社会

在宅医療から考える 人生の最期の迎え方[フレアス]

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「人と人とのふれあいを大切にし、在宅医療サービスで未来を明るくする」という会社理念を掲げる株式会社フレアスは、訪問マッサージや訪問看護などの医療サービスを展開している。前回は同社の起業からこれまでについてインタビューしたが、今回はフレアスが行っている事業について掘り下げていく。

株式会社フレアス 代表取締役社長

澤登 拓 さわのぼり たく

1969年生まれ。山梨県出身。1991年から北京中医薬大学にて東洋医学を学ぶ。帰国後は専門学校に入学し、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を取得。2000年に在宅マッサージ事業「ふれあい在宅マッサージ」を起ち上げ、2011年には「株式会社フレアス」に社名を変更。全国各地に事業所を展開し、在宅医療を提供している。

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病院に入りたくても入れない未来

訪問マッサージからスタートしたフレアスは、現在、訪問看護、歯科サポートという3つの事業を軸にしている。同社が行っているのは、在宅医療という分野であり、近年注目を浴びている分野である。創業者である澤登社長は、いまの医療分野について懸念していることがあるという。

「日本に西洋医学が導入された1950年代以降、病院は病気やケガを治療して、人を回復させ、社会に戻す役割を担ってきました。この制度が確立された背景には、子どもが多く、老人が少ないという、発展途上国特有の人口ピラミッドがあったのです。しかし、先進国である日本は2007年に超高齢社会となり、病院の役割も変わりつつあります。問題は医療ニーズが低い高齢者で埋め尽くされる病床や、そこに費やされる国の医療費。このままでは、医療制度そのものが破綻してしまう。そこで、家で病人を世話する在宅医療が必要になってくるのです」(澤登)

現在、高齢者にかかる医療費は、国民医療費の3分の1程。団塊の世代が75歳以上になる2025年以降は、これが逆転し、高齢者が過半数を占めるようになる。もはや、老後、病院に入りたくても入れないという未来が目に見えているのだ。

全国展開するための人材教育と経済合理性

この状況に対し、それなら自宅で病人や高齢者を診られるような社会を、地域ぐるみで作っていこう、というのが在宅医療の考え方である。現在、同社は全国にマッサージ事業所を39拠点、看護事業所を7拠点、歯科サポート2拠点を置いている。事業者として大事にしているのは、事業の根幹を担う「人材教育」、ITを駆使することで得られるデータベースの蓄積などのナレッジの共有、民間が行う医療でもビジネスとして成り立つ「経済合理性」だという。

「医療・介護業界において人材不足は深刻な問題です。そこで、弊社では労働環境の改善や教育システムの向上を目指しています。例えば、今取り組んでいるのは残業ゼロの体制作りです。主婦の方でも安心して働けるような教育体制を整えます。また、その実現に欠かせないのがITの活用です。先日、550名以上の社員にiPadと携帯電話を配布しました。目的は情報の共有や情報インフラの整備です」

そのほかにも、社員のメンタルケアや仕事の悩みを相談できるヘルスケアを行う仕組みを構築中。いかに心地よく働けるか、という点を重視しているのも同社の特長と言えるだろう。

ビュートゾルフ
澤登社長が訪問したビュートゾルフ(オランダ)

先を行くオランダの在宅ケア組織

医療サービスを提供する事業者として、革新的な取り組みを行うフレアスだが、モデルケースにするNPO団体がオランダにあるという。

「オランダで設立されたビュートゾルフという訪問看護ステーションのNPOがとにかく素晴らしいのです。2006年に設立され、現在では8,000名の医師や看護師を抱えています。この数に対してバックオフィスにいるのはたった40名ほど。それが出来るのは、ITを駆使したマネジメントシステムの構築が成されたからです。ITで患者の情報を共有するだけでなく、患者の質問に対して8,000名が回答することだってあり得るのです。そのノウハウの蓄積は大きな財産になります。しかも、彼らは昨年、顧客満足、従業員満足においてオランダナンバー1を獲得している。彼らをモデルケースにして、日本でも在宅医療を定着させていきたいですね」

団塊世代の最後の仕事

今、日本の医療は大きな転換期を迎えている。フレアスは在宅医療の専門家として、より大きな役割を担っていくことだろう。最後に澤登社長が成し遂げたいことについて聞いた。

「納得する最期を演出させていただく、というのが私の使命だと思っています。多くの方が自宅で最期を迎えたいと言います。それを実現するためには、地域全体で自宅における介護や医療を行える仕組みである『地域包括ケア』を整備する必要がある。医師、看護師、歯科医、薬剤師、マッサージ師を網羅した医療チームを作り『目に見えない在宅の総合病院』を作ることが目標です。団塊世代が後期高齢者となる2025年問題を乗り越えるためには、自分がどう最期を迎えるかを国民一人ひとりが考え、意識を変えることが重要。それには団塊世代からの発信が欠かせない。こういった仕組みを整備することが”団塊世代の最後の仕事”だと思っています」

株式会社フレアス

高齢者を対象にした訪問マッサージや訪問看護、訪問歯科サポート、医療サポートなど、総合的な在宅医療サービスを提供している株式会社フレアス。会社理念は「人と人とのふれあいを大切にし社会貢献すると共に、社員の物心の幸せを追求する」。現在、札幌から沖縄まで39事業所(2014年7月現在)を構える。

 

[公式ホームページ]