ゴーンの批判に世界も共感!ここがヘンだよ日本の司法制度

2020.01.17

政治

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カルロスゴーン

ロイター/アフロ

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が逃亡先のレバノンで記者会見し、無罪を訴えるとともに日本の司法制度を「時代遅れ」などと厳しく批判した。海外メディアも注目したこの会見ではゴーン被告に共感する声も多くあがり、日本の司法制度の特異性が世界中に知れ渡ることに。現在、世界から厳しい目を向けられている日本の司法制度の問題点とは?

海外から批判される日本の司法制度の問題点3つ

「弁護士の立ち合いもなく、毎日何時間も尋問を受け、自白するよう迫られた。公平な裁判が不可能であることに観念し、唯一選べる道だった」。ゴーン被告は12か国、60社のメディアを前にこうまくしたてた。

日本で起訴された会社法違反(特別背任)などの容疑については日産自動車や検察の「陰謀」だと主張。陰謀に関わったとして複数の日産幹部の名前を挙げたが、ゴーン被告の主張を裏付けるような具体的な証拠などは無く、これまでの主張の繰り返しに終始した。

ゴーン被告が特に力を入れたのが日本の司法制度批判だ。「非人道的な扱いを受け、私自身と家族を守るためには(逃亡以外の)選択肢がなかった」「有罪率が99.4%に上る司法制度の中に直面していたことを忘れないでほしい」「日本で死ぬか出向すべきか(考えた)」などと並べ立て、自らの行動を正当化した。

日本国内でビジネス活動をしている以上、日本の制度を守るのは当然であり、保釈中に違法な手段で海外に逃げるなど正当化できるはずがない。しかし、日本の刑事司法制度がかねて問題視されており、今回の事件をきっかけに海外から日本を批判する声が上がっているのも事実。特に問題視されているのが次の3点だ。

日本で起訴されたら99%有罪に

1つ目は有罪率の高さ。ゴーン被告は会見で「有罪率が99.4」と指摘、2016年には「99.9-刑事専門弁護士-」というテレビドラマが放送され、話題になった。ドラマのタイトルとなった99.9%というのは、日本における刑事事件の裁判有罪率のことである。

実際に司法統計を見てみると、2018年に地方裁判所で裁かれた刑事事件の被告は4万9811人で、このうち無罪判決を受けたのは105人。たった0.2%である。有罪以外にも「取り下げ」などがあるので「有罪率」をどう定義づけるかは難しいし、ゴーン被告やドラマの数字とは必ずしも一致しないが、刑事事件で起訴されればほとんどが有罪となるというのは事実である。

これだけ有罪率が高いと、「有罪が当たり前」という風潮となる。検察は有罪を勝ち取るために躍起となり、起訴されれば世間も裁判官も「有罪に違いない」という思い込みが生じ、えん罪につながる可能性がある。また、検察官は起訴しておいて無罪判決が出ると失点となるため、確実に有罪が見込める事件にしか取り組まなくなる。本来、裁かれるべき犯罪者が野放図になっている可能性もある。

ただ、日本の場合は逮捕、あるいは検挙された人のうち、検察が起訴しない人も多いということに留意する必要がある。検察が起訴した割合、起訴率は2018年の犯罪白書によると刑法全体で37.5%、交通違反を除くと51.5%。日本では、逮捕、検挙されたらほとんど有罪というのは誤解で、有罪になりそうな事件しか起訴しないのである。

取り調べに弁護士同席を認めないのは日本だけ

2つ目に問題視されているのが取り調べに弁護士の同席を認めていない点だ。ゴーン被告も会見でその点を批判しているが、法務省のまとめた資料によると、取り調べ時に弁護士の立ち合いを認めていないのは、日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、韓国の主要7か国中、日本だけ。フランスでは弁護人が立ち会うか、弁護人を呼び出した上でなければ「取り調べ不可」(権利の放棄は可能)だという。

弁護士が立ち合いできないことについてはかねて国内でも批判が多いが、今回の事件をきっかけに「法廷で汚名をそそげれば良かったが、公正な裁判を受けられたかどうかは分からない」(米ウォール・ストリート・ジャーナル)などと海外からも批判が出ている。

日本では法律が改正されて昨年6月から取り調べの録画・録音(可視化)が義務付けられたが、対象は裁判員裁判で取り扱う事件など一部にとどまる。国際的な潮流に合わせ、可視化の拡大や弁護士の立ち合いなどは早急に検討を進めるべきである。

“人質司法”ともいわれる身体拘束

3つ目の問題は容疑者の拘留の仕方である。日本では逮捕から23日間、身体を拘束することができるが、その期間中に起訴すれば、さらに2か月の拘留が認められ、その後も何か月でも延長することができる。弁護士が保釈を請求しても「証拠隠滅の恐れ」を理由に却下されることも多く、ゴーン被告の場合も保釈されるまで約2か月間拘留された。

こうした拘留の運用が“人質司法”と批判されることもある。ゴーン被告も会見で「裁判に5年かかると言われた。私は人質」などと話している。

保釈制度・出国審査の抜け穴も浮き彫りに

ゴーン被告の逃亡を巡っては、これまで指摘されてきた3つの問題以外に、新たな問題点も浮き彫りとなった。保釈制度の抜け穴である。

ゴーン被告は保釈中にもかかわらず、東京から大阪に移動、関西空港からトルコへと飛び立った。捜査当局はその間、ゴーン被告が協力者と綿密に計画を練っていたことにも気づかず、被告がどこにいるのかも把握できていなかった。今後、米国などで導入されているGPS装置の義務付けなど、保釈中の逃亡を防ぐための再発防止策を早急になる必要がある。

出国審査の緩さも課題だ。ゴーン被告は関西国際空港で、箱の中に隠れてプライベートジェット機に乗り込み、出国したとされている。プライベートジェット機の場合、一般の飛行機のような保安検査は行わないのが通例。関空には大型荷物用のX線検査機もおいておらず、箱に隠れたゴーン被告を見抜くことができなかった。同じ手口を使えばその他の犯罪者も容易に日本から出国できるし、違法な取引に利用することもできる。出国審査のあり方についても早急に見直すべきである。

ゴーン被告の会見を受け、森雅子法相は「ご自分が経済活動を行っていた我が国の司法制度のもとで裁判を受け、証拠を出して具体的に立証活動をするべきだ」と批判。東京地検も「被告人ゴーンは犯罪に当たり得る行為をしてまで国外逃亡したものであり、今回の会見内容も自らの行為を不当に正当化するものにすぎない」とのコメントを出した。

確かに日本の司法制度に問題が多かったとしても、ゴーン被告が逃亡していい正当な理由にはならない。ただ、ゴーン被告の主張に海外から同調する声が出ているのも事実。今後、さらに国際化が進む中、海外からもケチのつかない制度構築を進める必要がある。