「HAKUTO-R」のispaceが月面データを提供 新たなビジョン「Blueprint Moon」とは

写真:ispace

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「HAKUTO-R」のispaceが月面データを提供 新たなビジョン「Blueprint Moon」とは

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民間企業による月面探査プログラム「HAKUTO-R」を進めるispaceは、シリーズB投資ラウンドにおいて30億円の資金調達の実施、および新たな収益の柱としての「月面データ事業」に向けたビジョン「Blueprint Moon」を発表した。

「月面データ」を活用して宇宙産業へ参入可能に

「HAKUTO-R」を進めるispaceは現在、月への輸送サービス(ペイロード)を構築中。今後拡大していく月面のインフラ開発を支える計画をしている。すでに米宇宙産業スペースXと打ち上げ契約を締結(2018年)、2022年に実施予定のMission1におけるペイロードでは約30キロの積載荷物の搭載が可能としている(Mission3における積載重量は100~150キロ以上を想定)。

そして今回、ペイロード事業と並ぶ同社の収益の柱として、新に「月面データ事業」のサービスを展開することを発表。そのサービス提供をイメージした、月面開発における新たなビジョン「Blueprint Moon(ブループリントムーン)」は、宇宙産業に参入する企業に有益な“青写真”を提供するコンセプトだ。

ブループリントムーンは3つのフェーズに分けられ、技術の実証(2021~2023年)、頻繁な輸送とデータ販売(2024年~)、リソース利用と販売(2030年~)を行う計画。提供するデータは、資源埋蔵地や可採埋蔵量などの資源データ、画像・映像や地形・地質などの環境データ、ランダー(月着陸船)・ローバー(月面探査車)のテレメトリー(遠隔測定)や通信などを想定。それら月のデータを収集し加工した上で政府宇宙機関や大学、研究機関、民間企業などの顧客に提供し、月面開発に役立ててもらう。

IspaceのFounder & CEO 袴田武史氏は、「宇宙産業、とりわけ月面開発ビジネスは今後、官民を巻き込んだ大きな拡大が見込まれています。今回調達した資金で、先日最終の着陸船デザインを公開した月面探査プログラム『HAKUTO-R』の開発を着実に進めるとともに、パートナーシップ事業、ペイロード事業と新たな月面データ事業を拡大していきます。ispaceは、これからも民間による宇宙産業の拡大をリードし、人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界を目指します」とコメント。

IspaceのFounder & CEO 袴田武史氏

宇宙資源開発は今後十数年のうちに国際競争が加速するといわれており、日本も6月に「宇宙基本計画」 を閣議決定。宇宙開発の官主導から民間主導へのシフトや、1兆円2000億円といわれる国内宇宙産業の規模を倍増させるほか、アメリカが提案する国際宇宙探査「アルテミス計画」で日本人宇宙飛行士の活躍の機会を確保することなどが示されている。

シリーズB投資ラウンド30億円を調達

また、ispaceはシリーズB投資ラウンドにおいて30億円の資金調達を実施。インキュベイトファンドが運営するIF SPV 1号投資事業組合をリード・インベスターとし、宇宙特化型ファンドの宇宙フロンティアファンド、「HAKUTO-R」のコーポレートパートナーである高砂熱学工業株式会社と三井住友海上火災保険株式会社の4社を引受先とする第三者割当増資。シリーズAで調達した103.5億円と合わせて累計調達金額は約135.5億円になる。

今回調達する資金を元に、2022年に実施予定のMission1で使用するランダーの最終開発投資、2023年に実施予定のMission2で使用するランダーの先行開発投資、さらには2024年以降のランダーのサイズアップを見据えた先行開発投資を行う。