若い女性層を惹きつけるフィンエアー アジア路線拡大で急成長

パートナーシップを結ぶ、フィンランドの人気ファッションブランド「マリメッコ」の特別塗装がされたA350機。 写真/内山さつき

経済

若い女性層を惹きつけるフィンエアー アジア路線拡大で急成長

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フィンランドのフラッグキャリア、フィンエアー(フィンランド航空)が、日本-ヨーロッパ路線を拡大している。成田、関空、セントレア、福岡空港とヘルシンキを約9時間半~10時間半で飛ぶ直行便は、ヘルシンキ空港のハブ空港化に伴って需要が右肩上がり。本拠地フィンランドも“日本に最も近いヨーロッパ”としての存在感を増している。

北欧ブームでフィンランドが人気の渡航先に

フィンエアー(フィンランド航空)の2018年の夏期スケジュールでは、日本とヘルシンキを結ぶ路線は成田でのダブルデイリー(1日2便)運航や福岡での夏期運航により週に31便、JAL(日本航空)とのコードシェア便を含めると、最大で週38便に拡大した。ヨーロッパ系のエアラインとしては、ルフトハンザドイツ航空をおさえ、日本路線で最大手となる。

業績を見ても昨年2017年は、前年比で売上高と旅客数がともに10%増加、過去最高の営業利益を記録している。その中で成長著しい大きなマーケットとなっているのが、日本・中国を含むアジア路線だ。

フィンエアーにとって日本は現在、本国フィンランドに次いで大きな市場。その一因として、近年の北欧ブームでフィンランドが人気の渡航先となったことがある。

旅客は観光目的が約80%、ビジネス利用が約20%。フィンランド政府観光局の調査によると、フィンランドに観光目的で訪れる日本人の旅行者は前年比で約12%増加している。特に若い女性客が増えていることと、レジャー目的の旅客もビジネスクラスを利用するようになったことが、この好業績に貢献していると見られている。

こうした顧客を惹きつけるフィンエアーの魅力と、アジアでの市場を拡大させた独自の戦略とは一体どんなものなのだろうか。

“日本に最も近いヨーロッパ” 地理的優位性を生かした路線開拓

フィンエアーがアジア路線を重要なものとして位置づけたのは、ここ数年に始まったことではない。日本便を就航したのは、1983年。当時は予備の燃料タンクを搭載し、北極点を通る現在とは異なるルートだったが、実は日本とヨーロッパを直行便で結んだ最初の欧州系エアラインだった。

その5年後の1988年、ロシアがシベリア・ルートと呼ばれる現在のルートを解放。ロシア領空を通ってアジアとヨーロッパがダイレクトに結ばれることになり、同年、北京路線も開通した。

2018年9月までフィンエアーのCEOを務めたペッカ・ヴァウラモ氏は、アジア路線においてフィンエアーの本拠地となるヘルシンキ空港は、地理的に非常に優位な立地にあると指摘する。

距離が短いことに加え、シベリア・ルートは、他の中欧諸国のハブ空港が使うルートと比較して混雑していない。この最短最速のルートによって、フィンエアーはアジア諸都市に直行便が運航できる、唯一のヨーロッパの航空会社となった。燃料や排出量が削減でき、機体の稼働率が上がったことが、アジア路線の積極的な開拓を可能にしたのだ。

現在、東京-ヘルシンキ間の飛行時間は約9時間半。ヘルシンキは、実は日本に一番近いヨーロッパだ。また、フィンエアーはヘルシンキ空港とも連携して国際線と国内線を同一ターミナルに設計、乗り継ぎ時間を35分~40分に短縮して、ヘルシンキのみならずヨーロッパ諸都市への乗り継ぎにおいてもその速さを追求している。

2018年は創立95周年、東京路線35周年、北京路線30周年、ソウル路線10周年の記念年。フィンエアーとヘルシンキ空港の共同制作による、東西を結ぶヘルシンキを舞台にしたショートフィルム「East and West Side Story」のプレミア上映会が、空港内で行われた。

洗練された北欧デザインと最新鋭機体を取り入れたブランド戦略

先に述べた女性客の増加や、観光目的の旅客のビジネスクラス利用につながっているのが、2013年から始まった、フィンランドの人気ブランド「Marimekko(マリメッコ)」とのパートナーシップだ。

花柄の「ウニッコ」のバリエーションをはじめとする、フィンエアーのために提供されたマリメッコのテキスタイルは、エコノミークラス、ビジネスクラス両方のブランケットやテーブルウェアで使用され、非常に人気が高い。マリメッコの他にも、フィンエアーはビジネスクラスでのテーブルウェアや、機内販売のアイテムに「ARABIA(アラビア)」、「iittala(イッタラ)」をはじめとするフィンランドブランドを積極的に取り入れ、他のエアラインとの差別化を図っている。

さらに特筆すべきは、エアバス社の最新機体をいち早くアジア路線に導入していることだろう。フィンエアーは、2015年、ヨーロッパの航空会社で最初に同社の最新鋭機体「A350」を取り入れた。日本路線には2017年より成田・関空路線に就航、続いて名古屋空港にも2019年5月から全便に投入され、A350体制がより強化される予定だ。

マリメッコのデザインでコーディネートされたビジネスクラスの座席。アメニティは女性客を中心に大好評だ。

 

ヘルシンキ空港のすぐそばに位置するフィンエアー本社のロビーには、マリメッコとのパートナーシップを展示するギャラリーがある。

JALとの共同事業によって拡大した需要

こうした先行投資などの努力に加えて、需要拡大に貢献したのが、JALとの提携だ。フィンエアーはヨーロッパ路線で、JAL、ブリティッシュ・エアウェイズ、イベリア航空と共同事業を展開している。

コードシェアやマイレージの提携によって、利用客にとってもフライトの選択の幅が広がり、例えば成田-ヘルシンキ間はJALのフライトを選び、そこから乗り継いだ後はフィンエアーを利用するといった新しい需要も生み出した。

2019年夏期(3月31日より開始)には、JALとの共同事業を含めると、日本便は週42便に増え、前年に比べてさらに15%の増便となる。大阪路線には週3便を追加、成田路線はゴールデンウィーク中1日3便を予定している。

こうした勢いは、日本便だけにとどまらない。今日、フィンエアーはアジア約20都市、9カ国に週97便を運航。2016年には中国便を大幅に増便させた。

前述のヴァウラモ氏は、日本に次いで、中国の中産階級が海外旅行に大きな関心を寄せていることに注目している。中国での就航都市は現在、北京、上海、西安、重慶、広州、香港と、今年5月に就航した南京線を含めた7都市。これから中国路線はますます大きな市場となっていくことだろう。

こうした成長を受け、ヘルシンキ空港もハブ空港としてよりキャパシティを拡大するために、2020年までに2000万人の旅行者が利用できるよう準備を進めている。

もはやフィンランド人の旅行者をメインターゲットとしていた時代は遠い過去のことだ。アジアとヨーロッパを結ぶ拠点として発展を続けるヘルシンキが今後どのように進化していくのか、これからも目が離せない。

ヘルシンキ空港にあるフィンエアーのラウンジ。フィンランド・デザインの名品を集めた洗練された空間は、『Priority Pass』の「ラウンジ・オブ・ザ・イヤー」に選出されるなど、高い評価を受けている。