撮影:芹澤裕介

社会

誰でもおいしく気軽に摂れる「免疫維持サプリ」を実現したファンケルの開発力に迫る

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コロナ禍において、人々の健康意識が高まり、とりわけ“免疫力の向上”に注目が高まっている。日本能率協会総合研究所が2020年に行った意識調査でも、20~69歳の調査対象者3,000人のうち、4割近くが「免疫を高める食品を摂る」と回答した。免疫を高めるために摂取したい食品としてはヨーグルト、納豆などの発酵食品が人気だ。ただ、毎日同じ物を食べ続けるのに飽きてしまったり、なかなか効果の実感を感じられないという人もいるのではないだろうか。

そんな健康ニーズに応えてファンケルが2020年12月、新たなサプリメント「免疫サポート」を発売した。体内の“免疫の司令塔”を活性化するサプリメントは日本初だ。まさにコロナ時代にうってつけともいえる、画期的な製品が誕生するまでの経緯や秘話を、開発者に取材した。

キリン×ファンケルによって生まれた「プラズマ乳酸菌」入りサプリメント

「免疫サポート」は、乳白色をした直径1.5㎝ほどのチュアブル錠で、ファンケルのサプリでは珍しい、口に含んで噛んで食べるタイプ。ポリッと噛み砕くと唾液と反応して爽やかに発泡し、マスクで乾燥しがちな口腔内を心地良く潤してくれる。フレーバーは後味すっきりのレモンヨーグルト味だ。

1日の摂取目安量2粒の中に機能性関与成分「プラズマ乳酸菌1000億個」を配合し、さらにビタミンD、ビタミンC、カテキン含有緑茶エキスを配合。機能性関与成分が体内で免疫システムに働きかけ、健康な人の免疫機能の維持を助けるという。

免疫とは、ウイルスや細菌などの病原体から身体を守る防御システムのこと。免疫に関わる細胞は何種類もあって、精巧にバランスを取りながら体内で機能している。加齢やストレス、睡眠不足、季節の寒暖差などでこのシステムが崩れると、病原体に対する抵抗力が落ちて体調の変化が起きやすくなる。

「プラズマ乳酸菌」はこの免疫システムを活性化する機能をもつという。キリンホールディングス株式会社(以下キリン)が35年の歳月をかけて開発・研究した独自素材だ。このキリンの素材と、ファンケルの製剤技術が掛け合わされて、“免疫では日本初”のプラズマ乳酸菌を使用した機能性表示サプリメントが誕生した。

“免疫で機能性表示”という悲願を達成

製品を手に取る人に機能をわかりやすく伝えることができる「機能性表示食品制度」を活用して「免疫」をうたう製品を開発することは、ファンケルにとって悲願だったと、本製品の開発に携わった管理栄養士の永田真基さん(ファンケル 健康食品事業本部 健康食品商品企画部 商品企画第一グループ)は語る。

「健康食品業界では、免疫というカテゴリーで機能性表示食品の基準をクリアすることはまず不可能だというのが定説でした。なぜなら、免疫に対する指標は様々存在しており、限られた指標を用いての機能性は認められないことが、ガイドラインの中でも明記されていたからです。

しかし、当社はこれまでも難関と言われた数々の機能性表示をクリアし、製品化してきた実績があります。免疫についても果敢に挑戦し、製品化したいと目標を抱いていました」

ファンケル永田真基さん(健康食品事業本部 健康食品商品企画部 商品企画第一グループ 管理栄養士)

そのような中、2019年にキリンとの資本業務提携が実現。両社の強みを活かした共同研究、製品開発、販売チャネルの拡大などを図っていくこととなった。製品開発のひとつのテーマが、免疫に働くサプリメントだった。

「キリンがもつプラズマ乳酸菌の研究データを見て、免疫機能を持つ素材であることを知りました。2020年が明けてコロナ禍が始まり、世間の免疫に対する意識が一気に高まりました。この機運を逃す手はありません。サプリメント会社としてわれわれが社会の役に立てると考え、同年3月に“緊急開発”という位置づけで本製品の開発プロジェクトが始動しました」

同年8月 には消費者庁に機能性表示食品の申請をし、10月5日にファンケル初の免疫に関する機能性表示食品「免疫サポート」の届出が受理されたのだ。

“免疫の司令塔”を活性化する、唯一の乳酸菌

不可能といわれた機能性表示食品の審査をクリアできたポイントは何だったのか。

「プラズマ乳酸菌が他の乳酸菌にはない特性をもっていることです。一般的な乳酸菌はNK細胞、キラーT細胞、B細胞、ヘルパーT細胞など複数ある免疫細胞のうち一部しか活性化することができません。先ほどもあった通り、免疫機能を表す指標は様々あり、1つの指標のみでは機能が認められないのです。

それに対して、プラズマ乳酸菌は“免疫の司令塔”であるpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)を活性化します。これによって、複数の免疫細胞が活性化し、それによってプラズマ乳酸菌は免疫機能の維持に役立つことが考えられます。」

要は、有能なスーパー社員が一人いる会社より、リーダーが適材適所で社員の能力を引き出している会社のほうが、総力としては上回る。それと同じだ。

実際にプラズマ乳酸菌を摂取した群と摂取しなかった群の差を調べたグラフが以下だ。被検者の血液に含まれる抗原の一種である「CD86」の値を調べたところ、摂取後2週間で両群に有意な差を認めた(左図)。また、摂取を中断すると徐々に「CD86」の値が低下することも確認された(右図)。

実際にプラズマ乳酸菌を摂取した群と摂取しなかった群の差を調べたグラフが以下だ。pDCが活性化した時に、細胞の表面に発生する抗原の1種「CD86」という指標の値を調べたところ、摂取後2週間で両群に有意な差を認めた(左図)。また、継続して摂取するとpDCは活性化し、摂取を中断すると徐々に「CD86」の値が低下することも確認された(右図)。

「ちなみに、免疫は低くても高すぎても良くありません。免疫は高ければ高いほど良いと思われがちなのですが、実はそこに誤解があります。高すぎると免疫が暴走して、本来なら体内に入っても問題のない物質にまで過剰反応が起きてしまいます。その身近な例が、花粉症や食物アレルギーです。本製品は、免疫機能を維持することで、今の健康をサポートするのに役立ちます。」

利用する人の立場に立って、考え抜かれた製品設計

優れた機能をもつ成分も、摂取した後、体内でうまく吸収されなければ効果は期待できない。含まれる成分をいかに効率的に体内に届けるか、その製品設計こそ、ファンケルの「体内効率設計」だ。

体内効率や製剤開発は、長年のサプリメント開発でノウハウを培ってきたファンケルの最も得意とするところだ。

「実は、小さなこのチュアブル1粒にさまざまな工夫やアイデア、製剤技術の粋がぎゅっと詰まっています。たとえば、味や形状は何十回と試作を重ねて、納得のいく答えを探りました。研究所の製剤チームも『こんなに試作するサプリは初めてだ』と呆れていましたね(笑)」

どうしてそこまでこだわるのか。永田さんに質問を投げると、その回答からは製品設計における綿密な戦略と、利用する人への思いやりが見えてきた。

「製品設計をする最初の段階で、“誰でも気軽に、おいしく、継続できるサプリ”という叶えたい要素がありました。個人差はありますが、免疫とは飲んですぐに体感が出るわけではないため、継続していく上での仕掛けとして「おいしさ」や「続けやすさ」が大事だからです。

では、どんな製品なら続けてもらえるかと考えたとき、粒やカプセルなどの剤型では子どもにはシェアしにくく、また好んで食べてはくれません。ラムネ菓子のような味と形にすることで抵抗感をなくし、家族皆でもシェアできるように工夫をしました」

このチュアブル錠にさまざまなアイデアや技術が詰まっている

粒の大きさは、2粒で満足できるよう食べ応えのある直径1.5㎝。歯の弱い高齢者でも噛み砕ける硬さや厚みに調整し、味はマーケティング調査から、万人に好まれるレモンヨーグルト味を採用した。

発泡性にした狙いは2つある。後味を良くするためと、口内を爽やかに潤すためだ。

「市場品調査の際に、健康食品目的で摂取されている類似製品をいくつか試食したとき、後味や粉っぽさが残るのが気になりました。また、マスク生活で口腔内が乾燥しやすくなっているので、本品は泡で口の中を潤わせて後味をスッキリできるようにしています」

ファンケルだから成し得た特許出願の発泡チュアブル錠

体内効率や効果の実感の面からも、発泡チュアブル錠は適している剤型の一つだと永田さんは話す。

「チュアブルを噛むと、フワッと泡が広がることで表面積が増え有効成分が広がりやすくなります。pDCは腸に存在しているので、泡にのって成分が腸まで届き広がることで、機能効率が高まると考えています」

ファンケルだからこそ実現できた発泡チュアブル錠

ただし、開発には課題もあった。発泡の安定性と持続性の問題だ。

発泡の主成分は炭酸水素ナトリウムだが、この成分は空気中の水分と反応しやすい。そのため発泡性が落ちやすく、また、口に入れた瞬間はシュワッとするが、すぐに発泡が終わって持続しづらい。

かといって、水分をシャットアウトするためにチュアブル錠の表面を二重三重にコーティングすると、硬くなりすぎて噛めない人が出てくる。1錠ずつ個包装にしたとしても、袋内で炭酸ガスが発生し、袋が膨張したり破裂したりする恐れがある。

こうした問題点から、一般的に製剤では発泡性にすることを避ける傾向があるという。しかし、永田さんの開発チームではあえてそこに挑戦した。

「炭酸水素ナトリウム自体をコーティングするという独自の技術で、空気との接触を防ぎ、水分による変性を抑制することに成功しました。この特許製法により、やさしく広がる泡が長続きします。高い製剤技術力を誇るファンケルでなければ、実現し得なかったサプリメントだと考えています」

最速の商品化は、確かな製剤技術があってこそ

さて、製品開発のキックオフが2020年3月で、販売開始が同年12月。通常数年はかかる 開発を、わずか9カ月での製品化にこぎつけた。このスピードは同社でも過去最高の早さだという。なぜ、これほど短期での開発ができたのか。

「コロナ禍で健康維持への不安が高まっている事情に合わせて、少しでも早くお客様に確かな製品をお届けしたいと、全社一丸となって開発に集中しました。製品の味開発やパッケージデザインの決定、製造ラインの確保、届出の申請などのタイミングをきれいに揃えることができ、時間的なロスが省けたことも大きかったですね」

これは開発から製造、販売、マーケティングまで一貫して行えるファンケルの企業体制の成せる業だ。さらに、ファンケルの高い製剤技術もスピード開発の推進力となった。

「私は前職でも健康食品会社に所属していたのですが、ファンケルの製剤技術力は他の会社と比較しても群を抜いています。特に今回の製品開発で、その底力を改めて実感しました」

主婦や健康管理意識の高い2,30代が愛用

満を持して発売された「免疫サポート」だが、発売数カ月にして早くも利用者の反応は上々だそう。ネット通販で購入した顧客の94%が「継続したい」と回答している。

特に愛用者が多いのが、40代50代の女性だ。永田さんの分析によれば、日本人の思考特性として「自分の健康と同じように、家族の健康も守りたい」と考える割合が高いそう。これは日本以外の諸外国には見られない特徴だという。会社を休むのが申し訳ないなど、周囲との共存を考える日本人ならではの特徴といえるだろう。

「40~50代の女性会員様からは、家族みんなの免疫サポートの摂取を毎日の習慣にしているという声や、離れて暮らす両親や医療機関で働く娘にプレゼントしたというお話を聞きます」

もうひとつの傾向として、近年は若い世代ほど「自分の健康は自分で守る」という意識が強く、「体をメンテナンスしたい」と考える人が増えているのだという。手軽にいつでも健康管理ができる本製品は、忙しいビジネスマンや面倒くさがりには最適だ。

「鞄に免疫サポートを入れておき、仕事の合間や移動中に口に含んでいるという若いビジネスマンの話も聞きます。私も玄関に免疫サポートが置いてあり、出勤前に食べるようにしています。飲み続けて数カ月になりますが、風邪もなく体調は万全です」

コロナ禍において健康ニーズが高まるなか、ここぞというタイミングで「免疫サポート」の製品化を実現したファンケル。その技術力にはもちろん、どんな人でも続けられるようにと、徹底的に利用者目線で考え抜かれた製品設計には驚くばかりだ。

まだまだ収束の見えないコロナ禍においても、いつまでも健康をキープしたい人にとっても、「免疫サポート」は心強いサプリになりそうだ。