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中国には厳しく欧州とは調和。バイデン外交の行方

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次期アメリカ大統領のバイデン氏は2021年1月の政権発足に向けて本格的に動き出しているが、どのような外交・安全保障政策を進めていくのだろうか。これまでのバイデン氏のビジョンや発言などを勘案し、バイデン政権が各国にどういった姿勢で臨むのかを独自に考えてみたい。

日米関係は据え置き

まず、日本との関係だ。世論では、トランプ大統領時代の日米関係は非常に良かったとの声が多く聞かれる。確かに事実ではあるが、その背景には、日本は安全保障的に必ずアメリカと仲良くしなければならず、安倍晋三前首相がそういった事情も戦略的に考慮し、うまくトランプ大統領の外交的親友になったことがある。決して、トランプ大統領が親日家だったわけではない。

そして、菅義偉首相は安倍路線を基本的に継承しており、日米関係重視をすでに宣言している。バイデン氏もオバマ路線を継承するとみられ、日米関係を重視することは想像に難くない。よって、菅・バイデン関係になっても日米関係では大きな変化はないだろう。

対中は人権問題・安保面で圧をかける

そして、日米同盟の行方も大きく関係する中国と北朝鮮だが、バイデン氏は対中国では厳しい姿勢で対応していくことを明言している。特に、東シナ海や南シナ海、台湾など海洋覇権にかかわる問題ではトランプ政権の姿勢を継承することになるだろう。

また、バイデン氏は人権を重視しており、香港国家安全維持法や新疆ウイグル、チベットなどの人権問題に対して、習近平政権に圧力をかけていく可能性もある。トランプ大統領は米中貿易摩擦を引き起こしたが、中国の人権問題には関心を見せなかった。バイデン政権では貿易摩擦が解消されるだろうが、しかし、人権や安全保障で中国に圧力をかけていく可能性が高い。

対北朝鮮は悪化するか

北朝鮮への対応は大きく変化するだろう。2017年にアメリカと北朝鮮との間で緊張が走ったが、それ以降トランプ大統領金正恩氏と3回も会談し、北朝鮮の指導者と会った最初のアメリカ大統領となった。現在、米朝交渉は停滞しているが、金正恩氏にとって“会ってくれる”アメリカ大統領の存在は大きかったに違いない。

しかし、バイデン氏はオバマ政権の戦略的忍耐を継承するとみられ、北朝鮮が核・ミサイルで進展を見せなければ会うことはしないだろう。よって、バイデン政権になると、北朝鮮が再び瀬戸際外交や核実験、ミサイル発射などを仕掛けてくる恐れがある。

欧州との関係は大幅に改善

一方、バイデン政権になると、欧州との関係は大幅に改善される。トランプ大統領はたびたびNATOの存続を脅かす発言をしたり、国連人権理事会やパリ協定など多国間組織・協定から脱退したことで、フランスやドイツ、イギリスなどから強い不信感を買い、アメリカと欧州の亀裂は決定的なものとなり、欧米の分断が進んだ。

メルケル独首相やマクロン仏大統領はすぐにバイデン氏を祝福したが、心底安堵したのが本音だろう。バイデン氏は多国間主義を重視し、すでにパリ協定への復帰を明言しており、大西洋における分断が改善することは間違いない。

ロシアは、米ロ間の核軍縮協議が進展するとの期待を持っているものの、オバマ時代に米ロ関係が悪化したことから、バイデン政権を警戒している。4年前にトランプ大統領が勝利した際、プーチン大統領は真っ先に祝電を送ったが、現時点でもロシアはバイデン氏へ祝電を送っていない。

また、欧米関係が改善することで、NATOという枠組みやウクライナ問題でバイデン政権が圧力をかけて来ることを警戒している。

大きく動く中東との関係性

最後に中東だが、ここでも情勢が大きく動く可能性がある。トランプ大統領は就任直後からイランを敵視する政策を進め、2015年のイラン核合意から一方的に離脱し、イランへ経済制裁を課してきた。それも影響し、2020年始めには米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したことで世界に緊張が走った。

バイデン政権になるとイラン核合意へ戻るとみられ、トランプ政権下の米・イラン緊張はなくなる可能性が高い。イラン核問題が今後どう進むかはイランの行動にもかかっているが、バイデン政権はイランへ関与する姿勢に転換する。

また、トランプ政権下のイスラエル重視姿勢も、バイデン政権ではなくなる可能性が高い。イスラエル重視姿勢によって、パレスチナの地位や尊厳は大きく揺らぎ、最近ではイスラエルとの国交正常化をめぐりアラブ諸国の間でも分断が生じている。バイデン氏は今年5月、パレスチナへの支援を回復させると主張していることから、今後はバイデン政権とイスラエルとの間で距離感が生じてくる可能性がある。

また、イスラエルと同じくイランと対立するサウジアラビアも、バイデン氏の勝利を面白く思っていない。オバマ政権時、アメリカとサウジアラビアの関係は冷え込んだ。トランプ大統領は、対イランでサウジアラビアと武器売却などで蜜月的に足並みを揃えてきたが、バイデン氏になると、2018年10月のジャマル・カショギ氏の殺害のように人権問題でサウジアラビアに迫ってくる可能性がある。バイデン政権誕生によって、イランとイスラエル、サウジアラビアを取り巻く中東情勢が大きく動く可能性が高い。