緊宣延長へ モラル頼りから法的強制力を持つための議論を

2020.05.01

政治

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新型コロナウイルス対策で自治体の休業要請に応じない施設への対応などが課題となっている。海外では厳格な取り締まりが成功している国がある一方、日本の法律では要請を無視されても有効な対策をとれないためだ。知事などからは休業要請に応じない事業者への罰則規定を設けるよう求める声があがるが、過度な私権制限は権力の乱用につながる危険性もはらむ。

緊宣は1カ月ほど延長が濃厚、休業要請も強化の方向へ

安倍晋三首相は4月7日、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言を発令。16日には対象地域を全国に拡大するとともに、当初の7道府県に北海道、茨城、石川、岐阜、愛知、京都を加えた13都道府県を重点的に感染拡大防止の取り組みを進めていく必要がある「特定警戒都道府県」と位置付けた。期間はいずれも5月6日までだが、「医療現場は依然厳しい状況であり、当面、国民の協力が必要」との専門家会議の提言を受けて1カ月程度の延長が濃厚となっている。

特定警戒都道府県を中心に、各知事は人の集まる施設などへの休業要請に乗り出した。対象となる施設は主に接客を伴う飲食店やライブハウス、パチンコ店、スポーツクラブ、商業施設など。一般の飲食店にも営業時間を午後8時までに短縮し、お酒の提供を午後7時までとするよう求めている。多くの自治体は休業要請に応じた事業者に協力金を支払うとしている。

政府は罰則規定の導入を否定せず

対象となる施設の多くは休業を受け入れ、全国の繁華街や観光地は閑散としている。しかし、例外なのが一部のパチンコ店だ。休業要請を無視して一部の店舗が営業し、県内外から人が集まっている。

特措法では休業要請に従わない場合は「指示」できると規定しており、兵庫県では5月1日、休業要請に応じず営業を続けていた神戸市のパチンコ店3店舗に休業を指示。神奈川県でも同日、パチンコ店1店舗に休業指示を出した。ただ、要請から指示に変わったとしても、従わない場合の罰則規定はない。施設側は引き続き無視して営業を続けることができ、アナウンス効果でさらに人が集まり感染拡大の温床となりかねない。そこで浮上しているのが特措法を改正して罰則規定を設ける案だ。

西村康稔経済再生担当相は4 月27日の記者会見で「指示に従わない施設が多数発生する場合、罰則を伴うより強制力のある仕組みの導入、法整備について検討を行わざるを得なくなる」と指摘。特措法の改正による罰則規定の導入に前向きな姿勢を示した。安倍首相も29日の衆院予算委員会で「今の対応や法制で十分に収束が見込まれないのであれば、当然新たな対応も考えなければならない」と否定しなかった。

法的強制力のない日本の対策は海外に比べて生ぬるい

新型コロナウイルス対策をめぐっては、感染の判明した人が施設への入所や自宅待機の要請に協力しないケースも問題となっている。愛知県は28日、新型コロナウイルスの無症状・軽症感染者の宿泊施設から、陰性と確認されていない男性が施設への不満を訴えて自主的に退所したと発表。同県の大村秀章知事は「法律上、感染者に移動制限をかけられず、自粛の要請しかできない」と不満を漏らした。また、岐阜市は29日、市内の感染者数人が採算にわたる入院要請を拒否していることを明らかにした。

日本では私権の制限を最小限にとどめ、自主的な行動に頼るのが基本路線。「日本人は真面目なので強硬手段を取らなくても対策が行き届いている」という評価がある一方、海外に比べて対策が生ぬるいとの批判もある。

例えばニュージーランドは国内での感染が確認される前から中国本土からの外国人入国を拒否。初めての死者が確認される以前の3月26日には全国的なロックダウン(都市封鎖)を実施し、飲食店の持ち帰りサービスも禁止、医療従事者以外は交通機関にも乗ることができないなど徹底的な封じ込め策を行った。結果的に感染の拡大を抑え込めたとして、ジャシンダ・アーダーン首相は27日に記者会見し、警戒レベルを下げると発表するとともに「戦いに勝利した」と宣言した。

早期に感染が広がった韓国では4月からすべての入国者に14日間の自主隔離を義務付けていたが、違反が相次いだため、すぐに罰則を強化。1年以下の懲役または約1000万円の罰金刑に処すこととした。徹底的にPCR検査を行ったこともあり、今では感染者数と死者数ともに日本を下回る。対応が評価されて文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率も急上昇。4月15日に投開票された総選挙では与党が歴史的な勝利を収めた。

例によって立ちはだかる“憲法の壁”

ただ、日本でも同じように厳格な対策ができるかというと難しい面がある。“憲法の壁”があるからだ。日本国憲法では先の大戦の反省を踏まえて国民の基本的人権の侵害を強く禁じており、大規模災害時に内閣の権限を強め、個人の権利を制限できる「緊急事態条項」もない。そのため、法律によって罰則規定も含めた強い対応がしにくいという指摘がある。

2011年の東日本大震災を契機に緊急事態条項を設けるべきだとの意見は出ているが、国民の賛否は分かれている。共同通信社が28日にまとめた世論調査によると、憲法改正の必要性については賛成61%、反対36%となったが、緊急事態条項の新設については賛成51%、反対47%と拮抗した。感染拡大が広がっているタイミングだけに賛成が伸びた側面があり、平時に戻れば反対が上回る可能性もある。

今まで通り国民のモラルに頼るか、憲法や法律によって政府の強い権限によって封じ込めるか。日本は岐路に立たされている。