環境負荷低減を追求し缶ビール容器包装が進化! 業界をリードするアサヒビールの新パッケージ「エコパック」「202径アルミ缶蓋」
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環境負荷低減を追求し缶ビール容器包装が進化! 業界をリードするアサヒビールの新パッケージ「エコパック」「202径アルミ缶蓋」

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英グラスゴーで開催された国連の気候変動対策会議「COP26」では、産業革命前と比較した地球の平均気温上昇を「1.5℃に抑えることを各国で確認。これによって世界的にさらなるCO2削減・脱炭素を企業に求める流れが加速したといえる。

長年にわたり環境に配慮した取り組みを行なっている食品大手のアサヒグループも大幅なCO2排出量削減を可能にする缶ビールの容器包装を開発。2023年から市場への本格展開を目指している。使いやすさはこれまでどおり・強度はこれまで以上の新パッケージを紹介する。

「1.5℃目標」でさらなるCO2削減が求められる

年々上昇する地球の気温、それに伴う異常気象や森林破壊などから地球上のあらゆる生物を守るため、社会はどのような対策をしていくべきかを話し合う「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」(2021年10月31日~11月13日、英スコットランド・グラスゴー)で採択された成果文書には、産業革命以前からの地球の平均気温上昇幅の目標を「1.5℃」とすることが明記された。2015年に採択されたパリ協定で掲げられた努力目標は「2℃より十分に低く保ち、1.5℃に抑える」とされていたことから、今回のCOP26で格上げされた形となった。

人間活動の影響で地球の平均気温は産業革命以前よりすでに約1℃上昇しており、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、現在の速度で温暖化が進めば早期に1.5℃に到達、もしくはそれを超えると予測。CO2の多くを排出する産業・運輸部門は特に、これまで以上に“CO2削減・脱炭素”に向けた取り組みが求められる。

アサヒグループホールディングスも、2050年までにCO2排出量ゼロなどを目標とした「アサヒグループ環境ビジョン2050」の実現に向けた取り組みを実施。その一つとして、環境への負荷低減を目指した、缶ビールの容器包装の開発を行なっている。

缶ビール6缶パックは、缶の上部のみを固定する日本初(※1)の「エコパック」へ。さらに、東洋製罐との共同開発によりビール類用アルミ缶の蓋を国産最軽量(※2)の「202径缶蓋」へと変更。紙やアルミニウムの使用料を減らした、新たなパッケージへと生まれ変わる。

アサヒグループ環境ビジョン2050

2050年までに、“ニュートラル&プラス”の発想で自然の恵みを次世代につなぐことを目的に、事業活動における環境負荷ゼロ(ニュートラル)を目指すとともに、アサヒグループの独自技術や知見を生かした新たな環境価値創出(プラス)に挑む。目標として、[1]CO2排出量ゼロを目指す、[2]持続可能な資源利用100%を目指す、[3]微生物活用技術などのアサヒの強みを生かした環境価値の創出、を掲げている。

※1 アサヒグループ調べで、缶体の上部のみを固定する6缶パック紙資材においては日本で初採用

※2 アサヒグループ調査によるもので、缶135mlを除くビール類用缶胴(66mm)向けの缶蓋として国産最軽量(2021年8月現在)

エコパックへの切り替えで、年間7400tのCO2排出量を削減

アサヒビールが現行の6缶パックを販売したのは1994年。以来、環境負荷低減を追求しつつ、持ちやすく丈夫なパッケージを目指したリニューアルをたびたび行なってきた。

今回開発した「エコパック」は、これまでの6缶パックの概念を大きく覆す。ぐるりと6本の缶を包んでいた側面の紙を取り除き、缶の上部のみで固定。実に、350ml缶6缶パックなら77%、500ml缶6缶パックなら81%の紙面積の削減に成功した。

「6缶パックは年間4.6億枚の資材を使用していたので、以前から軽量化に力を入れていました。今回の容器包装のリニューアルで、大幅なCO2s排出量の削減を見込めると考えています」(アサヒグループHD 広報担当者、以下同)

しかも、板紙の厚さを適正にしたことで破れに対する強度は従来品以上。サイドパネルを追加し、立体的な構造に工夫したことで剛性も増し、逆さまにしてもバラバラにはならない。

紙の面積が減ったことでパッケージに載せられる情報は少なくなるが、QRコードやデジタルツールの活用で、必要情報の記載に支障はないどころか、より多くの情報を発信することも可能だ。

何よりも、アサヒビールが製造する6缶パックすべてをエコパックに切り替えたら、年間の紙使用量は約8800t、資材製造に伴うCO2排出量は7400t削減(※3)できる見込みだという。

※3 2019年アサヒビール6缶パック全商品の出荷実績による

現在、「アサヒスーパードライ エコパック」を一部店舗でテスト販売中で、消費者の購入意欲や使い勝手などを検討し、その結果を踏まえた上で2023年以降、幅広い流通での展開、「スーパードライ」以外のブランドにも本格展開を目指す。

アルミ使用料が約2割減の202径へシフト アルコール飲料としては日本初

アサヒビールはアルミニウムの使用量削減にも取り組んでおり、金属メーカーの東洋製罐と共同で「202径アルミ缶蓋」を開発した。これまで使用していた204径缶蓋と比べて品質や強度はそのままだが、204径缶蓋よりも直径が約3mm小さく、缶蓋1枚あたりのアルミニウム使用量も約2割減。202径缶蓋を使った国産最軽量のアルミ缶は、アルコール飲料としては日本初の採用となる。

「日本では初ですが、世界では202径缶蓋は主流で、半数以上のシェアを占めています。アサヒグループでもヨーロッパやオセアニアで採用実績があり、これを機に当社製品を世界標準に合わせようと考え、202径缶蓋へシフトしていきます」

204径缶蓋を使用しているアサヒビールの全商品を202径缶蓋に切り替えたら、年間約14300tのCO2排出量を削減できる見込みだ。

202径アルミ缶蓋を使った製品は、2021年9月より、北海道工場で製造する「アサヒスーパードライ」「アサヒスタイルフリー〈生〉』「クリアアサヒ』「クリアアサヒ贅沢ゼロ』「アサヒオフ」でテスト製造し、道内にて販売中。使い勝手やリスクなどを検証し、2023年から順次切り替えを行なっていく。

競合他社と202径缶蓋の技術共有も 業界を挙げてCO2削減・脱炭素を目指す

CO2削減・脱炭素に対するアサヒビールの取り組みは企業内にとどまらない。アサヒビールと東洋製罐が共同開発した202径アルミ缶蓋の技術情報を他社メーカーにも共有し、業界全体で環境負荷低減を促進できるよう努めていく姿勢だ。

「物性評価や試験内容・結果など、通常であれば社内秘とするような技術情報を競合他社へ共有することで、国内における202径缶蓋の標準化が進み、アルミニウム使用量を削減、ひいてはCO2排出量の削減ができるはずです。世界が脱炭素社会の実現に向けて取り組みを加速していくなか、当社の技術を提供することで、持続可能な社会への近道になればと願っています」

企業同士が手を取り合い、地球規模の課題へと挑む――。それが危機に面した私たちのこれからのあるべき姿。業界をリードするアサヒビールによって、その正当性が示されていくのかもしれない。