来場者数は約2800万人、経済効果は約1.9兆円を試算
2025年の国際博覧会(万博)が大阪で開催されることに決まった。大阪での開催は1970年以来、55年ぶりだが、当時と違って現代は世界の情報が自由に行き交う。1250億円ともいわれる整備費を投じてまで、今、万博を開く必要があるのか。投資効果を疑問視する声もある。
万博をめぐっては大阪の政財界を挙げての誘致活動が進められてきた。松井一郎大阪府知事と安倍晋三首相との関係が深いこともあり、政府も強力に誘致を後押し。ロシアのエカテリンブルク、アゼルバイジャンのバクーに競り勝った。日本での開催は愛知万博(「愛・地球博」)以来、20年ぶりとなる。
舞台となるのは大阪市の西の臨海地域に浮かぶ人工島、夢洲(ゆめしま)。国、大阪府と市、民間が3分の1ずつ、合計1250億円を投じて会場を整備。拡張現実(AR)などの最新技術を駆使し、バイオマスエネルギーなど最新の環境技術も活用する。
出店するのは150カ国と国際機関など。半年間の開催期間中に約2800万人が来場し、経済効果は約1.9兆円を見込む。ちなみに大阪府の来年度の一般会計予算は2.5兆円だ。
日常的にモノや情報が行き交う時代に、どれだけの人が万博に興味を示すか
大阪の政財界が誘致を進めてきたのは、万博が長く低迷してきた大阪経済の活性化につながるとの期待からだ。例えば会場となる夢洲は1970年代に埋められたものの、バブル崩壊により企業誘致に失敗。長く大阪の“負の遺産”と呼ばれてきた地域だ。
今回の万博誘致を機に地下鉄を夢洲まで延伸するなどインフラを整備し、カジノを含む統合型リゾート(IR)も誘致しようというのが大阪の政財界の狙いである。開催が決まった瞬間、テレビに映った世耕弘成経済産業相や松井知事の歓喜の笑顔は印象深い。ちなみに世耕氏は和歌山県選出である。
ただ、万博の効果に懐疑的な見方も少なくない。前回開催された1970年はまだまだ人やモノが国境を飛び越えて行き交うのは難しい時代で、万博に訪れた人々は各国のパビリオンで疑似体験を楽しんだ。だからこそ、6400万人もの人が訪れたのだ。
現代は人やモノ、情報が国境の壁を越えて自由に行き交う時代。テレビをつければ海外の景勝地を紹介する番組が流れ、インターネットにつなげば世界中の情報を瞬時に入手でき、世界中の人と交流できる。そんな時代に、どれだけの人が万博に興味を示すのだろうか。
その証拠に、直近の万博がどこの国で開催され、次回はどこなのか、日本国内に言える人などほとんどいない(正解は2015年がミラノで、2020年がドバイ)。
どうせやるなら、訪れたいと思う人がたくさんいて、訪れた人が満足し、そして開催後も人々の集う街になる。そんな“夢の博覧会”を期待したい。