次期首相候補? 林芳正氏、衆院鞍替え早々に外務大臣に就任

写真:つのだよしお/アフロ

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第2次岸田内閣の外務大臣・林芳正氏は次期首相候補?

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衆院選の小選挙区で敗北し辞任した甘利明氏に代わり幹事長に就いた茂木敏充前外務大臣の後任に、参院からの鞍替えで初当選したばかりの林芳正元文部科学相が11月10日付けで就任。その他の閣僚は再任する。林氏は政策通として永田町でも評価が高いほか、首相率いる岸田派のナンバー2も務めており、外相としての働きぶり次第では「ポスト岸田」の有力候補になる可能性がある。

第2次岸田内閣の外務大臣、林芳正氏はどんな人物?

林芳正氏は5期務めた参院議員を辞職し、首相を目指して衆院に鞍替えを果たしたばかり。林氏は東大卒業後、三井物産勤務、米ハーバード大留学などを経て、1995年の参院選で山口選挙区から初当選。当時は父・義郎氏が衆院議員を務めており、親子で国会議員となった。義郎氏は厚生相や大蔵相を歴任し、祖父も高祖父も衆院議員を務めた政治家一家だ。

若手の頃から政策通として知られ、2008年に福田内閣の防衛相として初入閣するが、福田政権の退陣により1カ月で退任。続く麻生内閣でも経済財政担当相として再入閣したが、直後の衆院選で野党に転落したため、またしても2カ月の短命となるなど不運にも見舞われた。

野党転落後は自民党の参院政審会長や「影の財務相」(※)などの要職を歴任し、与党復帰直前の2012年の自民党総裁選に立候補。安倍晋三元首相と石破茂元幹事長が激しく競り合うなか、第1回投票において498票中27票で最下位に沈んだ。総裁選に参院議員が立候補するのは1971年の推薦人制度導入後初めてだった。

影の内閣

イギリスの野党が政権担当した際に備えて組織する政策立案機関をシャドー・キャビネット(=影の内閣)と呼ぶ。日本でもそれを模してたびたび組織され、自民党では谷垣禎一総裁や安倍晋三総裁の下で組織された。

鞍替えのラストチャンスをものに

憲法は首相の資格について「国会議員」としか定めていないため、参院議員であっても首相になることはできる。しかし、首相指名選挙は衆参の投票結果が異なった場合に衆院の意見を優先すると規定しているのに加え、参院は衆院に比べて何かと注目される機会が少ないため、過去に首相の座に上り詰めた参院議員は一人もいない。この総裁選の頃から林氏は首相の座を目指して衆院議員への鞍替えを模索していた。

鞍替えを目指す林氏の前に立ちはだかったのが“安倍元首相”の存在だ。安倍氏と林氏はそれぞれの父親である晋太郎氏と義郎氏が中選挙区時代に激しく競り合った因縁の仲。2人の父の選挙区だった旧山口1区は1996年の小選挙区制導入に伴い山口3区と4区に分かれ、その前の選挙で自民党から当選した3人(安倍晋三氏、林義郎氏、河村建夫氏)のうち義郎氏が比例代表に回り、3区に河村健夫元官房長官、4区に安倍晋三氏が立候補。以後、長きにわたって2人が議席を独占し、林氏の入り込む隙は無かった。山口の残る1区にも自民党副総裁や外相を歴任した高村正彦の長男、正大氏、2区には安倍晋三氏の実弟である岸信夫という強固な地盤の現職がいる。

しかも、山口県は次回の衆院選以降、定数が4から3に減ることが決まっていることから、衆院の選挙区に割り込むには今回が実質的なラストチャンス。林氏は2021年7月、ついに記者会見を開き、参院議員を辞職して次期衆院選に山口3区から立候補する意向を表明した。

これに対して河村氏や、河村氏が所属する二階派の二階俊博幹事長が強く反発したが、二階氏の幹事長退任で潮目が変化。林氏が無所属でも出馬する構えを見せたことに加え、情勢調査で林氏有利との結果が出たことから、ついに河村氏は衆院選への不出馬と引退の表明に追い込まれた。林氏が初当選を果たしたのと対照的に、河村氏は息子の建一氏を比例代表の上位名簿に押し込むこともできず河村家は議席を失った。

玄人好みの政治家からの脱出、「ポスト岸田」の本命へ

鞍替え成功でいよいよ首相の座を目指して再始動したばかりの林氏にとって、外相は打ってつけのポストといえる。メディアへの露出も多く、岸田首相も第2次安倍政権発足から約5年にわたって務めた要職だからだ。

第2次安倍政権で農林水産相や文部科学相を無難にこなした林氏はこれまでどちらかというと玄人好みの政治家で、スマートに仕事をこなすイメージだった。今後はいかに国民に発信していけるか、人としての魅力を伝えていけるかが「ポスト岸田」の本命に浮上するかどうかのカギを握る。

ちなみに林氏は親子2代にわたって中国との友好関係を推進する超党派の「日中友好議員連盟」の会長を務めており、伝統的にハト派として知られる宏池会(岸田派)に所属していることから、党内のタカ派から外交手腕を疑問視する声もあがる。党内タカ派の筆頭と言えば安倍元首相だが、派閥会長の岸田首相とともに党内のバランスを保つ手腕も問われそうだ。

選挙区時代の旧山口1区では林氏の父、義郎氏が初出馬以降、8回連続で安倍慎太郎氏に敗れ、最後は息子の晋三氏にも3万以上の票差をつけられ2位当選となった。次期衆院選では林氏の3区と安倍氏の4区が合区となり、公認争いで激突する可能性が高い。現状では政治力でも知名度でも安倍氏が大きく上回るが、次期衆院選を前に岸田氏から林氏に首相の座が移っていればどうなるか。大逆転で父の因縁を晴らすときが来るかもしれない。