日本の男女格差、世界と比べてどうなのか?

五輪組織委新会長に就任した橋本聖子氏 写真:ロイター/アフロ

社会

日本の男女格差、世界と比べてどうなのか?

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東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が2月12日、女性を軽視する発言を巡り責任を取って辞任を表明し、18日、後任として橋本聖子五輪相が就任することが決まった。世論調査の結果でも、新型コロナの影響もあり中止を求める国民の声も多いが、今回の騒動は五輪ホスト国としての日本のイメージダウンになったことは否めない。しかし、問題はこれで終わりではない。世論は今回の問題を改めて各自で考え直さないと、女性の社会進出や労働環境、男性の育児取得、働き方改革など今日の重要課題が引き続きないがしろにされ、日本の人口減少をいっそう進めることになるだろう。

男女格差国別ランキング

今回の騒動から、ここに注目したいランキングがある。世界経済フォーラムは2019年12月、男女格差の国別ランキング、ジェンダー・ギャップ指数 (Gender Gap Index)というものを公表した。それによると、トップはアイスランドで、以下トップ10に、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、ニカラグア、ニュージーランド、アイルランド、スペイン、ルワンダ、ドイツが続いた。ジェンダー・ギャップ指数は各国の政治家や研究者、企業役員以上などに占める女性の比率、女性の労働環境や進学率などを項目に試算されている。男女格差が少ない背景には、働く女性を取り巻く環境や制度が整備されていることがある。

例えば、7割程度の父親が育児休暇を取得しているフランスでは今年7月下旬から、約1ヶ月の育休取得が可能になるだけでなく、最短でも7日間の取得が義務となる。日本社会では、“忙しいから育休は取れない”との男性の声も多いが、それが法律違反となるのだ。7日間の育児休暇を与えなかった企業には1人あたりで7500ユーロの罰金が科されるという。

一方、日本は153カ国中で121位となり、男女間の格差が各国と比べ大きい結果となった。当然ながら、各国によって政治や経済、社会の環境が違うことから一概には比較できない部分もあろうが、日本の幹部職に占める女性の比率、また、出産・育児などで女性が正社員をやめざるを得ない状況などから、153位という結果に納得する人々が多いことだろう。

まだまだ大きいイスラム諸国の男女格差

ちなみに、日本より男女格差が露骨な国々もある。例えば、イランでは2019年10月、カタールワールドカップのアジア2次予選の国際Aマッチから、これまで禁止されていた女性のスタジアム観戦が40年ぶりに解禁された (ただし国際試合のみ)。イランは厳格なイスラム国家であるが、近年は自由や平等などを求める若者たちが大幅に増加し、米国と政治的には対立するイランではあるが、米国への興味を持つ若者も増えている。

筆者にはイラン人女性の知り合いがいるが、政治とは別に反米思想は持っていない。それどころか日本人と同じようにスマートフォンを持ち、SNSを日常的に使っており、自由や平等を求める声を挙げている。イランでは、公共の場において女性が髪を覆うイスラム教のベール「ヒジャブ」を着用することが義務付けられているが、ヒジャブを外して抗議する女性たちも増加している。

また、同じく厳格なイスラム国家であるサウジアラビア でも2018年6月、これまで禁止されていた女性の車運転が解禁された。サウジアラビア人女性と仕事について話していた際、当時車が運転できると興奮して話していたことをよく覚えている。サウジアラビアも最近イスラエルとの関係強化に乗り出しているが、その背景には脱石油と経済の多角化がある。そういったサウジアラビアを取り巻く社会変化も女性の車解禁につながったのかもしれない。そして、サウジアラビアは2019年9月、欧米や日本など49か国からの観光ビザ発給を解禁し、外国人女性のアバヤ (全身を覆う黒布)着用義務も撤廃した。今後さらにこういった動きが進むことが予想される。

社会と労働環境の変革が必須

いずれにしても、以上のように世界と比較すると、日本より男女格差が少ない国々も多いが、日本よりも露骨な国々も決して少なくないのだ。当然ながら、女性の中にもキャリアウーマンもいれば、家庭を優先したい人、もしくは専業主婦希望の人もいることから、何から何まで男女で同じする必要はないし、それにも限界がある。重要なのは、男性社会の女性が置かれる環境への気配りや配慮であり、女性のニーズに合わせた社会、労働環境の変革である。

コロナ禍で2020年の自殺者が11年ぶりに増加 し、特に女性の自殺者が増えたというように、日本は今後さらにこの問題について取り組み、早急な対応が必要だと考える。