原両氏ともに党内の幅広い層から支持を得ようと、考え方を濁している部分がある。蓮舫氏は野党共闘について「綱領や政策が違うところと一緒に政権を目指すことはない」、前原氏は改憲について「最優先課題だと思っていない」とも語っている。

“争点隠し選挙”は政策の壁を超えて幅広く支持される強いリーダー誕生の好機とも言えるが、代表選後に党の運営方針をめぐって路線対立が続く可能性もある。

“蓮舫代表”で党勢回復なるか

誰が選ばれたとしても、新代表が直面するのは”自民一強”の高くて厚い壁だ。

自民党は民主党政権の崩壊を受け、2012年と2014年の衆院選で続けて圧勝。参院でも2013年の選挙で第一党に復帰し、今夏の参院選では27年ぶりに単独過半数を回復した。政党支持率は40%前後で推移し、民進党を含めて一桁台にとどまる野党を圧倒している。

野党第一党である民進党は、民主党と維新の党が合併して2016年3月に発足したが、いまだに民主党時代の政権運営失敗の傷を引きずっている。参院選で集めた比例票は1175万票で前回選挙より6割増やしたが、それでも民主党のピークだった2007年の約半分。党勢回復には程遠いのが実情だ。

国民人気の高い蓮舫氏が代表に就任すれば、清新なイメージから党勢回復の契機となる可能性がある。内閣支持率や自民党の支持率は高水準を維持しているが、政策面での評価は下落傾向。安倍晋三首相の個人人気が支えている格好で、蓮舫氏に付け入る隙はある。

小泉政権以降、衆院選における選挙結果の振れ幅がどんどん拡大する傾向にある。2009年に民主党が308議席を獲得し、政権交代を実現したかと思えば、次の2012年には自民、公明両党で325議席を獲得して再び政権の座を奪還した。

順調に政権運営を続ける安倍内閣も、いつつまずくかは予測できない。そうなったときに存在感の薄い岡田代表では心もとなかったが、人気の高い”蓮舫代表”なら民意の受け皿となりうる。生活の党や社民党などを吸収して与党に対抗する存在に育つかもしれない。

一方で、民進党を”万年野党”へと誘う可能性もある。民主党政権時の事業仕分けでスーパーコンピューターについて「2位じゃダメなんですか」と発言して物議を醸したように、蓮舫氏は政策立案ではなく、批判や攻撃で存在感を高めてきた政治家だからだ。

今のところ蓮舫氏の国家観や政策軸は見えない。55年体制における社会党のように「批判ばかりで対案がない」と思われれば、再び政権与党の座を狙うことなどできない。”蓮舫代表”は野党の救世主となる可能性も、万年与党へと誘う堕天使となる可能性もある。

「日本」回帰の維新もカギ

野党の行方を占う上で、もうひとつのカギとなるのが「日本維新の会」だ。分裂を繰り返して大阪の地域政党に戻りつつあった維新だが、2016年の参院選では比例で515万票を獲得して一定の存在感を示した。党名を「おおさか」から「日本」に戻し、次期衆院選では全国で票を集めて民進党に対抗する絵を描く。

維新の創業者である橋下徹前大阪市長は2015年の引退以降、身を潜めているが、今後の国政選挙で憲法改正が明確な争点となれば、再び政界に戻ってくるかもしれない。今も高い人気を誇る橋下氏が登場すれば、蓮舫氏の存在がかすんでしまうこともあるだろう。

参院選で勝利した安倍政権がいつ衆院解散に踏み切ってもおかしくない。誰が就任しようと、民進党の新代表は短期間でいくつもの重要な判断を迫られそうだ。

途切れないインパクトを提示し続けることが大事

 

もし、今回の民進党の代表選挙で前原氏が勝てば、これ以上言うこともない。10年以上は政権交代など望めなくなるだろう。それは、前原氏の中身の問題ではなく、民進党への期待感の無さがそのまま継続するからだ。以前、代表を務めた岡田氏、前原氏では、国民の期待を裏切った印象は拭えない。

一方、蓮舫氏ならば、ドラスティックに変わった印象を与え、巨大与党との違いを出すことができる。そういうセンスを持った政党だと示すためにも圧勝するべきなのだが、滑り込みで参戦した玉木氏を交えた三つ巴になったことでどうなるか。

新しい代表が決まった後は、今までのような単なる批判政党ではなく、”提言できる政党”に生まれ変われるかがポイントだ。蓮舫氏本人も自覚している通り、”女性の代表”という珍しいだけの期待感は、そんなに長く続かない。注目されている期間、矢継ぎ早に与党との違いが出せるように対案を出し続ければ、勝手に求心力も付いてくる。国民の支持が高ければ、政治家は政敵であろうとまとまるはずだ。