衆参5補選で笑顔なき“4勝1敗”の自民 統一地方選後半戦は立民、維新が躍進

2023.4.25

政治

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衆参5補選で笑顔なき“4勝1敗”の自民 統一地方選後半戦は立民、維新が躍進

自民党候補を破って当選した維新の林ゆみ氏と吉村洋文共同代表(大阪府知事) 写真:アフロ

衆参5つの補欠選挙が統一地方選の後半戦と同日に投開票され、自民党は「4勝1敗」となった。現有3議席から1議席上積みという結果だけ見れば自民好調に見えるが、故安倍晋三元首相の地盤だった衆院山口4区以外は軒並み接戦。保守王国で知られる衆院和歌山1区では自民前職が日本維新の会の新人に競り負けた。最近の内閣支持率上昇で、永田町では早期解散説が膨らみつつあったが、今回の結果を踏まえて先送り論が強まりそうだ。

議席上積みなれど、自民は苦い勝利

「しっかりやり抜けと叱咤激励をいただいたと受け止めている。いま解散・総選挙については考えていない」。岸田文雄首相は投開票翌日の4月24日午前、硬い表情でこう語った。

安倍晋三元首相の弔い合戦となった衆院山口4区は、安倍氏の後継候補が立憲民主の元参院議員をダブルスコアで引き離したが、元自民党議員の「政治とカネ」問題による辞職がきっかけの衆院千葉5区補選では、立憲民主や国民民主、維新、共産などの野党候補が乱立したにもかかわらず約5000票の僅差だった。

そして、岸信夫前防衛相が体調不良で議員辞職した衆院山口2区では、岸氏の長男で自民新人の岸信千代氏が野党系無所属の元職に約6000票差に迫られた。2014年に信夫氏が同じ候補と戦ったときは約3万9000票差、直近2回は信夫氏が共産党候補に7万票差を付けて勝ったのと比べると雲泥の差だ。さらに、参院大分選挙区では自民党の新人が、立憲民主の前職にわずか341票差まで迫られた。

一番の衝撃は和歌山だ。この地は自民党内屈指の実力者である二階俊博元幹事長が県連会長を務め、その影響力から「二階王国」とも呼ばれる。1区は過去4回の衆院選で野党系の岸本周平氏が制している特殊な選挙区とはいえ、今回は二階氏が和歌山県知事に転身した岸本氏の支援も取り付けるなど「総力戦」を展開。同選挙区に4回立候補し、3回比例復活している前職を擁立したが、維新の新人に約6000票差で敗れた。

補選は投票率が低いため、通常であれば組織力が効果を発揮する選挙。自民党は組織をフル回転して選挙戦を展開したが、空中戦頼りの維新に負けたのは衝撃的だろう。朝日新聞社の衆院和歌山1区の出口調査によると、維新候補は維新支持層の92%から票を得たが、自民候補は自民支持層の77%にとどまった。無党派については維新候補が57%と自民候補の29%を大きく引き離した。

自民は解散“お預け”、維新は関西以外に“課題”

岸田政権の支持率はここのところ回復傾向で、5月に首相の地元広島で主要7か国首脳会議(G7サミット)が開催されることから「サミット直後の解散」を予想する声も多かった。しかし、補選で苦戦したことを受け永田町では「解散が遠のいた」との声があがる。首相の任期満了は2024年9月、衆院議員の任期満了は2025年10月まであるため、しばらくは様子見の展開となる可能性が高まった。

維新は今回の統一地方選で掲げた「地方議員600人」という目標を達成。大阪では知事、市長の「ダブル選」で圧勝し、府市ともに議会の過半数を獲得。奈良県知事選に加えて初めて和歌山の衆院選<選挙区で勝利したが、関西以外では伸び悩み「全国政党化」には課題を残した。

存在感の低下が止まらない立憲民主

逆に存在感の低下を見せつけたのが野党第一党の立憲民主党だ。衆院千葉5区では候補者調整がうまくいかずに野党候補が乱立。立憲民主、国民、維新、共産の4党で10万票を超えながら、5万票余の自民党候補に敗れた。衆院山口4区は元参院議員を擁立したが、安倍元首相の後継候補に完敗。衆院和歌山1区では候補の擁立すらできず、野党統一候補として前職を擁立した参院大分選挙区、無所属とはいえ最近まで立憲民主の県連顧問だった元職が立候補した衆院山口2区はともに競り負けた。

敗因の一つは候補者選びにあるだろう。衆院千葉5区こそ元県会議員の新人を立てたものの、衆院山口2区、同4区、参院大分選挙区の候補はいずれも中堅・ベテランの前職や元職。参院大分は野党統一候補とはいえ、自治労出身で社民党の党首も務めた左派で、保守層の取り込みは見込みにくかった。自民党は意図的に「女性」や「若者」の候補を選んでいるにもかかわらず、立憲民主系候補は全員男性、そしてすべて自民党候補より年上だ。もっと多様な候補者を擁立することができていれば、いくつか結果を覆した可能性はある。

立憲民主の岡田克也幹事長は結果を受けて「特に足らなかったところは思い当たらない。非常にいい戦いができていた」と語ったそうだが、そう思うこと自体がずれている。負けても体制が変わらず、反省すらできないようなら今後も存在感低下が続くだろう。

統一地方選・後半戦は立憲民主、維新が大幅躍進

5補選と同日に投開票された統一地方選・後半戦では市区町村長選と市区町村議選が行われたが、市議選(44.26%)、町村長選(60.79%)、町村議選(55.49%)で投票率が過去最低を更新した。

国政政党ごとの市議選の獲得議席数は、自民党が12増の710、公明党は10減の891。地方選を重視する公明は毎回「全員当選」を目指しているが、前半戦で2人、後半戦で10人が落選し、過去最多の落選者数となった。また、立憲民主は72増の269、維新は108増の154、参政党は67となり、勢力を伸ばしたが、共産は55減の560、国民民主は30減の65、社民は23減の30と勢力を減らした。

市長選では兵庫県芦屋市で、26歳の無所属新人が現職ら3氏を大きく引き離して初当選したのが話題となった。全国市長会によると、1994年に27歳で東京都武蔵村山市長選に当選した例を抜き、史上最年少での当選となった。