強制力の低い「緊急事態宣言」が日本で機能する理由

2020.04.02

政治

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提供:Alissa Eckert, MS; Dan Higgins, MAM/CDC/ロイター/アフロ

新型コロナウイルスの蔓延が止まらない。日本では安倍首相が全世帯にマスク2枚を配布することを表明したが、“伝家の宝刀”である「緊急事態宣言」をいつ発令するかに引き続き国民の耳目が集まっている。日本での「緊急事態宣言」、その中身と効果について、いま一度見ていこう。

「緊急事態宣言」が出たらどうなる?

「緊急事態宣言」の根拠となる法律は、2012年4月27日に成立、翌2013年4月13日に施行された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(新型インフル特措法)だ。2009年に大流行した新型インフルエンザ(H1N1亜型)での災禍を教訓に作られたもので、これを今回の新型コロナウイルスに対しても適用できるよう急ぎ改正し、2020年3月14日に再施行。

最大のポイントは「緊急事態」を出せる点だ。新型コロナウイルスが①全国的かつ急速に蔓延 ②国民の生活および経済に甚大な影響を及ぼす、あるいは及ぼす恐れ――の両方を満たせば、内閣総理大臣は実施期間と場所を明確にしたうえで「緊急事態」を宣言できる。そしてこれを受けて各都道府県は、個人の行動を一部制限できる具体的な措置を講じることが可能、という流れとなる。

具体的には、

  • 外出自粛“要請“、施設・イベントなどの休業・使用停止を“要請・指示”
  • 土地等の使用:臨時医療施設開設のために土地・建物・物資を強制使用可能
  • 緊急物資運送の要請・指示
  • 特定物資(医薬品・食料品など)の売渡し要請、収容、保管命令(罰則あり)

など。

ただ、仮に緊急事態宣言が東京都に出され、小池百合子都知事が直ちに前述の施策を実行したとしても「これでは小池都知事が再三繰り返す自粛の“要請”と変わりがないのでは」との印象が強い。

確かに外出自粛や施設・イベントの休業・使用停止などは、相変わらず「要請」どまり。ちなみに「指示」とは、国などがある目的に対し方針・基準・手続きを明確に示し、示された側は従う義務がある点で「要請」より一段強くはなるが、罰則がない。

それでも「国家による緊急事態の宣言」というおどろおどろしさが都民に与える心理的インパクトは小さくはないはず。法的根拠を明確にした点も大きく、諸外国の国民と比べ概して遵法精神が強く、周りの目を気にしがちな国民性を考えればなおさらだ。

現行法の解釈で強硬策に打って出るか

だが、それでも自粛要請に従わない店舗などに対しては、いよいよ強硬策に打って出る可能性もある。要するに現行法の適用厳格化で、例えば、

  • 「食品衛生法」→食中毒の際に営業停止、店舗名公表できる権限を応用
  • 消防法→店舗スペースの不足や、非常口、消火装置の不備を厳格適用して営業停止
  • 入国管理法→不法外国人の就労を厳格に取り締まり
  • 風営法→接客方法(客へのお酌など)や営業時間などの違反取り締まり
  • 各自治体の景観条例、迷惑条例の厳格化→派手な看板、呼び込みなどの取り締まり強化
  • 所得税法、法人税法→脱税、所得隠しの徹底摘発
  • 労働基準法→就業規則・時間のチェック

などで、実はこれらは緊急事態宣言がされなくても可能だが、やはり実際に矢面に立つ公務員にとっても、強行しなければならない“理屈”が欲しいところ。「法律」と「日本国」という“二枚看板・金看板”の後ろ盾ができれば、規制に本腰を入れる公務員の側のモチベーションもアップし、国の全面協力も期待できる、というわけである。

しかし、それでも頑として営業を続ける店舗や不要不急の外出を阻止するためには、いよいよ“法の穴”ともいうべき「奥の手」を繰り出すかもしれない。緊急事態宣言の内容は「要請・指示」など強制力・罰則が伴わないものが大半で一見ソフトに思えるが、実は「土地等の使用」の中身が“クセモノ”と指摘する声も。要するに自粛に従わない飲食店の施設を「臨時の医療施設に使う」として強制収用することもできるわけだ。また、「首都封鎖」がいよいよ現実味を帯びてきた場合は、隅田川に架かる橋と環状八号線を全部、臨時の医療施設用として召し上げ、事実上の通行止めとすればいい。

“秒読み”突入を目される安倍総理の緊急事態宣言。「改憲の際に盛り込みたい『緊急事態条項』の効果を測る好機」「改憲にアレルギーとなっている国民を慣れさせるチャンス」と深読みする向きもあるが、果たして緊急事態宣言は口に苦い「良薬」か、はたまた「劇薬」か。