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[資生堂]自分の細胞で生やす 毛髪再生医療研究 研究者を直撃

2014.05.12

技術・科学

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2013年5月、「資生堂」が、カナダのバイオベンチャー企業「レプリセル社」の「毛髪再生医療技術」を導入するというニュースが話題となった。日本を代表する企業が、今注目の”再生医療”で人類の永遠の悩みともいえる「脱毛症・薄毛」に取り組むとあって大きな期待を集めている。

毛髪再生技術の4つの画期的ポイント

個人の毛髪細胞を採取し、培養を行い、それを再び頭皮に戻す技術。これまでの脱毛症・薄毛治療では難しかった女性への効果を可能にすることや、高い安全性で注目を集めている。

[1]身体的負担が少ない

これまでの脱毛症や薄毛治療は、男性ホルモンに働きかけるものであったり、植毛などの身体的・精神的負担が大きいものが多いようであった。その点、この技術は頭皮の細胞の一部を取り出すだけと、負担の少なさが特徴だ。

[2]患者自身の細胞を移植

患者の毛髪細胞を使用する「自家細胞移植」のため、拒絶反応のリスクも少なく着実に毛を生やすことが期待できる。サービスが始まった際には、その患者の細胞を徹底的に保護・管理しながら、サービスを行う。

[3]効果が持続する

患部に直接、塗与するような治療法や飲み薬の場合、それを止めると効果も止まってしまうことがほとんど。その点、この技術では一定期間効果が持続すると考えられている。

[4]男女問わず施術可能

近年、過度な働き過ぎやストレス過多により、女性の薄毛が増えてきている。しかし、これまでの治療薬は男性ホルモンに働きかけるものであったり、濃度の高い治療薬は女性の利用が禁じられていたりした。その点、女性でも利用できるのがこの技術の強み。

話題の再生医療で脱毛や薄毛の悩みに挑む

注目を集めるこの研究の現状や、実用化した暁にはどんな社会が待っているのか? 「資生堂」の新領域研究センター 再生医療プロジェクト室長・岸本治郎氏にうかがった。

資生堂 新領域研究センター 再生医療プロジェクト室長・農学博士

岸本治郎 きしもと じろう

「レプリセル社はカナダのバイオベンチャー企業であり、著名な2名の研究者がファウンダーとして在籍しています。今注目を集めているのが10年以上の基礎研究や臨床研究を経て、安全性が立証された世界最先端の毛髪再生・特許技術です。『自家細胞移植技術』というもので、再生医療の領域になります。脱毛症や薄毛に悩む患者の頭皮から採取した細胞を培養し、脱毛部位に注入します。脱毛部位の毛包を再活性化させることで、健康な毛髪の成長を促すのです」

そもそも、私たちの髪の毛は成長した後、自然に抜け、再び同じ毛穴から新しい毛髪が生えてくる「毛周期(ヘアサイクル)」を繰り返している。このサイクルは、成長期(初期・後期)、退行期、休止期に分かれている。通常、この期間を経て元気な毛髪が生えるが、薄毛や脱毛に悩む人はこのサイクルに異常が生じている状態なのだ。

現在、日本でメジャーな増毛・育毛方法は主に2つある。一つは、CMでもお馴染みのAGA(Androgenetic Alopecia)。「男性型脱毛症」を意味するもので、プロペシアという飲み薬を持って対処する。こちらはホルモンに作用するもので、病院でのみ処方されるものだ。もう一つは頭皮に直接塗布する発毛剤である。こちらは有効成分のはたらきで発毛を促す。いずれも、男性型脱毛症に特化した製品であり、女性は利用できなかったり、高濃度のものは使用が制限されたりしていた。

この療法において、特筆すべきは女性でも利用できること。現代の女性はストレスや不規則な生活から薄毛で悩む人も多い。「実は薄毛外来の患者は女性の方が多い」という声もあるほどなのだ。

女性にも施術可能な画期的な技術

「これまでの療法は毛を作り出す『毛包』をどのように活性化させるか、というものでした。一方、私たちが行うのは患者さんご自身の細胞を採取し、培養して元に戻す”再生医療”なのです。そのため、これまで男性に限定されていた薄毛治療が女性にも施せるようになったのです。昨年、再生医療に関する新しい法律が成立したことで、プロジェクトを加速度的に進められる条件が整いました」

実用化の際には、病院でサービスが行われるという。病院で細胞を採取してもらい、それを「資生堂」の研究所で培養。再び病院に戻し、脱毛している箇所に注入するといったイメージだ。世界待望の技術だが、現在はどの段階まで来ているのだろうか。実現までのスケジュールは?

「レプリセル社では、やっと第一段階である『安全性の証明』が終わったところで、実際に人に対する効果の実証試験はこれからです。当社としては2018年に実用化を目指したいと考えていますが、一足跳びに100%完成形で髪の毛がフサフサになるというのは楽観的すぎるかなと思っています。期待が大きいこともひしひし感じていますので、少しずつ効果を高めていくよう研究を加速させていきます」

2014年5月1日には、神戸に毛髪再生医療の中核となる「資生堂細胞加工培養センター」を開設。日本の美を作ってきた「資生堂」が、今度は人々の悩みを根本から解決してくれるかもしれない。今後もプロジェクトの動向に注目していきたい。

「資生堂」育毛・発毛研究の歩み

「資生堂」というと美容のイメージが表に出がちだが、実は日本の育毛研究のパイオニア的存在としても知られている。現在はアメリカ・ボストンにある世界最高レベルの皮膚科学研究所”CBRC(MGH/ハーバード皮膚科学研究所)”をはじめ、世界各国の大学や研究所などと協力しながら研究を進めている。

CBRC(MGH/ハーバード皮膚科学研究所)

1989年に資生堂、米国・ボストンのマサチューセッツ総合病院(MGH)、ハーバード医科大学の三者によって設立された皮膚科学総合研究所・Cutaneous Biology Research Centerの略称。資生堂からも研究員を派遣し、世界的な研究者とともに共同研究を行っている。

製品群を見ると、1915年に日本初ともいわれる育毛用ヘアトニック『フローリン』を発売。その後、1982年に『薬用フローリン』、2005年には、生体内薬用成分アデノシンを配合した製品群を発表し、化粧品店やドラッグストア、スーパーなどで市場をリードする商品として展開している。さらに、先進の研究成果を搭載した『アデノバイタル』を理容室や美容室で展開している。

 

今回の「毛髪再生医療研究」は、頭皮を含めた皮膚科学の研究開発力がある「資生堂」の新たな取り組みとして大きな注目を集めている。

政経電論せいけいでんろん

「政経電論」の編集部です。佐藤尊徳(そんとく)編集長の下、若い世代に向けて政治・経済・社会問題を発信しています。イノベーションや働き方改革、北欧型の社会保障、国防、原発、クジラ等に注目中。

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