再編にすがる野党の焦り

2014.5.12

政治

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支持率の低迷が続く野党が焦りを募らせている。消費増税を受けた景気の腰折れを期待したものの思惑が外れ、集団的自衛権を巡る議論でも与党と差別化できずにいる。唯一の明るい材料が再編の障壁となっていたみんなの党前代表、渡辺喜美の失脚。次の大型選挙となる来春の統一地方選に向け、このチャンスに再編を前進させようと躍起になっている。

ワンマン党首の失脚で再接近した第三極

4月24日、ぎこちない表情の国会議員たちが国会内の一室に集った。顔を揃えたのは日本維新の会の小沢鋭仁国対委員長やみんなの党の山内康一国対委員長、結いの党の柿沢未途政調会長ら。東日本大震災を契機とした国会議員歳費の2割カットが4月末で終わるのを受け、5月以降の歳費を3割カットする新たな法案を、3党共同で提出した。

みんなの党が昨年末に分裂して以来、不毛な対立を繰り広げてきたみんなの党と結いの党。久々に顔を合わせた面々は居心地の悪さを隠そうとしなかった。

ギクシャクしていた野党が再び接近するきっかけとなったのはみんなの党前代表、渡辺喜美氏の失脚だ。DHC会長が週刊誌に寄せた手記で「渡辺氏に選挙資金として8億円貸した」と証言。渡辺氏はあいまいな説明しかできず、代表辞任に追い込まれた。DHC会長に問題を告発するよう後押したのは、かつての同志であり、昨年末に袂を分かった結いの党代表、江田憲司氏である。

野党再編を目指す江田氏にとって最大の障害こそ渡辺氏の存在だった。みんなの党創設時に「政界再編の触媒政党を目指す」と意気込んだ渡辺氏だが、次第にワンマン化。幹事長だった江田氏らの進言を聞き入れず、政界再編路線から独自路線に軸足を移していった。

決定打となったのは昨年の参院選。連携していた維新の会代表の橋下徹氏が「慰安婦発言」で逆風を浴びると、すかさず態度を転換。選挙協力を打ち切り、逆に対抗馬まで擁立した。党内の反対論には一切耳を貸さず、渡辺氏の方針に反抗的な江田氏らは党から追い出した。

それでも虫の収まらない渡辺氏は代表の権限で離党メンバーの会派離脱を認めず、結いの党の国会活動を実力行使で阻んだ。これが「大人げない」との批判を招き、DHC会長に告発を決意させることになるが、そのことは後に知る。

神経尖らせる民主

渡辺氏の失脚を機に各党は動き出した。維新の会代表の橋下徹氏は新代表に就いた浅尾慶一郎氏と会い、「政策的には今の国政政党のなかでも親和性がある」と秋波を送った。大阪府議会ではさっそく大阪維新の会とみんなの党による統一会派の結成を決めた。

維新と結いの連携協議にも弾みがつき、参議院での統一会派の結成で合意。今年8月までの合流を目指して新党結成のための協議会を立ち上げることも決めた。さらに冒頭で紹介した3党共同法案の提出。こうした流れを受け、名古屋市長の河村たかし氏は自らが主宰する地域政党”減税日本”を解党して新党に合流する考えを表明。再編機運はにわかに盛り上がりをみせている。

神経を尖らせるのは最大野党の民主党だ。「あんまり先走りしてくれるなよ」。ある大臣経験者は、夜の会合でたまたま居合わせた結いの党幹部にこうクギを刺した。

国政政党の再編で最大の懸案となるのが選挙区の問題。衆議院では小選挙区制を採用しており、同一選挙区では1人しか当選できない。次期選挙で統一候補を擁立するには候補者を絞る必要があるが、それぞれの党に現職議員がいると調整は容易ではない。

仮に維新と結いなどで先行して合流し、選挙区を割り振ってしまうと、後から民主党議員が入り込む余地がなくなってしまう。先の大臣経験者はそれを心配し、「まずはそれぞれの地域で選挙区を調整し、それから政党の合流話に進むべきだ」と訴える。

選挙区調整が必要なのは国政だけではない。来年4月の統一地方選で民主党と維新の会など第三極勢力が激しい議席争いを繰り広げれば、将来の再編に禍根を残しかねない。実際に愛知県では河村たかし氏の動きを警戒し、民主党議員が河村氏周辺に選挙区調整を呼び掛けている。

景気腰折れも回避し、隙の見えない与党

野党各党が、困難だと承知の政界再編にすがるのは、独走する巨大与党への攻撃材料が乏しいからだ。多くの野党幹部は4月の消費増税による景気の腰折れを密かに期待していたが、小売り各社の努力もあり、今のところ大幅な消費減にはつながっていない。株価も安定的な動きを見せており、株価と連動する内閣支持率も安定して推移している。

今後の国会論戦の目玉となりそうな集団的自衛権の問題をめぐっては、維新やみんな、結いの党が安倍政権と同じく憲法解釈変更に前向き。民主党の執行部は反対を模索するが、党内には賛成派の保守系議員も多く、方針をまとめるのは至難の業だ。オバマ大統領の来日時にまとまらなかったTPP交渉についても、民主党や維新の会など多くの野党は賛成派で、与党と差別化しづらい環境となっている。

次の大型選挙となる来春の統一地方選に向け、自分たちの支持率をどう上げるか。与党の敵失を待つか、再編にすがるしかないというのは国民にとって不幸な現実だが。