“LINEは売り時”だった ヤフー・LINE統合でソフトバンク、メガプラットフォーマー構想実現へ

2019.11.18

経済

4コメント
“LINEは売り時”だった ヤフー・LINE統合でソフトバンク、メガプラットフォーマー構想実現へ

写真/アフロ

検索サービス「ヤフー」を展開するZホールディングスと対話アプリ「LINE」を展開するLINEが11月18日、経営統合に向けて基本合意したことを正式に発表。Zホールディングスの株式を4割握るソフトバンクグループとLINEの株式を7割保有する韓国ネイバーを交えて協議していた。LINEの利用者数は約8000万人で、ヤフーは約5000万人。ヤフーはさらに金融、小売りなど多様な事業を手掛けており、統合が実現すればアジアを基盤に一億人を超すユーザーをもつ“メガプラットフォーマー”が誕生することになる。

いずれソフトバンクグループ内で組織再編

ソフトバンクグループ(ソフトバンク)によるLINE取り込みは、ヤフーを会社分割して持株会社Zホールディングスを立ち上げると発表した今年4月時点ですでに念頭にあった。Zホールディングスは買収の受け皿となるインキュベーターとなるもので、実際、10月1日の設立を待つように、ZOZOも傘下に入った(傘下入りのためのTOBはまさにLINEとの統合交渉が明らかになった11月14日に完了した)。そしてLINEである。

今回のLINEとの統合では、両社は共同出資の新会社をつくり、その子会社にZホールディングスが入る形が検討されているが、これは暫定的な形態で、いずれ株式交換等によりグループ内で組織再編されることになろう。LINEは事実上、ソフトバンクに買収されると見ていい。

LINEは新たな収益源の確保に迫られていた

両社の統合は、米国や中国のメガプラットフォーマーと対抗するという攻めの側面があるとともに、両社の追い詰められた状況も後押しした。特にソフトバンクについては、孫正義社長兼会長が組成した10兆円の「ビジョンファンド」が投資する、シェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィー・カンパニーが新規株式公開(IPO)を延期したのを境に、市場ではビジョンファンドが投資する他のユニコーン企業群についても疑念が持たれはじめている。直近の7~9月期決算はビジョンファンドの1兆円近い巨額損失で大赤字に転落した。

一方、LINEはみずほフィナンシャルグループと共同でネット銀行「LINE Bank」を設立、2020年の開業を目指して準備を進めている。「LINEは金融子会社『LINEフィナンシャル』を設立し、既存の事業者と組むことで矢継ぎ早に金融事業を強化している。主力のスマホ決済サービ『LINE Pay』を中核にして、損保ジャパン日本興亜と提携して『LINEほけん』、野村ホールディングスと組んで『LINE証券』などの金融関連事業を展開。狙いは“LINE経済圏”の構築だ」(エコノミスト)とされる。

しかし、LINEは主力の対話アプリの成長が頭打ちとなり、新たな収益源の確保に迫られていた。金融事業を含む戦略事業の営業損益は赤字で金融事業のテコ入れは待ったなしだった。「LINEはまさに“売り時”だった」(同)というわけだ。

「このままでは生き残れない」という危機感

市場関係者によると「国内8000万人ものユーザーを持ち、85%が毎日アクセスするというLINEを取り込めば、ソフトバンクグループの企業価値は飛躍的に高まる。LINEの時価総額は9600億円足らず、プレミアムを加味しても十分射程に入る」と見られていた。

その仲介役(黒子)を果たしたのはソフトバンクとLINEの共通のメインバンクで、「ソフトバンクとは一蓮托生の関係」(メガバンク幹部)とされるみずほフィナンシャルグループだった。

今夏、Zホールディングスの川辺健太郎社長とLINEの出澤剛社長が都内のホテルで会談、両社の事業統合について話合った。次いで9月にはソフトバンクの孫社長兼会長とLINEの親会社である韓国ネイバー首脳が会談し、経営統合がほぼ固まった。「このままではGAFAに押され、日本のプラットフォーマーは生き残れない」という危機感が両社の背中を押した。