「宇宙ビジネスなら世界に勝てる」ホリエモンがロケットを飛ばす理由

2020.06.19

技術・科学

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※2020年2月、ビューティ・ビジネス・コンプライアンス研究会より 写真:片桐 圭

現在、ホリエモンこと堀江貴文氏は実業家だけでなく、著作家、投資家、タレント、YouTuberとして広く活動している。そんな彼が最も大きな情熱を傾けているのが「ロケット」だ。既存の技術で安価にロケットを打ち上げる宇宙ビジネスの創出にチャレンジしている。宇宙開発は国がやるものという定説のなか、アメリカやロシアなどの大国が注力してきた宇宙開発が、民間主導によって今後、日本の基幹産業になると唱えるその理由とは?

 実業家・タレント

堀江貴文 ほりえ たかふみ

1972年10月29日、福岡県八女市生まれ。東京大学中退。元株式会社ライブドア代表取締役CEO、インターステラテクノロジズ株式会社(旧SNS株式会社)ファウンダー。1996年、東京大学在学中に後のライブドアとなる会社を起業し、2000年、東証マザーズ上場。インターネット関連事業で躍進する一方、大阪近鉄バファローズ買収、ニッポン放送買収騒動で注目を浴びる。2006年1月に証券取引法違反で逮捕され、懲役2年6ヵ月の実刑判決を受ける。2013年11月10日刑期満了。ロケット開発からアプリや飲食店のプロデュース、有料メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」の配信、堀江貴文イノベーション大学校(HIU)の運営のほか、YouTuberとしても活躍。『なぜ、僕は宇宙に行くのか 空想を現実化する僕らの方法』(SBクリエイティブ)ほか著書多数。

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人類はなぜ気軽に宇宙に行けないのか?

宇宙ビジネスについて語る前に、僕と宇宙の馴れ初めからお話ししたいと思います。

1972年生まれの僕は、「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」、「スター・ウォーズ」を見て育った世代。SFの描く世界にワクワク胸躍らせた一人です。IT事業がうまくいって、会社を上場して何十億という資金を自由に動かせるようになったとき、たまたまソ連が崩壊し、財政難のロシアは宇宙ステーション「ミール」を運用できなくなり売却すると発表しました。

ちょうど手元に資金があったから「買えるかも!」と思ったのですが、買っても運用できないからあきらめました。結局ミールは買い手が付かず、海に捨てられました。

そのときに、人類はなぜ気軽に宇宙に行けないのか?と考えました。人類が宇宙を目指してから現在まで、たった500人くらいしか宇宙に行っていません。SFで夢見た世界は30年後の今、実現しているはずだった。僕の中では。

1969年に人類が月に降り立ったのは周知の事実。ケネディ米大統領が、1961年の演説で「10年以内にアメリカは人間を月に送り、無事帰還させる」と宣言してアポロ計画はスタートし、約束通り1960年代最後の年にアポロ11号が月面着陸に成功しました。しかし、6回の有人月面着陸に成功したアポロ計画は、1972年、中断を余儀なくされます。ベトナム戦争が始まり、アメリカが財政難に陥ったからです。

アポロ計画の成功によって、宇宙競争でライバルのソ連に勝ったのだから、もはや大金をかけてアポロ計画を続ける意味はない、という世論が形成されました。アポロ計画では月へ探査船を打ち上げる様子をテレビで流しても、視聴率が取れなくなりました。アポロ計画はアメリカ国民の関心事ではなくなったのです。

中途半端な公共事業「スペースシャトル計画」

アポロ計画は中断されました。しかし、アメリカの宇宙開発は続きました。宇宙への夢を実現するためでも、当時のライバルであったソ連に勝つためでもありません。“公共事業”だったからです。アポロ計画は10年でアメリカの巨大な公共事業に育っており、潰すに潰せなかったのです。

アポロ計画が頓挫したとき、アメリカの宇宙開発には、関連会社も含めると40万人近くが従事していたといわれています。特に、宇宙センターがあるテキサス州やフロリダ州では、多くの雇用が生み出され、巨大産業になっていたため大きな利権が発生し、関連する州選出の議員が、政府に働きかけました。

その結果生まれたのが「スペースシャトル計画」です。スペースシャトル計画も公共事業なのです。公共事業だから計画自体が中途半端になってしまい、うまくいきませんでした。

例えば、アポロ計画ではカプセル形状の宇宙船を採用していますが、スペースシャトル計画では、翼が付いた飛行機のような形状になりました。「飛行機のように宇宙に飛んでいって地球に戻ってきたらすごい」という妄想で翼が付いたわけで、宇宙には空気が無いから翼はいりません。むしろ邪魔。人気のあるものを作らないとアポロ計画の時みたいに計画が潰れてしまうからと、人目を引く翼が付きました。

妄想ベースで設計されたスペースシャトルはめちゃくちゃ重くて、普通のロケットでは宇宙まで運べませんでした。そこで、固体ロケットブースターを2本付け、さらに燃料が足りないので外部燃料タンクを装着しました。

中途半端な代物を作ってしまったがために、スペースシャトルは宇宙開発史上、最も犠牲者を出した計画となってしまいました。1986年のチャレンジャー号の爆発で7人、2003年のコロンビア号空中分解で7人、計14人が命を落としています。チャレンジャー号は、打ち上げるときに固体ロケットブースターの部品が壊れて爆発。コロンビア号は、地球に帰還する際に翼の部分を覆っているセラミックのタイルに亀裂が入り、高温のプラズマが発生して空中分解しました。

結局、スペースシャトル計画も中断を余儀なくされました。コスト削減を謳っていましたが、むしろ高コストでした。公共事業にありがちな展開です。

アメリカはまた公共事業で有人宇宙船「オリオン」をつくっています。

スペースX、ロケットラボ…宇宙ベンチャーの登場

誤解を恐れずに言うならば、宇宙開発が公共事業だったから人類は宇宙計画を実らせることができなかったのです。ならば、公共事業ではなく、民間事業にすればうまくやれるのではないでしょうか。ロケットといえどもただの工業製品。市場原理を適応した民間のやり方なら、コストを抑えてよりスピーディーに開発が進むはずです。

宇宙開発は高度な技術を要するから民間では無理だ。そんな声が聞こえてくるかもしれませんが、技術的な観点からいえば、民間企業でもロケットは十分打ち上げられます。

世界で最初にロケットができたのは、1940年代のドイツ。ナチスドイツが開発した有名なV2ロケット(ミサイル)です。このV2ロケットの開発者が戦後、アメリカに亡命してアポロ計画の責任者になりました。つまり、ロケットを打ち上げる技術は、80年ぐらい前に確立している古い技術。機械式の計算機で軌道計算をしていたロケットを、IT技術が進化した現代人が飛ばせないわけがありません。

ロケット技術は、昔は超最先端のテクノロジーでめちゃくちゃ資金を必要としましたが、素材技術や電子技術が飛躍的に進歩したおかげで昔よりもはるかに安くロケットを飛ばせます。例えば今は、ラズベリーパイ(Raspberry Pi)と呼ばれる、小型で高性能のコンピュータが数万円程度で安く手に入ります。

ロケットを安くつくれば、安く宇宙に行ける。安くなれば、人類は宇宙へ気軽に行ける。民間主導で宇宙開発を進めれば、すでに人類は気軽に宇宙へ行っていたかもしれません。

とはいえ、ロケットの開発・製造は、プロダクトの完成まで長い期間を要します。そのため、多額の予算が必要なのも事実です。そこで政府調達の資金を宇宙ビジネスに投資すれば、宇宙開発は加速し「宇宙ビジネス」という新しい産業を生み出すことができます。

日本の政府はやたらとITへの投資をしていますが、ITなんてもはや政府が資金を投じなくても民間の力で勝手に成長します。それよりも、まだビジネスの種でしかない宇宙開発が芽吹くように、日本政府も宇宙ビジネスへの投資を増やすべきです。

アメリカにはすでに、宇宙ベンチャーに対して政府調達の資金を投じる枠組みを作って成功しています。スペースXとRocket Lab(ロケットラボ)というベンチャーが登場し、政府調達資金でロケットと宇宙船を開発、今では国際宇宙ステーション(ISS)への無人での物資補給を請け負っています。また、2020年には初の有人飛行も計画しています。

日本はロケット打ち上げに最適な国

日本が宇宙ビジネスへ積極的に参入した方がいいと僕は考えています。だからこそ、自らロケットを開発して打ち上げています。日本の宇宙ビジネスへの参入をすすめるのには、2つの大きな理由があります。

1つ目は、地理的条件です。日本ほどロケットの打ち上げに適した国は、世界中を見回してもありません。

ロケットを打ち上げる方向は、東か南が適しています。地球の自転の関係で西に向かっては打ち上げません。余分な燃料を消費するからです。唯一、西に向かってロケットを打ち上げている国があります。イスラエルです。東も南も敵国であるため、西の地中海に向かって打ち上げるしかないからです。

一方、毎回東に打ち上げて隣国に怒られている国があります。北朝鮮です。南は韓国、北はロシアと中国と国境を接する北朝鮮は、東以外にロケットを打ち上げることができません。仕方なく北朝鮮は、毎回怒られながら日本に向けてロケットを打っています。だから、北朝鮮のミサイルは絶対に日本に落ちません。なぜなら、ミスをして日本の領土に落としたら、二度とロケット開発ができないからです。

実際に北朝鮮のミサイルは日本にすごく配慮して打ち上げられています。東に打つときは必ず津軽海峡の上を飛ぶようにコース設定しています。奥尻島沖にパーツが落ちるのは、わざとそこに落としているから。ほかの場所に落ちたらもっと大問題に発展します。

そんなわけで、東も南も太平洋に面している日本は、ロケットを打ち上げるには最適な国なのです。ヨーロッパは南米にあるフランス領から打ち上げ、アメリカも東に打つときはフロリダのケネディ宇宙センター、南に打つ時はカリフォルニアのヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げ、北に打つときはアラスカからです。地理的に離れていてお世辞にも便利とはいえません。日本は北海道から東にも南にもロケットを打ち上げることができます。

日本のサプライチェーンを活用する「宇宙ビジネス」

僕が日本に宇宙ビジネス参入を進める2つ目の理由は、サプライチェーンです。日本のサプライチェーンは「自動車産業」を中心に組み立てられています。ロケットの開発に欠かせない機械部品、特にエンジンに関する技術を日本のメーカーは持っています。

国防上の理由で多くの国でロケットは輸出できません。軍事転用されてしまう恐れがあるからです。それだけでなく、ロケットの部品の多くは武器輸出規制に抵触します。アメリカにはITAR(アイター、武器国際取引に関する規則)と呼ばれる武器輸出管理規制がありますが、ロケットの部品もITARの規制下にある製品が多く、輸入するのが困難です。

日本とアメリカは親密な同盟国だから、アメリカの技術を日本も使えると勘違いしがちですが、ぜんぜんそんなことなくて、アメリカのロケット部品を使うのはすごく大変です。けれども、僕たちが開発しているロケットはITARフリー、つまりアメリカの技術を使っていません。ロケットの製造は日本国内のサプライチェーンで賄えます。ロケットを作る技術はすでに国内にあります。

今の日本を広く見回したとき、成長産業をつくる上で、日本が世界に勝てる分野はどれだけあるでしょうか? ITは絶対に無理ですよね。アメリカのGAFAや中国のBATに勝てるわけがありません。でも、宇宙ビジネスでなら勝てます。

しかも、今の日本を支えている自動車産業は、そう遠くない未来に崩壊します。EV(電気自動車)と自動運転技術が普及すると、自動車は機械製品ではなく電子製品となり、エンジンをはじめとした工学の技術は必要なくなります。それ以上に、自動運転が広がれば自動車を所有する必要がなくなり、自動車の台数が激減します。

ロケットの打ち上げには、工学の技術が必要です。日本を支えてきたモノづくりの技術は、宇宙ビジネスでこそ生かされる時代が到来します。自動車産業で培った日本の技術力を、ロケットの打ち上げに活用することが日本の未来をつくると僕は確信しています。だから、僕はロケットを飛ばしています。