西日本豪雨で被災した「獺祭」が「島耕作」の力で生まれ変わる 旭酒造が被災地復興支援商品を販売
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西日本豪雨で被災した「獺祭」が「島耕作」の力で生まれ変わる 旭酒造が被災地復興支援商品を販売

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日本酒「獺祭」で知られる旭酒造(山口県岩国市)は、「モーニング」(講談社)で「会長 島耕作」を連載中の弘兼憲史氏とコラボした純米大吟醸酒「獺祭 島耕作」を、8月10日から販売する。同商品は、今年7月の西日本豪雨によって被害を受けた「獺祭」を、被災地復興支援商品として販売するものだ。

50万リットル、約10億円相当の「獺祭」が被災

西日本豪雨は西日本各地に甚大な被害をもたらした。山口県岩国市に本社を構える旭酒造も例外ではなく、酒蔵の前を流れる川が氾濫し、酒造1階に70センチほど浸水。送電線の破談により3日間の停電が発生した。

醪(もろみ)の発酵には繊細な温度管理が求められるが、停電したことで温度のコントロールが不能になり、当時、発酵していた150本のタンク(50万リットル、4合瓶70万本分)が影響を受けた。温度が上昇した結果、すべてのタンクに入っていた酒は、「一般的な純米大吟醸の水準には達してはいるが、『獺祭』相当ではない」(桜井博志会長)ものになっていた。桜井会長によると、50万リットルの「獺祭」は、定価だと約10億円相当になるという。

「普段は30センチの川が一気に増水し、3メートルの石垣を越えて酒蔵に浸水してきました。お酒やお米もありましたが、それ以上に、停電によるお酒の被害が一番痛かった」(桜井一宏社長)

同じ山口県岩国市出身の弘兼氏は、2016年秋に発売された「モーニング(42号)」で、島耕作が旭酒造をモデルとした酒蔵を訪れる回を描いている。それ以来、旭酒造とかかわりを持っていたため、今回の豪雨の被害状況に心を痛め、旭酒造の桜井博志会長に連絡したという。

「桜井さんに連絡したところ、『大したことはないよ』とはおっしゃっていましたが、よくよく聞くとかなりの被害に遭ったといいます。こちらで何か協力することができないかと思い、島耕作のラベルを作って『獺祭』を売ることはできないかと提案しましたら、桜井さんは『うちだけではなく、被害に遭った方たち全体に復興支援という形で商品を出せないか』と相談を受けました」(弘兼氏)

「(停電が)3日で復旧し、なんとか首がつながりました。お酒をなんとかしたいと考えたところ、弘兼先生が提案していただいたことを思い出し、今回の企画になりました」(桜井会長)

以前、島耕作の絵をラベルにプリントした「獺祭」を読者にプレゼントしたこともあり、今回、講談社の協力を得て同商品のラベルに使用されることになった。

定価3万円の「磨き その先へ」が入っているかも?

「被害を受けた150本のタンクの中には、『二割三分』も『三割九分』も、『50』もあるという状況。お酒としてはおいしいのですが、『獺祭』のブランドでは出せないものでした」(桜井一宏社長)

「獺祭 島耕作」の価格は1200円(720ml、税別)。1本につき200円が西日本豪雨被災地への義援金になる。中には旭酒造の最高級ランク「獺祭 磨き その先へ」(定価30000円(税別))で使用される酒が入った瓶も含まれているといい、どのランクが入っているか飲んでみるまでわからない面白さもある。

8月10日から、旭酒造ウェブ店のほか、直営店および「獺祭」を取り扱う全国の酒販店で購入可能。65万本を販売予定で、約1憶3000万円程度の支援になる予定。65万本は多いように思えて、通常の「獺祭」の1カ月の販売量だというから驚きだ。

桜井会長は、「いろんな方からお見舞い・ご支援いただき、酒蔵のものとしては感激するばかりです。その御恩を、こういった形で被災地の皆さま方の支援のお手伝いができれば幸せです」と。弘兼氏は、「お酒を飲んでチャリティーに参加できるなら一石二鳥じゃないですか」と後押しした。

なお、旭酒造の酒の製造は7月末から少しずつ再開しており、9月中旬には世に出回るという。