コロナ禍で就職活動も様変わり オンラインのメリット・デメリット

2020.5.20

社会

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コロナ禍で就職活動も様変わり オンラインのメリット・デメリット

新型コロナウイルスの感染拡大は、就職活動をしている大学生にも大きな影響を与えている。2021年卒の採用活動においては、接触を避けるために面接や説明会はZoomなどを用いたオンラインにするなど、例年とは異なる形式で行われている。そのなかで、従来の就職活動における問題点が改めて浮き彫りになった側面もある。

オンライン面接で就活格差が解決?

就職活動は情報収集が肝心だが、新型コロナウイルスの感染拡大下にあってOB・OG訪問はできず、企業に足を運ぶ機会もないため、企業理解が例年のように進められないのが現状だ。企業側も面接をオンラインにするなどして対応しているが、対面ではないことによるコミュニケーション不足が懸念されている。

多くの学生にとって不都合な状況だが、むしろオンライン面接で多くのメリットを享受した学生がいる。地方在住の学生だ。

これまで地方の学生が都心の企業を受ける場合、多額の交通費がかかる上、移動に多くの時間がとられるという多大なコストを払わなければならなかった。特にインターンの参加が重視される近年の就活現場では、大学3年生の夏から頻繁に企業に足を運ばなければならない。

オンライン面接の導入により、経済的・時間的負担から解放された彼らはこれまで以上に多くの企業の選考を受けられるようになった。新型コロナウイルス感染拡大によって、従来から指摘されていた“地方学生と都心学生の就活格差”に改めて目が向けられたかたちだ。

企業側には、これまで志望してこなかった地方の人材にアクセスできるメリットもある。オンライン面接やウェブ説明会が一般的になれば、就活格差があるために地方大学に学生が集まらなかった問題も解決されるかもしれない。すべての選考過程をオンラインで行うにはまだコミュニケーション面で課題は多いが、日本の地方活性化のためにも、これを機に企業全体で取り組んでいく必要があるだろう。

エントリーシートが提出できない!郵送受付の悲劇

「せっかく書いたエントリーシート(ES)が……!」、4月初旬の就職活動掲示板には悲痛な声が並んだ。ある大手出版社がESを郵送受付で募集していたのだが、多くの学生がコロナウイルスの感染拡大による郵便局の営業時間短縮を知らず、締切日の消印を貰い損ねてしまったのだ。

翌日、出版社の公式Twitterでは「なんらかの救済措置を執ることが出来ないか真剣に検討いたしましたが、公平性の観点から締切当日の消印のないものは受け付けない事になりました」とアナウンスした。

この悲劇の背景には、現在の大学生が郵便を使う機会が少なく、ESもウェブ上で出すことが多くなっている事情がある。

2010年代を通して、就活におけるESはウェブ上での提出が主流になった。「手書きの文字がみたい」という会社は、手書きのESをアップロードさせるという方式をとっているところもある。

そんななかで、学生は郵送受付でのES提出には不慣れだ。「学生に社会経験を積ませる」「あえて出しにくいESを課して会社の志望度を見る」という意義もあるのかもしれないが、それでESの提出ができなかったら元も子もない。これを気に、全面的にウェブ提出に切り替わってくれた方が、助かる学生は多いだろう。

ウェブテストを自宅受験型に切り替えも不正が横行

就活における能力テストもまた同様に、新型コロナウイルスの感染拡大で様変わりした。現在、大半の企業は採用過程で学生に能力テストを課している。主な形式は「会場で受けるSPIテストセンター」「自宅で受験できるウェブテスト」「企業独自の筆記試験」などだ。

新型コロナウイルスの感染拡大で、会場に出向いて試験を受けることが難しくなったため、多くの企業が「自宅で受験できるウェブテスト」を導入した。しかし、この「自宅受験型のウェブテスト」には問題がある。自宅で好きな時間に受験できるため、回答集がネット上に出回っていたり、代行受験が横行していたりと、不正が簡単にできてしまうのだ。就活のウェブテスト代行受験の専門業者まで現れる始末である。

就職活動は限られた枠を奪い合ういす取りゲームだ。そのため、カンニング行為をする学生がいれば、ほかの学生がそれだけ不利になってしまう。自宅受験型のウェブテストを導入する際は、企業はそのリスクを十分に考慮した上で判断する必要があるし、不正防止の対策が急がれる。

新型コロナウイルスの感染拡大は新卒学生の就職活動にも大きな影響をもたらした。変化という意味では、機会の拡大というメリットもあれば、選考の難度が上がるデメリットもある。しかし、今はまだ過渡期であり十分な試行錯誤が必要だ。単なる一過性の事態ととらえず、今回改めて浮き彫りになった就職活動の問題点に、企業、大学、学生が、向き合っていく必要があるだろう。