「カルピスウォーター」を飲み終えるとパッケージのイラストが完成する……! 7月14日に発売された「カルピスウォーター」の夏季限定デザインパッケージがSNSで話題です。いつかのあの日を思い出す青春感たっぷりのイラストは、2019年の「カルピス」100周年スペシャルパッケージでも好評を博したイラストレーターかとうれいさんによるもの。例年にも増して鬱々とする今夏において、爽やかな気分を提供しています。かとうれいさんに「カルピス」とのコラボについて聞きました。
イラストは100周年パッケージも手掛けたかとうれい
「『カルピス』の100周年スペシャルパッケージのときも反響は多かったですが、今回はより大きな反響がありました」
そう語るのはイラストレーターのかとうれいさん。2015年に初画集『girl friend』(宝島社)を発表後、広告や挿絵、CDジャケットなど多岐にわたって活躍。作家・武田綾乃さんの『青い春を数えて』(講談社)の書影を担当したことでも知られています。
女の子の描写が秀逸で、一枚のイラストにキュートでどこかはかない青春のシーンが描かれます。「青色」の使い方に特徴があり、濃淡織り交ぜた色使いは、登場人物の淡く繊細な心の機微を表すかのようです。
「『青色』はいろいろな面を持っている色だと思います。『カルピス』のトレードマークの水玉模様に使われている青は爽やかですし、ほかにも涼しげな印象であったり、寂しい印象だったり、そういった多面性が好きです。自分の作品でも爽やかさを表すときに一番よく使いますし、それが『カルピス』さんのイメージとマッチしたのかなと思います」(かとうれいさん、以下同)
SNSで話題になったのは、「カルピスウォーター」の夏季限定デザインパッケージ。キレイなイラストもさることながら、ペットボトルの“透かし”を利用した仕掛けが「おしゃれ」「デザインが面白い」「エモい」と好感。中には「カルピス」のイラストを気に入ってかとうさんの作品集を買ったという人や、甘いものが苦手だけど思わず買ったという人もいるほど。
「バズるにつれて自分のところにも反響が届くようになりました。『カルピスウォーター』と一緒に作品も拡散されるのはとてもうれしいことです」
あこがれの放課後のシーンを再現
今回の夏季限定デザインパッケージは、アサヒ飲料が2020年4月から展開している「放課後『カルピス』」プロジェクトの一環として「きみの放課後が動き出す。」をテーマにした高校生の放課後のシーンが、イラストレーターのかとうさん(「カルピスウォーター」)と田中寛崇さん(「カルピスソーダ」)によって描かれた。
かとうさんが描いたのは、海辺の踏切を渡る男の子と女の子、波打ち際ではしゃぐ2人の女の子、校舎(?)の屋上で管楽器を吹く2人の女の子、の3つのシーン。「夏」「海」「空」をイメージさせるまぶしい光景だ。
「青を基調に爽やかな感じを全面的に出したイラストです。依頼時にシチュエーションは決まっていましたが、個人的にもこういったシーンはよく描きます。
今回は“透かし”のギミックがあるので、イラストを前後に分けたときに違和感のないようにする必要がありました。手前に来るイラストはどうしてもシンプルになるので、寂しくなりすぎないように端に草などを配置して、背景になるイラストは、反転しても違和感がないように気をつけました」
イラストは一方から“透かし”たときに完成するため、奥にあたるイラストはペットボトルに反転して貼られることになる。そういうイラストを描くのはかとうさんも初体験。仕掛けは面白いと思ったものの、イラストレーターとしては難易度の高さも感じたという。また、これまで楽器を描く機会が少なく、吹奏楽の2人を書くときには特に苦労したとか。
それぞれ放課後のさまざまなシーンを描いているが、かとうさん自身はどんな高校生でどんな放課後を過ごしていたのだろうか。
「地元が田舎で学校の周りにコンビニやファミレスもなく、このイラストみたいな青春は過ごしてなかったと思います(笑)。今回描いた青春のイメージは、自分の中にある青春像、あこがれのようなものです。カップルのやつは……特に」
「ホワイトボトル」は“透かし”の仕掛けのために存在していた?
「カルピス」の限定パッケージを毎回楽しみにしている人も多い。アサヒ飲料のマーケティング担当・前田遼さんによると、夏季限定デザインは2004年に初めて実施され、今回で10回目。近年は「カルピス」の爽やかなイメージを強化するために行っているそうだ。
“透かし”の仕掛けを導入したのは今回が初めてで、2つのきっかけで生まれたという。
「一つは『カルピスウォーター』ならではの要素。『カルピスウォーター』のボトルは、液色をキレイに見せるためにペットボトルの凹凸を無くしていまして、『ホワイトボトル』といって特別に開発したものです。また、ほかは丸形が多いなかで四角い形なのも特徴的で、もともと向こうが透けて見えるものでした。
もう一つは、ラベルを制作している会社からの提案です。正面だけ透明なラベルを使用すると裏側が透けて見えて面白くないですか?とご提案いただきました」
「カルピスウォーター」の真っ白な液体がキャンパスとなって、イラストも映える。また、液体が白いために向こう側が見えず、飲み終わってから見える“透かし”の仕掛けが生きた。もともと「カルピスウォーター」が持っている要素がまるで“透かし”のために用意されたかのようで、実に秀逸な仕掛けだといえる。
パッケージに垣間見る作り手の隠せない思い
今時分、こういった商品の仕掛けにSNSは敏感に反応するが、公式Twitterの「カルピス“水玉通信”」 は、限定パッケージを告知する投稿で“透かし”がわかる画像を使用していない。実際に商品を手にした消費者は仕掛けに気づき、ここぞとばかりに投稿するわけだが、こんなステキな仕掛けなら作り手側は言いたくて仕方がないはずだ。よく我慢できたなと思う。
https://twitter.com/calpis_mizutama/status/1285129941818863616
「お客様に楽しんでもらいたいという思いのなか、仕掛けのすべてを伝えることはしておりませんでしたが、予想以上の反響でした」
ただ、実物のパッケージには「飲みきると、新しいイラストが完成!」の文言が。「パッケージに書くか書かないかの議論は、正直ありました。作り手の『気づいてほしい』という意思が入ったのだと思います」と前田さんは笑う。
販売開始当初は限定パッケージを求めてコンビニをはしごした、という声もあったが、現在ではほとんどのコンビニで手にすることができ、8月上旬にはほかの販売チャネルでも入れ替え完了予定だ。
コロナ禍の落ち込んだトーンのなか、今回の「カルピスウォーター」の取り組みは実にすがすがしい。「カルピスウォーター」の消費者は全年齢層が揃っているが、今回の“青春イラスト”は、年齢や青春を謳歌した時代によって受け取り方は異なりそう。あなたは何を思いましたか?