自民と都民ファ拮抗 都議選結果、衆院選にどう影響?

2021.7.5

政治

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自民と都民ファ拮抗 都議選結果、衆院選にどう影響?

写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

東京都議選が6月4日に投開票され、前回大敗だった自民党が議席を伸ばし、4年ぶりに第一党の座を奪還した。小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党、都民ファーストの会は議席を減らしたが、自民党とは2議席差で拮抗。国政与党の自民、公明両党は“最低目標”としていた過半数には届かなかった。投票率は過去2番目に低い42.39%。自公は選挙協力により組織力を発揮したが、東京オリンピック・パラリンピックの開催方法の迷走や新型コロナワクチンの停滞により無党派層の多くが都民ファ支持や棄権に回ったとみられる。

コロナ禍の都議選 立憲、共産が議席数伸ばす

都議選の選挙区は42で、定数は127。総勢271人が立候補し、無投票となった小平市を除く41選挙区で投票が行われた。

現有議席25の自民党は大幅な議席の上積みを目指して60人を擁立したが、結果は33議席だった。朝日新聞の出口調査によると、自民支持層の7割を固めたが、無党派層の支持が共産党を下回る15%にとどまった。事前予測では自民党が大幅に議席を増やすとの見方もあったが、ワクチン接種の遅れなど菅政権の新型コロナウイルス対応に批判が根強いなか、勢いに欠けた格好だ。

都民ファーストの会は2017年の前回選挙で「小池旋風」に乗って躍進。追加公認を含めて55議席まで伸ばしたが、今回は小池都知事が前面に立って応援しないこともあり、当初から苦戦が予測されていた。現有議席46に対して47人が立候補したが、結果は自民に迫る31議席。出口調査によると小池知事の支持層が都民ファ31%、自民27%と割れたが、無党派層では自民党を大きく上回る25%の支持を得て第2党に踏みとどまった。

公明党は現有議席と同じ23人が立候補し、全員当選した。投票率が伸び悩むなか、持ち前の組織力を発揮して議席を死守した。公明党の全員当選は1993年以降、8回連続。

共産党は現有の18から議席を一つ上積みし、19議席とした。国政で野党第一党の立憲民主党は現有8議席から15議席に伸ばした。共産党と立憲民主は次期衆院選を視野に候補者調整し、一定の成果を得た。出口調査によると共産の候補がいない7選挙区では共産支持層の77%が立憲の候補者に投票。逆に立憲の候補がいない12選挙区では立憲支持層の51%が共産の候補に票を投じた。ただ、共産アレルギーのある有権者も一定数いたもようで、23%が都民ファースト、15%が無所属の候補者に流れたという。

このほか、日本維新の会と地域政党の東京・生活者ネットワークが1議席ずつ獲得し現状維持。国民民主党やれいわ新撰組などは議席を得られなかった。

自民党が第一党に返り咲くも自公で過半数届かず

自民党が第一党に返り咲いた理由は2つ。1つ目は公明党との選挙協力の復活だ。かねて自民党は国政で連立を組む公明党と選挙協力してきたが、前回選挙の際に小池旋風を警戒した公明党が自民党との協力を蹴って都民ファーストの会と連携。前回選挙では公明の候補がいない選挙区で公明支持者の68%が都民ファ候補に投票したが、今回は82%が自民候補に投票した。

2つ目は小池知事が都民ファへの応援を控えたことだ。小池旋風を巻き起こした前回選挙では連日都民ファ候補の応援演説に入り、SNSも駆使して全面的に応援したが、今回は沈黙。公示直前の6月22日に過労を理由に入院してしまった。昨夏の都知事選で自民党から実質的な支援を受けた“見返り”で都民ファ支援を見送ったとささやかれる。選挙戦最終日には都民ファーストの会代表ら10人超の候補者の激励に回ったが、最後まで演説に立つことはなかった。

逆に自公が勝ちきれなかった背景には東京オリンピック・パラリンピックの開催や新型コロナウイルス対応をめぐる菅政権への批判がある。今回の都議選で都民ファは公約に「無観客での開催」を掲げ、共産は「中止」、立憲は「延期か中止」を主張したが、自民と公明は公約で触れなかった。菅政権は国民に明確な説明をしないなか、開催に突き進んでいるが、国内でコロナ感染者数がリバウンド傾向にあり、開幕まで1カ月をきった今、一度決めた観客数「定員の50%以内で最大1万人」も断念し未だ決められずにいる。新型コロナのワクチン接種がここにきて停滞し始めていることも自民党にとっては逆風となった可能性がある。

衆院選は新型コロナワクチン接種の進み方次第

永田町では「都議選は国政選挙の先行指標」といわれる。2009年都議選では自民党の議席占有率が3割弱にとどまり、直後の衆院選で惨敗して当時の民主党に政権の座を譲った。次の2013年都議選では議席占有率を46%まで回復し、翌2014年の衆院選では大勝した。ただ、前回2017年の都議選では小池旋風で18%まで減らしたが、直後の衆院選では再び大勝した。

今回の都議選の結果から今秋の衆院総選挙の結果をどう予測できるだろうか。一つ確かなことは新型コロナワクチン接種の行方が選挙結果を大きく左右するということだ。選挙前、マスコミ各社の情勢調査では自民有利、都民ファ惨敗との予測が出ていたが、結果的には自民も勝ちきれず、都民ファが2議席差でとどまった。都議選が始まったころはワクチン接種が順調との報道が相次いでいたが、その後、選挙戦終盤になってワクチンの供給不足が露呈したのが大きく影響したとみられる。衆院選までにどの程度、ワクチン接種が進むかは選挙結果に直結しそうだ。

一方で、国政には「都民ファ」がいないということがどう影響するかが注目だ。今回の都議選では無党派層の政権批判票が野党の既成政党ではなく、都民ファ候補者に流れたが、国政政党にはその受け皿が乏しい。一時はみんなの党や日本維新の会が“第三極”として注目を集めたが、その後はみんなの党が解党し、維新も関西以外での勢いに欠ける。

今回の選挙結果を受けて立憲民主と共産を中心とする野党は選挙区調整を加速させるだろう。ただ、無党派層の政権批判票を取り込むには選挙区調整だけでなく、両党がどんな社会を目指し、どんな政策をとろうとしているのか、国民に示す必要がある。