【石油・石炭・人口】ポストコロナは景色激変? いま再確認すべき世界ランキング

2020.06.10

社会

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イラスト:山田吉彦

新型コロナウイルス後、いわゆる「ポストコロナ」の世界は間違いなく激変する。だからこそ現状を正確に把握し、次の時代に備えるべき。そこで、世界各国の経済や国力を占う基礎となる「原油」「石炭」の生産量、「人口」のランキングにスポットを当て、世の中の多くの人が抱く“20年ほど昔のカビの生えたデータ”をアップデートしたい。

【原油】シェールオイルでアメリカが45年ぶりに産油国世界一返り咲き

サウジアラビアを筆頭に、イラン、クウェート、イラクなど中東諸国とロシア、そして南米の一大産油国ベネズエラが上位――。世の中の多くの人はきっと年間原油生産量の世界ランキングをこう考えるハズ。しかしこれは“20世紀的感覚”で、勢力図は今や激変、2018年にはアメリカが首位に返り咲いた。

第1次石油ショックが起きた1973年以来45年ぶりの快挙で、久しく1位、2位が指定席だったサウジアラビア、ロシアを抜き去った格好だ。理由は北米大陸の地中に広がる油分を含むシェール(油母頁岩=ゆぼけつがん)層から原油を効率よく採取できる技術、フラクチャリング(水圧破砕法)が2000年代に入り本格稼働したため。世にいう「シェール革命」で、産出された原油/天然ガスは「シェールオイル/ガス」と呼ばれる。

原油年間生産量トップ20(2018年、万t)※BP調べ
  1. アメリカ:6億6900
  2. サウジアラビア:5億7800
  3. ロシア:5億6300
  4. カナダ:2億5500
  5. イラク:2億2600
  6. イラン:2億2000
  7. 中国:1億8900
  8. UAE:1億7800
  9. クウェート:1億4700
  10. ブラジル:1億4000
  11. メキシコ:1億200
  12. ナイジェリア:9800
  13. カザフスタン:9100
  14. ノルウェー:8300
  15. カタール:7800
  16. ベネズエラ:7700
  17. アンゴラ:7500
  18. アルジェリア:6500
  19. イギリス:5100
  20. オマーン:4800

――世界合計:44億7400

中国が7位なのも興味深い。「産油国」というイメージが薄いが、実は“大産油国”イランと産出量はさほど変わらない。(もっともイランは欧米の経済制裁で生産量を抑えざるを得ない)。1990年代後半以降に発見された渤海湾の海底油田と西峰(シーフェン)油田(内モンゴル自治区)の貢献が大きい。10位のブラジルも注目すべきで、20年前はトップ10外。1980年代後半から同国南部の深海底に横たわる大規模油田を開発、国営企業ペトロブラスはハードルの極めて高い深海での石油掘削技術を着実に育んだ賜物だ。

13位のカザフスタンも近年ランクをアップ、内陸国のため原油輸出の大半を隣国ロシアのパイプラインに依存するが、ソ連崩壊直後の経済的混乱で保守点検もままならず1990年代は輸送量を削減される始末。2000年代にロシア経済が回復し輸送力も復旧・強化され、生産量も増加に転じた。

このほか、ランク外24位のインドネシア(約4000万t)は、世界有数の石油輸出国としてかつては日本も大量に輸入していたが、今やその面影はない。設備投資の遅れや油田の枯渇などが災いし2000年代から産出量はジリ貧に。一方、同国の経済成長も相まって国内の石油需要が急増、結局“石油純輸入国”へと転落し、2008年にはOPEC(石油輸出国機構)からも脱退している。

33位のベトナム(約1300万t)、36位の赤道ギニア(約900万t)は、1990年代以降の海底油田開発が功を奏し“産油国クラブ”の新顔として存在感を高めている。前者は南シナ海の海底油田開発によるが、中国が領有権を主張する大陸棚とも重なり、今後国際紛争の火種ともなりかねない。また後者の場合、1997年の経済成長率が対前年度比150%(!)という異常さで、まさに“石油バブル”に酔いしれた。

【石炭】全世界の産出量の約半分を中国1カ国で占める

石炭は、鉄鋼を生み出す製鉄や発電などの産業の基盤で大量に使われるため、その動向はある意味、原油以上にその国の経済状況を反映する。驚くべきは過去約30年間の生産量(=消費量)の爆発的な急増で、1990年には約47億7100万tだった生産量が2018年には80億1300万tと約2倍に膨張。原油が同時期31億5800万t→44億7400万tと5割増し弱程度なのを考えると、やはり尋常ではない。

石炭年間生産量(2018年、万t)※BP調べ
  1. 中国:36億8300
  2. インド:7億6500
  3. アメリカ:6億8500
  4. インドネシア:5億4900
  5. オーストラリア:4億8600
  6. ロシア:4億4100
  7. 南アフリカ:2億5300
  8. ドイツ:1億6900
  9. ポーランド:1億2200
  10. カザフスタン:1億1800

――世界合計:80億1300

増加分の大半は“世界の工場”として急成長する中国によるもので、同国の石炭生産量も1990年10億8000万t→2018年36億8800万tと3.5倍も増加。大半が国内向けだが、それでも足りずにオーストラリアなどから1億4700万tも輸入するほどで、まさに“エネルギーの爆喰い”そのもの。全世界で産出される石炭のほぼ半分が中国で消費される計算となる。

このほか、インドネシアが注目株。1980年代まで石炭をほとんど産出していなかったが、中国の需要拡大を追い風に炭田開発を本格化。1990年約1100万t→2018年約5億4000万tと50倍以上に急拡大、もちろんその多くが輸出向け。2017年にはこれまで4位だった石炭の一大輸出国・オーストラリアを抜き去ったほどで、インドネシアは今や「産油国」というよりも「産炭国」と言った方が正鵠を射ている。

ランク外の注目は12位のコロンビア(約9400万t)で1980年代後半から炭田開発を強化。もちろん南米一の産出量で大半を輸出に回す。ちなみに同国は原油も産出、世界22位(4600万t)の堂々たる「産油国」でもある。コーヒー豆生産量もブラジル、ベトナムに次ぐ世界3位を誇る「コーヒー大国」だが、近年は「石炭輸出国」としての存在感が増している。

【人口】2027年にインドが中国を抜き世界トップに?

「人口大国」の双璧といえば1位の中国と2位のインドで、ここ数十年揺るぎないが、国連によれば中国の人口増加は頭打ちで、2027年にはインドが首位に躍り出ることが確実らしい。ちなみに人類の有史以降、中国は常に世界最大の人口を抱えて来ており、事実ならば人類史上初の“トップ交代”となる。

人口(2018年、万人)※国連調べ
  1. 中国:14億2800
  2. インド:13億5300
  3. アメリカ:3億2700
  4. インドネシア:2億6800
  5. パキスタン:2億1200
  6. ブラジル:2億900
  7. ナイジェリア:1億9600
  8. バングラデシュ:1億6100
  9. ロシア:1億4600
  10. 日本:1億2700
  11. メキシコ:1億2600
  12. エチオピア:1億900
  13. フィリピン:1億700
  14. エジプト:9800
  15. ベトナム:9600
  16. コンゴ民主共和国:8400
  17. ドイツ:8300
  18. トルコ:8200
  19. イラン:8200
  20. タイ:6900

――世界合計:76億3100

少子高齢化でトップ10からの脱落寸前なのが、悲しいかな日本で、ここ数年の間に、人口増著しいメキシコ、エチオピア、フィリピン、エジプト、ベトナムに追い抜かされるのが確実。エチオピアやフィリピン、エジプト、ベトナムに関しては、「5000~6000万人」という認識だった方も少なくないはずだが、自然増加率を見ると、エチオピア2.46、フィリピン1.65、エジプト1.98、ベトナム1.07%と高く、一方日本はマイナス0.32%とお寒い状況だ。

以上、「原油」「石炭」「人口」のランキングを俯瞰したが、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な経済の落ち込みで、原油価格は4月後半に一時10ドル/バレル台にまで下落(6/10現在は38ドル/バレルまで回復)、せっかく原油生産首位奪還を果たしたアメリカだが、需要激減と価格下落がそもそも高コストで経営基盤がぜい弱な“シェールオイル・ベンチャー”を直撃、経営破綻や大減産に追い込まれる事業者も続出で、2020年は首位からの転落も危ぶまれている。石炭需要にも急ブレーキが掛けられること必至で、ポストコロナは今後、人口動態も含め“大番狂わせ”が起こるかもしれない。