医療崩壊を防ぐために 発熱外来テントでの診療拡大へ

2020.4.24

社会

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医療崩壊を防ぐために 発熱外来テントでの診療拡大へ

新型コロナウイルスの感染拡大により、医療現場の負担は増大し続けている。緊急事態宣言が発令された目的のひとつとしても医療崩壊を防ぐというのがある。そのためには院内感染をさせないことが重要だが、そういった取り組みの一環でTSP太陽は駐車場などで仮設のテントを設営して診療できる「発熱外来テント」など開発した。

自由度が高い仮設の医療施設での検査が必要

東京都では新型コロナウイルスに感染した入院患者を受け入れる病床を増やすべくホテル等に協力を要請し最大で4000床まで整備する基本方針を決めており、2000床を確保(4/13日経新聞)しているといわれるが、入院患者は2400人を超え(4/22東京都)、今後も感染者がどこまで増えるのかがまだ見通せない。

すでに医療現場はギリギリの状況で、ベッドの確保のみならず、院内感染のリスクが常に付きまとい、医師・看護師・医療従事者のストレスは極限に達している。医療崩壊を未然に防ぐには、まず自由度が高い仮設の医療施設で検査を行うことが有効な手立てのひとつといえる。

「発熱外来テント」を開発・販売したのは、各種イベントの企画制作、会場の設計施工、運営管理、関連設備のレンタルなどを行うTSP太陽だ。親会社の太陽工業は、“膜”の製造販売を行っており、東京ドームの天井部分に使われている白い膜は太陽工業のものだ。TSP太陽は東日本大震災などの災害時に仮設建築物の計画から施工までを手掛けた経験もある。

膜は雨、風、気温など日によって気象条件が変わっても長期間耐えられることが求められ、これまでに培った技術を応用して今回のテントも作られている。

スペースに応じた多彩なサイズ。陰圧室も可能

ある人に発熱の症状が出たとする。厄介なのは、新型コロナウイルスは発熱の症状を伴うことから、その発熱が新型コロナウイルス感染によるものなのか、ほかの要因によるものなのか判断がしにくいことだ。

発熱の症状の診察を受けるために病院を訪問する際、もし病院が導線を整備しきれていなければ、感染の疑いがある患者がウイルスを拡散する可能性はゼロではない。また、感染症の検査を受け入れている病院の場合、通常の発熱で外来を訪れた人が診察中に感染するリスクが高まる。

発熱の症状がある人が病院に入らず、駐車場などの空きスペースに設営されたテントで外来の診察を受けることができれば、それだけで院内感染の危険性は一気に下がる。

テントを用いた外来診療のイメージ。受付、診察、検査の3つのテントを設営
診察ブースの見た目。同社のデモンストレーションより

今回開発された「発熱外来テント」は、設置場所に合わせてサイズ、レイアウトの変更が可能、長期の設置(1カ月以上)を想定している。「1.5K×2K」というテントはサイズが幅3600×高さ2915×奥行き2700ミリでこれを受付用、診療用、検査用の3つのテントを設営することで対応する。

ほかにも、一回り大きい「2K×3K」、巨大テントの「グランデ」は幅15180×高さ5906×奥行き50000ミリで、東日本大震災のときは宮城県内4カ所に設営し、その際は70世帯分が収容できる広さだった。

机、椅子、証明、電源、空調など必要に応じたものも提供するほか、「エアクラッド」は膜材を2重にして外気温の変化に対する影響を軽減させることができるようになっている。

TSP太陽広報によると、設営時間は小さなものは1~2時間から、大きなものも3日ほどで完成するとし、100セットほどの販売を想定していると話す。

あのドライブスルー型も

また、TSP太陽では、韓国などで導入されているドライブスルー型PCR検査所もレンタルで提供を開始。過去には、サミットでドライブスルー形式の検査場が採用されたこともあり、今回はその応用だ。サイズは自由度が高く、設営する場所の状況に応じて設置可能。厚生労働省も一日あたり2万件までPCR検査を拡充する方針であり、ドライブスルースタイルは、今後、需要が高まる可能性もある。

ドライブスルー型PCR検査所のイメージ図

現在は医療崩壊をギリギリのところで食い止めている日本だが、このテントの普及が進めば、患者にとっても、医師にとっても、病院にとっても、メリットがあることは間違いなさそうだ。