アメリカの大統領選が11月3日に投開票される。新型コロナウイルス対策や減税の是非、対北朝鮮政策など争点はたくさんあるが、一番の注目は「アメリカ第一主義」を掲げる“トランプ流政治”を続けるか否かだろう。アメリカのみならず世界中を巻き込んで騒ぎを起こしてきたトランプ大統領がさらに4年任期を延ばすのか、それとも4年ぶりに民主党が政権を奪還するのか。世界中が固唾を飲んで見守っている。
世論調査だけではわからない
米大統領選は人口などに応じて各週に割り当てられた全538人の「選挙人」を奪い合う方式。過半数となる270人以上を獲得した候補が次の大統領となる。全50州のうち、ネブラスカ州とメーン州を除く48州が「勝者総取り方式」。つまり1票でも上回った候補がその州に割り当てられた選挙人をすべて獲得できる。
2016年の前回大統領選ではヒラリー・クリントン元国務長官が総獲得票数で上回ったものの、複数の激戦州でドナルド・トランプ大統領(共和党)がわずかに上回って選挙人を総取りした結果、選挙人の数ではトランプ大統領が上回るという逆転現象が起きた。事前の世論調査ではジョー・バイデン氏(民主党)が有利とされているが、激戦州の動向次第ではトランプ大統領が勝利する可能性は十分ある。
レッドステート、ブルーステート、スイングステート
共和党の支持基盤は保守層や富裕層、白人、経営者、農村部などで、民主党はリベラル層や貧困層、黒人・ヒスパニック(中南米)系、労働組合、都市部からの支持が厚い。結果的に全米50州のうち、首都ワシントンと35州は共和、民主のどちらかが強いとされていて、共和党が強い「レッドステート」、民主党が強い「ブルーステート」と言われる。伝統的に内陸部はレッドステート、東西海岸部はブルーステートが多い。共和党はテキサス州などでは無敵を誇っており、逆に民主党はカリフォルニア州などで強さを誇っている。
残る15州が「スイングステート」などとも呼ばれる激戦州。前回大統領選では11の激戦州のうち、トランプ候補が7州で99人を獲得し、クリントン候補は4州37人にとどまった。これが勝敗を分けた。今回は15州の激戦州のうち、特にミシガン(選挙人16)、ペンシルベニア(同20)、ウィスコンシン(同10)、アリゾナ(同11)、フロリダ(同29)、ノースカロライナ(同15)の6州が注目されている。
トランプ大統領とバイデン氏は選挙戦最終盤の10月29日、ともに激戦州の中で最大の票田であるフロリダ州で集会を開催。自らに投票するよう呼び掛けた。
投票率は100年ぶりの高水準も最終決着までには時間がかかる?
今回の大統領選では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて期日前投票の制限を緩めたことに加え、トランプ大統領の去就への注目度が高いことなどから郵便投票や投票所での期日前投票が大幅に増加。米フロリダ大学によると前回の5800万人を大幅に上回る8000万人が期日前投票を済ませたという。投票率は前回の58%を超え、100年ぶりの高水準になるとの見方がある。
ただ、一部の激戦州を含む10程度の州では郵便投票の開票が投開票日以降にずれ込む見通しで、3日に大勢が判明しない可能性がある。仮に早期に結果が出たとしても、郵便投票の正当性をめぐって敗者側が法廷闘争に持ち込む可能性もはらむ。特にトランプ大統領は簡単に敗北を認めない可能性を示唆しており、最終決着がいつになるのかは見通せない。