秋の臨時国会が10月24日に召集された。安倍晋三首相は任期中の憲法改正に向け、今国会中に自民党の改憲条文案を提示する方針。ただ、野党は国民投票に関する議論を優先するよう求めており、条文案の提示までたどり着くかは見通せない。片山さつき地方創生担当相の国税庁への口利き疑惑など、波乱要因もある。
憲法改正案は自民党単独で提示
首相は24日の所信表明演説で、「憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ねていく」と表明。自民党案の提示に意欲を示した。当初は公明党とすり合わせた上で与党案として提示する意向だったが、公明党が慎重姿勢を崩さないため自民単独での提示に切り替えた。
首相の目標は2020年の新憲法施行だが、そのためには年内に改正案を国会で発議し、来年には国民投票を実施しなければならない。しかし、実際には今国会中に自民党案を提示できるかどうかも未知数だし、仮に提示できたとしても年内に与党案をまとめ、議論を深めて衆参両院での可決にたどり着けるとは到底思えない。
実際のところは自民党案を提示し、丁寧な説明を重ねて公明党や国民の理解をいかに得るかが重要だ。少なくとも現状は国民の多くが「改憲を急ぐべきだ」とは思っていない。
政府は慎重だが波乱が起こるとしたらスキャンダル
政府は秋の臨時国会に30本ほど法案を提出するのが通例だが、今年は13本に絞り込んだ。来年夏の参院選を見据え、失点の機会を減らそうというわけだ。重要法案は外国人労働者の受け入れを拡大する入国管理法改正案などに限られる。首相は所信表明演説で社会保障制度の抜本改革に意欲を示したが、法案の提出は来年以降となる。
波乱要因は、片山地方創生担当相をはじめとするスキャンダルの数々だ。片山氏は就任早々、週刊誌に「会社経営者から100万円を受け取って国税庁に働きかけた」と報じられた。片山氏は否定し、週刊誌を名誉棄損で提訴したが、野党の追及は必至。片山氏のほかにも新任の政務官が公職選挙法違反を指摘されており、それらの疑惑が膨らめば法案審議にも影響を与えるし、支持率の低下につながれば憲法改正どころじゃなくなる。
「国会はスキャンダル追及の場じゃない」という批判は根強いが、力の弱い野党にとってはそれくらいしか政権を追い落とすタネがないというのが実情。年末に向けて野党の再編論も出てくる可能性がある。