エステティックサロンなどプロの美容事業者向けに、ハーブティーや酵素ドリンクなどの「インナービューティー(内面美容)製品」を販売している株式会社エステプロ・ラボ。現在、日本に2万店あるといわれるエステティックサロンのうち、約7,000店舗で同社の商品が販売されているという。取締役会長の佐々木広行氏に、市場を席巻するプロ向け内面美容製品のビジネスについて話を聞いた。
美容業界を変えたいという思い
エステプロ・ラボの歴史は、2002年に開業した小さなエステティックサロンにまでさかのぼる。そこから3年間で4店舗まで経営拡大していくうち、次第にエステティックサロンにおける外面美容だけの施術に限界を感じたという。
「肌の上から塗る化粧品や痩身、美肌の美容機器で、いくら外面からの施術を行ってもなかなか結果が出ないこともありました。そこで、内面から働きかけるためのインナービューティー製品を探したのですが、当時の美容業界には販売価格に比べて原価も安く、エビデンス(科学的根拠)もないようなレベルの低い商品しかなかった。ならば自分たちで作るしかないと商品開発から取り組み、2006年に自社サロンでハーブティーの販売を始めたのです」(佐々木)
はじめは自社のサロンの施術効率を高めるための内面ケアが目的であったが、少しずつ美容業界の奥深さや問題点を知るようになり、内面美容製品をさらに追求しかなくてはならいという使命を感じたという。そうして生まれたのが「プロフェッショナルユース ハーブティーセレクション」だ。どのエステティックサロンでも外面のみの施術に限界を感じているなかで、そこに甘んじることなく結果を出すために商品開発から行うというストイックな姿勢が同社の原点にある。
「ハーブティーセレクション」は質の高さが評判となり、他のサロンからも売りたいという声がかかって美容市場にその名を広めていく。そして2008年にサロン事業を終了して現社名に改め、サロン専売品メーカーとなった。
日本の健康を支え社会貢献を果たしたい
一般市場には一切卸さず、プロ事業者専売の内面美容製品にこだわるエステプロ・ラボ。そこには「美容という切り口から日本の健康を支えていきたい」という社会貢献へ思いがある。日本は長寿国でありながら、晩年は寝たきりや病気を抱えて薬に頼りきりとなっている人も多い。いわゆる”健康寿命”と実際の寿命には、10年の差があるといわれている。高齢化も進み、その医療費が国家財政を圧迫していることは言うまでもない。
安倍政権は2013年6月、いわゆる健康食品産業を育てるために「機能性表示」を規制緩和する閣議決定を出した。費用がかかりすぎるトクホは中小企業の参入障壁となっていたが、規制緩和によって、一定のルールに基づいて効果効能を謳うことができるようになれば、健康食品を積極的に摂取する人が増え予防医療につながる。病気になってから医薬品に頼るという現状を打開することができるのだ。
アメリカでは、すでに機能性表示が可能となっており、1994年の制度導入以来、健康食品産業は急成長している。
「若者に対しては”健康”を謳うより、”美容”を切り口にしたほうが確実に効果があります。美容意識の高い女性ならばなおさら。予防医療につながるためのより高い啓蒙普及活動を行うためには、エステティックサロンなどの強い影響力を持つ美容のプロに、高品質でエビデンスがしっかりしている質の高い商品を提供することが近道と考えています。内面美容を切り口に日本の健康寿命を伸ばし、医療費削減につながることを目指しています」
すべての工程において妥協を許さない
同社の製品がここまで評判を呼んでいる理由は、妥協を許さない姿勢からきている。
「製品開発のコンセプトは、エステティックサロンにおいて、外面美容の施術と合わせた内面美容製品としてしっかり結果を出すことです。これまでの美容業界における内面美容製品は、価格も適正より高くエビデンスもないようなものばかりだったため、消費者問題の多い市場でした。その状況を打開すべく、すべての製品において販売前に実際に人に試して機能性や安全性の裏付けを取ることのできるヒト臨床試験を受け、科学的根拠となるエビデンスを取得しています。さらに製品生産においても、通常は工場に丸ごと委託するケースが多いなか、研究開発の人と協議を重ねながら、要所で医学顧問や学術顧問に指導を仰ぎ、自社や知り合いのエステサロンでの試用を繰り返して、試行錯誤しています」
現在の主力商品は、酵素ドリンク「ハーブザイム113グランプロ」。構想から販売まで5~6年をかけたという。米国で研究されている酵素栄養学に基づいた商品開発を行い、その生産過程にもこだわる。通常、酵素はステンレスの釜で製造するが、同社では無添加天然にこだわり、乳酸菌や酵母が棲み付いた天然のヒノキ樽で発酵させている。材料となる113種類の国産の野菜と果物は、生産県まで選び抜いたもの。佐々木会長をはじめ、常務の川端氏など生産に携わる役員たちのこだわりは並大抵ではない。
今後は内面美容の価値とコンテンツを導入していく
いまや同社のインナービューティー製品のエステティックサロン採用件数は、3件に1件。プロユースを目指してきたことが実を結び、現在はモデルやタレントなど”見せるプロ”にもファンが多い。
「有名アーティストが多数所属するエイベックスのアーティスト専用エステティックサロンにも、インナービューティー製品を卸しています。美容ライターからの人気も高く、雑誌掲載依頼も増えています」
また、最近では中国やシンガポールなど、アジアの富裕層からの注目も集まっている。特に上海は、エステティックサロンの数が急激に増加している注目の市場だ。今後は本格的にアジア進出にも取り組んでいく予定だという。また、これまで100%外面美容中心だったエステティックサロンの形態を変革していくことも大きな課題だ。
「サロン向けの講習会を全国で月5~6回行い、内面美容の価値の理解を深めてもらい、コンテンツとしての商品導入を促進しています。長い目で会社を継続させていくためには、サロン一店一店との信頼関係をより強固なものし、互いのブランドを高めていくことが必須だと考えています」
自社の利益だけでなく、美容業界全体、また社会貢献を目指す真摯な姿勢にさらなる発展が期待できそうだ。