【国民投票法】改憲について国民が理解しておくべき3つのこと

2019.10.10

政治

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2021年9月までの自らの任期中に憲法改正を実現しようと意欲を見せる安倍晋三首相。自民党は党役員や衆参両院の憲法審査会会長にも実力派議員を配置し、「改憲シフト」を組んでいる。徐々に現実味を増す改憲。どのような手続きで改憲が進んでいくのか、私たち国民も理解しておく必要がある。

改憲に向けて着々と法整備は進められている

日本国憲法が1947年の施行以来、一度も改正されたことがないのは周知の通り。そもそも、ごく最近まで改正の手続きすら整っていなかった。

改正の手続きがようやく整ったのが施行から約60年後の2007年、第1次安倍政権の時代だ。与野党の修正を経て「日本国憲法の改正手続に関する法律(通称・国民投票法)」が成立。2010年5月に施行された。

ここで決められたのは国民投票の具体的な方法だ。憲法は第96条で衆参両院の3分の2以上の議員の賛成によって国会として改憲を発議(国民に提案)すること、そして国民の承認を得ることを定めているが、国民の承認を得るための具体的な方法は未整備だった。

例えば「国民」とは誰を指すのか、年齢は何歳から何歳までで、公民権が停止されている人も含むのかどうか、どうすれば「承認」されたとみなすのかどうかなどは決まっていなかったのだ。

国民投票法では国民投票の投票権者について、18歳以上の国民と規定。在外邦人や公民権を停止されている人も投票権者とした。ちなみにこの法律の制定を機に公職選挙法等の改正も行われ、一般の選挙も投票年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられた(2016年6月19日施行)。

このほか、国会で憲法改正原案を発議する場合、内容が関連する項目ごとに行うこと、憲法改正について話し合う機関として衆参両院に憲法審査会を設置すること、国会発議後に60~180日間の周知期間を経たのちに国民投票を行うことなどが決められた。「承認」の基準は投票総数の過半数と定められた。

改憲は項目ごとに個別に行われる

国民が知っておくべき一番大事なことは、「投票総数の過半数」が賛成なら、改憲は実現するということだ。国民投票法の制定過程では母数を有権者数とし、「絶対得票率」で決めるべきだとの意見や、一定の投票率を上回らなければ投票結果を無効とする「最低投票率」制度を適用すべきだとの声もあったが、見送られた。仮に有権者の3割しか投票せず、そのうちの半分が賛成票を投じただけでも国民が承認したこととなる。すべての有権者の15%しか賛成していないにもかかわらず、である。

この国の「指針」を決める重要な投票だけに、すべての国民が関心を持って考え、しっかりと投票に参加すべきだ。そのためには誰が、どういう狙いでその改正案を提出したのか、それによって国民生活がどう変わるか、日本が国際社会においてどういう立場になっていくのかなど、考えるべきことがたくさんある。

もう一つ、重要なのは改憲の発議及び国民投票が関連する項目ごとに、個別に行われることだ。例えば自民党は4項目の改憲案をまとめているが、国会で議論されるとしたら4項目は別々に議論され、仮にすべての案が衆参両院の3分の2以上の賛成を得られたとすれば4つの改憲案が別々に発議されることとなる。

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国民投票ではこの4つのうち、“9条改正には反対だけど残り3つは賛成”とか、“教育の充実だけは賛成”とか、多様な投票方法がある。仮に9条改正に反対の立場だとしても、すべての改憲項目から目を背けるべきではない。逆に9条改正に賛成だとしても、その他の項目にもよく目を光らせなければならない。

勧誘や報道は基本的に自由。自分の答えを持っておくことが大事

7月の参院選で与党を含む“改憲勢力”は参院で3分の2議席を割り込んだが、与党としては大勝した。この結果を受け、安倍首相は憲法改正について「少なくとも議論すべきだという国民の審判は下った」と強調。野党に改憲論議に応じるよう迫った。

日本経済新聞が8月~9月に行った世論調査では憲法改正を「議論すべきだ」との声が77%に上り、「議論する必要ない」の16%を大きく上回った。リベラル層を中心に「安倍政権での改憲に反対」との声は根強いが、国民の改憲へのアレルギーは薄らぎつつある。

ただ、国民投票をめぐってはまだ決着していない課題もある。自民党は駅や商業施設などに誰でも投票できる共通投票所を設けるなど、投票に関する制度を公職選挙法の改正内容に合わせる国民投票法改正案を提出。逆に立憲民主党などの野党はテレビやネット広告を規制するなどの改正案を提出し、いずれも採決されずに放置されている。国民が「議論すべきだ」と考えているのに、国会がそれを止めようとするのは筋の通らない話だ。与野党は党利党略を捨て、早期に手続きの詳細を整えた上で、具体的な改憲の中身の議論に入るべきである。

ちなみに、現在の国民投票法が定める「国民投票運動」では、賛成・反対を呼びかける運動は一部の公務員を除き原則“自由”。年齢制限や国籍制限は無く、その方法もビラやパンフレット、ポスター、演説のほか、一般的な選挙で使われる宣伝カーや拡声器の使用もOK。戸別訪問も禁止されていない。もちろん、SNS等のネットの利用にも制限は無い。

※ラジオ・テレビの広告放送には期間的なNGあり。組織的に利益供与や利害関係を用いて誘導することも処罰の対象になる。

国会が具体的な改憲議論を始めたとき、国民はもう一つ、気をつけるべきことがある。改憲をめぐっては各メディアにも“持論”がある。それを理解した上でしっかりと国会や有識者の議論を見守り、自分の答えを見つけていかなければならない。