フィンランド南東部の南カレリア県は、グリーンテクノロジーにかかわる専門職、投資家、実業家、学生を対象とした、「フィンランド・サイマー湖での3カ月」というプログラムへの参加者を募集している。選抜者は、最大90日間、南カレリアに滞在して働くことができる。環境先進国フィンランドが、日本を含めたアジア地域との連携を見据えて企画した、このプログラムの狙いについて、担当者にうかがった。
世界一幸福な国に根づく、自然環境への眼差し
フィンランドは、国連の世界幸福度ランキングで4年連続1位を獲得している。その背景の一つとして指摘されているのが、森や湖など自然と親しむ時間を大切にする、フィンランド人のライフスタイルだ。同国は地球環境への意識が高く、持続可能な開発目標を設定したSDGsへの取り組みや、環境破壊を抑えるグリーンテクノロジーにおいても世界でトップクラス。とりわけ南カレリア地方は、環境技術に関する企業や大学での研究の質の高さで知られ、南カレリアの都市ラッペーンランタは、よりよい環境の実現に向けた都市の取り組みを評価する「ヨーロッパ・グリーンリーフ賞2021」を獲得している。
今回のプロジェクトは、日本と香港のグリーンテクノロジーの分野での研究者や技術者、起業家、投資家が、南カレリアの同分野の企業や専門家たちとのネットワークを築き、新しいビジネスチャンスを見出すことを後押しするもの。社会人だけでなく、グリーンテクノロジーに関する教育を受けた新卒者や学生も応募することができる。研究者や学生は、地元のラッペーンランタ大学やラハティ応用科学大学、または学生主体の起業家グループなどで共同研究を行うことができる。
募集人数は5〜7名。選抜者には、本人だけでなく家族も含めた滞在に必要な手続きや住まい探し、子どもの学校や保育園の手配など、90日間の移住生活への手厚いサポートが約束される。滞在中には、懇親会やフィンランドのライフスタイル体験、滞在後の永住ビザ取得のサポートも含まれる。 ※渡航費、住居費、健康保険は自己負担
南カレリア県でアジア地域を担当しているユリ・リントゥネン氏は、「選ばれた人たちとその家族が、安心して生活できるように全力でサポートします」と語る(以下、リントゥネン氏)。
「家族がいても、単身でも構いません。私たちは、家族の皆さんも大歓迎です。フィンランドからリモートで仕事をすることもでき、子どもたちはクオリティの高い英語学校や、幼稚園を利用することができます。フィンランドの教育は、OECD(経済協力開発機構)が行う国際的な学習到達度(PISA)の調査でも高い水準にあります。また、南カレリアには、家族みんなで楽しめるさまざまなスポーツや自然や、文化的なアクティビティがありますよ」
研究やビジネスの面だけでなく、幸福度ランキング1位のフィンランドでの生活そのものが貴重な経験となるのは間違いない。
「フィンランドが4年連続で世界一幸福な国となっているのは、仕事と余暇の両立が可能なフィンランド人の暮らし方が、生活の質を高めているからなのかもしれません。アジアでも、ライフワークバランスは重視されていることと思います。外に出て自然を散策することと、フィンランドのゆったりした文化とのコンビネーションを楽しんでください。フィンランドには何万もの湖がありますが、サイマー湖はフィンランド最大の湖で、たくさんの島や半島があるんですよ」
グリーンテクノロジーの分野でのアジアとの連携を見据えて
このプログラムが企画された背景について、リントゥネン氏は次のように語る。
「フィンランド人は日常生活で自然とのかかわりが深いため、環境問題への意識が根付いています。すでに数多くの環境技術や研究成果がありますが、さらに向上していくためには、私たちは国際協力と交流が重要だと考えています。また、そのイノベーション技術を国際市場に発展させることも必要です。環境技術の分野で活動する投資家にとっても、良いチャンスがあることでしょう。日本とフィンランドの人々や企業とのコラボレーションは非常に円滑にうまくいっているんですよ」
南カレリアはかねてから、フィンランドにおけるアジアとの国際協力を牽引してきた。アジアとの知の拠点を構築することがこのプログラムの狙いだとする。
「グリーンテクノロジー、クリーンエネルギー、ITの専門家が南カレリアに集まってきています。日本の実業家、投資家、研究者の皆様がフィンランドに来てくださることを、心より歓迎いたします。フィンランドの可能性を感じ、美しい自然に囲まれたライフスタイルを楽しんでいただけたらと思います。フィンランドに滞在し、フィンランド人と一緒に長期的なプロジェクトやビジネスを行うことに魅力を感じていただけたら嬉しいです。滞在後、日本からリモートで仕事をするチャンスにもつながればと思います」
「フィンランド・サイマー湖での3カ月」
応募期間:2022年3月14日まで(※)、公式サイトから申込み可能
応募資格:18歳以上で、現在フィンランドに居住していないこと。審査は順次行う。
詳細は以下までお問い合わせください。
南カレリア県アジア地域担当・プロジェクトマネージャー
Jyri Lintunen(ユリ・リントゥネン)
jyri.lintunen@ekarjala.fi
※応募締め切りが2月28日→3月14日に変更になりました。