世界最強・米海軍の原子力空母を撃沈できる「極超音速巡航対艦ミサイル」を中ロが開発

2020.04.24

政治

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パレードで公開された中国のDF-26対艦弾道ミサイル (中国国防部)

全世界に蔓延する新型コロナウイルス。ついにアメリカ海軍の原子力空母でも流行し、超大国の軍事戦略への悪影響も心配されているが、それとは別にこれまで無敵を誇り、同国にとって“力の象徴”でもあるこのフネが、中国・ロシアが開発を進める「極超音速対艦ミサイル」であっけなく撃沈される可能性がある、というショッキングな“事実”に、米海軍が危機感を募らせている。

米空母の存在意義を失わせれば中ロにもチャンスあり?

米海軍が現在保有する空母は全部で11隻(「ニミッツ」級10隻と「ジェラルド・R・フォード」級1隻=2017年に就役したばかりだが、故障続きで開店休業中)。すべて原子力推進で満載排水量10万トン超、全長333m(東京タワーの高さと同じ!)、乗員(航空要員も含む)5500名超という巨体を誇る。F/A-18系戦闘攻撃機50機弱を含め70機以上の艦上機を載せ、その攻撃力は中クラスの独立国の空軍を凌ぐ。

米海軍は通常、空母1隻を核に長距離対空ミサイル(SM‐3)と高性能対空レーダー(フェーズドアレイ・レーダー)を装備した“超ハイテク”で超高価な「イージス艦」4隻前後を含む10隻程度の艦船と艦隊(空母打撃群)を編成、これをローテーションさせることで常に3~4個を臨戦態勢の状態で、“7つの海”のどこかに配置、地球の裏側へも強力な兵力を素早く投入できるように努める。

まさに“世界最強のアメリカ軍”の真骨頂で、これだけは対立する中ロは逆立ちしてもマネできない。換言すれば中ロにとって目の敵そのもので、空母の存在意義を失わせれば、アメリカの世界戦略に相当なダメージを与えられる、と両国が考えたとして何ら不思議ではない。

実際、冷戦時代にアメリカと敵対した旧ソ連は核ミサイル・核魚雷攻撃や、超音速爆撃機「バックファイア」多数による対艦ミサイルでの飽和攻撃(防御の処理能力を超える量の攻撃)など、さまざまな米空母撃沈策を検討した。しかし、全面核戦争に直結しかねず、また高コストで味方の犠牲も甚大なことから、平時における米空母の牽制手段としてはあまり効果がなかった。

米空母艦隊の防備は鉄壁で、とりわけ対空防御は分厚く、まず艦上機のE-2D早期警戒機(皿状のアンテナを背負う)が“空飛ぶアンテナ”よろしく交代で常時艦隊上空に待機、約600km先の飛行物体に目を光らせ、敵機を探知したら空母に搭載の戦闘攻撃機が発進、同時に空母を護衛するイージス艦も高性能対空レーダーで敵機や対艦ミサイルを探索し、探知したら長距離対空ミサイルで迎撃――といった具合に難攻不落のバリアを張る。

そこでこのバリアを突破するために編み出されたのが「極超音速“長距離”巡航対艦ミサイル」である。

マッハ10を超える怪物で米海軍の接近を阻止し南シナ海の“自分の湖”化を図る中国

これまでの対艦ミサイルの飛翔速度は音速(時速1200km)以下が大半、高速でもせいぜいマッハ2程度で、防御側はこれに対応すれば事足りた。だが2000年代に入ると中ロはマッハ2超の対艦ミサイル開発を加速し、ついにマッハ5(時速6000km)以上の“極超音速”で、しかも飛翔距離が1000km以上という怪物まで出現。

これだけ速いと既存の対空ミサイルではスピードが追いつかず撃墜は困難。しかも米空母のレーダー探知範囲の外から放たれた対艦ミサイルが極超音速の一定速度で飛びながら、相手に飛翔コースを先読みされないように進路や高度をジグザグに変えながら突進していく――米空母にとっては悪夢だろう。

具体的には、ロシアの「ツィルコン」(3M22:マッハ8~9、飛翔距離500~1000km、2012年配備)、「ブラモスⅡ」(インドとの共同開発中、マッハ7、同450~600km)、中国の「YJ-12(鷹撃12)」(マッハ3、同500km。2009年配備)、「YJ-18(鷹撃18)」(マッハ3、同540km、2015年配備)などが「極超音速“長距離”巡航対艦ミサイル」の代表格だ。

加えて中国は、前代未聞ともいうべき「対艦弾道ミサイル(ASBM)」も開発。中距離弾道ミサイル(IRBM)を改良、「空母キラー」と渾名される注目の兵器で、現在のところ「DF-21D」(東風21D。マッハ10、射程距離1500km)、DF-26(東風26、マッハ10、同4000km)が確認されている。これらは前述の「極超音速巡航対艦ミサイル」とは異なり、飛翔コースは通常の弾道ミサイルと同様、放物線を描きながら大気圏外に一端出た後、目標に向かって頭上から落下するとうシロモノ。

中国はこの種の“空母ハンター”兵器の開発に熱心。一帯一路の実現とアジア・太平洋での覇権獲得を目指し、海軍力の拡充に血道を挙げており、昨今の南シナ海・南沙諸島での強引な領有権主張や尖閣諸島を含む東シナ海での軍事プレゼンス(存在誇示)の強化もその一環だが、こうした中国海軍の膨張戦略に立ち塞がるのが米海軍であり、特に横須賀を本拠地のひとつとする第7艦隊所属の空母艦隊である。

このため中国は自国の沿岸や南シナ海、東シナ海に米海軍が近づくのを諦めさせる「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)戦略を実行中といわれ、その主軸を担うのが「極超音速巡航対艦ミサイル」という立て付けである。

「極超音速巡航対艦ミサイル」は当たらない?

こうした状況に対し、米海軍関係者からは「アメリカの世界戦略の尖兵・空母をいつまでも危険に晒しておいていいのか」といった声が噴出、さらに軍事専門家からは「艦載機も含め1隻2兆円以上の巨大な兵器システムが1発数億円程度のミサイルでスクラップになるのでは割に合わない。『空母の時代』の終焉では」といった手厳しい意見も出始めている。

だがこれらの声の裏には異なる意味合いがあり、「対外的な軍事的脅威を大袈裟に訴え、基本的に『強いアメリカ』を支持する大半の米国民=保守層を味方につけ、昨今財布の紐が締まりがちな予算の大幅獲得を目論むという、いわば常套手段では」ともいわれている。

というのも、これら「極超音速巡航対艦ミサイル」を発射するにあたり、そもそも何百kmも沖合の、広大な太平洋上に浮かぶ米空母をどうやって発見するのか、という根本的な疑問がわくからだ。

「偵察衛星でキャッチできる」と考えがちだが、これはハリウッド映画の観過ぎで、目標の遥か上空にじっと留まってリアルタイムで監視を続ける偵察衛星は現在存在せず、実際は数時間に1度、数分程度上空を通過するのが限界だ。

昨今急速に進化するドローンを使えばいいのでは、との意見もあるが、やはり広大な海域での探索活動は難しく、米空母艦隊のレーダー網がキャッチすれば直ちに撃墜される憂き目にあう。

「ステルス・ドローンを多数空に放てばいいのでは」との指摘もあるが、仮に米空母を探し当てたとして、その情報を本部に送信するには「無線」を使わなければならず、この時即座に発信元をキャッチされて即撃墜となるだけ。

しかも米空母は35ノット(時速約65km)で航行しているので、仮にマッハ5のミサイルが1000km先から発射されたとしても、米空母は元の位置から10kmも離れてしまう。米空母が洋上でじっと動かなければ命中させるのも可能だろうが、移動目標を的確に撃破できるかどうか甚だ疑問だ。

結局のところ、中ロにとって大いなる“ハッタリ”だった「極超音速巡航対艦ミサイル」は、皮肉にも予算獲得目指す米海軍にとっては、文字通りの“渡りに船”だったという「オチ」の笑い話に過ぎないのかも。