マッチングアプリで幸せになれない3つのパターン【マッチング理論】

2023.7.13

社会

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マッチングアプリで幸せになれない3つのパターン【マッチング理論】

結婚に至る出会いのきっかけといえば、これまでは「職場」と「学校」であったが、近年は「マッチングアプリ」が急上昇。ネットを介した出会いはかつての“出会い系”のような負の印象は無くなり、若者の多くがアプリを入れている現状が浮き彫りになっている。とはいえ必ずしも全員が幸せになれるわけではない。人気の容姿、多趣味、高年収……など一般的に異性にモテると言われている人でも交際相手が見つからず、長々とアプリを続けている場合があるのだという。筆者の知人による体験談や経済学のマッチング理論を参考に、アプリで交際相手を見つけられない理由をまとめてみた。

マッチングアプリの基本的な仕組み

2022年11月に明治安田生命保険相互会社が実施したアンケートによると、2022年単年では、結婚したカップルの22.6%、つまり5組に1組がマッチングアプリを通じて出会っているという。読者の中にはマッチングアプリの経験がない方もいることだろう。まずはマッチングアプリ(以下、アプリ)の基本的な仕組みを解説したい。

アプリには、主に自分の求める条件に沿った相手が一覧で表示される「検索型」と、アプリが自動でおすすめの相手を表示してくれる「フリック型」の2種類がある。いずれのアプリでも気になった相手に「いいね」を送り、それに対して相手が「いいね」を返してくれたらマッチングが成立する仕組みだ。

マッチングが成立すると、お互いにメッセージのやり取りや通話が可能となり、2人の気が合えば実際に会ってみて親交を深めることができる。他方、ちょっとでも気が合わないと思えば相手を「ブロック」することが可能だ。ブロックすると両者のアプリから相手のプロフィールが消え、2人は二度とメッセージのやり取りをすることができなくなる。現実より多くの相手に出会え、簡単に縁を切れるのがマッチングアプリのメリットだ。

男女で本気度が食い違う

アプリの内情は、女性側と男性側で大きく異なる。まず女性の基本料金が無料である場合が多く、男性は月額料金を支払うのが基本だ。しかし、料金差があっても男性利用者の方が圧倒的に多い。各サービスとも男女比を公開していないが、3:1~10:1などといわれている。そのため、アプリ内では女性が優位だ。

女性は1カ月に数十~数百に及ぶ「いいね」をもらうのが一般的で、その中から気になった男性を選んで「いいね」を返す。一方、男性側の事情は寂しい。女性から来るのは多くても月に10~30「いいね」であり、気になった女性10人に「いいね」を送っても、1人とマッチング成立となるのがせいぜいだ。アプリによっては50人以上に“求愛”しても全く返答が無いこともある。

ところが、対面で会う段階になると、女性優位がおかしな作用をすることがある。それは、“本気度の差”の誘発だ。

どういうことか。まず男女共に、対面で会う段階において、複数人と同時並行でデートして交際相手を選択しようとするのが一般的だ。例えば、皆が3人の相手とデートしていると仮定しよう。女性が会っているのは「いいね」を送ってくれた数百人の中から選んだ3人の男性だ。対して男性は、求愛した数十~数百人の中から自分を選んでくれた女性と会うことになる。

この場合、女性は吟味して選んだ相手と会っているにもかかわらず、男性側は「ほかにいないから」という気持ちで会っていることが少なくない。つまり、男女間で本気度に差が生じているのかもしれないのだ。もちろん、女性は男性の軽い気持ちを見抜くことだろう。そうなれば、お互いに感情が深まらず、交際には至らない結果となる。このようにうまくいかない一因として、男性の本気度が低いというパターンが考えられるのだ。

友達としては良いけど…の消耗戦

交際に至らない2つ目の例として「友達止まり」で終わってしまうパターンがある。実際に出会う段階では、川沿いのオープンテラスで食事を取ったり、一緒にお酒のイベントに参加したり、各々の方法でデートプランを考えて親睦を深めていくが、半年、1年……と長期でデートを重ねても交際しない男女もいるようだ。

このようなパターンで女性から聞かれるのは、「友達としては良いが、彼氏としては考えられない」という意見だ。一緒に居るのは楽しく、トークも盛り上がるが、仮に手を握られたりキスをされたりすれば冷めてしまうという。

決して都合の良い相手として利用しているわけではなく、アプリを通じて出会った手前、交際を考えているものの、次のステップへの“引き”が無いのだそうだ。一方、男性側からも「より親睦を深めようとしたら連絡が取りづらくなった」「うまくいく見込みがないため交際を申し込まず、半年以上デートを重ねている」などの声が聞かれる。

交際に至らなければ、男女とも再びアプリを通じて相手を探す段階に後戻りするか、一旦アプリをやめ、出会いをあきらめることになるだろう。

転職市場と同じ? やはり弱肉強食の世界【マッチング理論より】

次に経済学のマッチング理論を参考に、ミスマッチとなってしまう理由を解説する。以下の例は経済学テキストの定番として知られる「スティグリッツ ミクロ経済学(第4版)」を引用し、筆者が再構成したものである。

ここでは男性3人、女性3人が参加している男女比1:1のアプリを想定し、互いに以下のような好みを持つ場合を仮定しよう。ポイントは男女ともモテる方から順にA、B、Cであり、女Bは男Bだけが好きな“条件の厳しい”女性であるという点だ。一方、男性陣は現実と同じく女性以上に相手を選別しようとしない。
(男Aが女Bを好み、女Cを好まない場合、「女B>男A>女C」と表記する。)

~男性側~

  • 男Aの好み:女A>女B>男A>女C
  • 男Bの好み:女A>女C>女B>男B
  • 男Cの好み:女B>女C>女A>男C

~女性側~

  • 女Aの好み:男A>男B>男C>女A
  • 女Bの好み:男B>女B>男A>男C
  • 女Cの好み:男A>男B>女C>男C

この状況から最も安定なカップルを成立させようとすると、(男A・女A)、(男B・女C)という組み合わせになり、男Cと女Bは交際することはない。女Bが男Cを好まないためだ。以上はあくまでもマッチング理論をごく簡単に表したものだが、このシミュレーションから以下2つの知見が得られる。

  1. 比較的モテない人は交際相手を見つけにくい
  2. 条件の厳しい人は交際相手を見つけにくい

このようなミスマッチは、出会う前のマッチング成立の段階、デートを重ねる段階の各段階で付きまとうことになるため、交際相手を見つけられない人は何回繰り返しても相手を見つけられないというループにはまってしまうのだ。

特に男女比で不利な男性はこうしたループに陥りやすい。アプリは男女間の出会いを容易にしたといわれるものの、それは出会いやすい人にとってであり、「弱肉強食」の世界といえるだろう。ちなみに転職市場でも同じような理屈が成り立つ。

パターンにはまらないことが成功の秘訣

マッチングアプリで交際相手が見つからない3つのパターンを取り上げたが、アプリは現代の結婚のきっかけとして最も多い出会い方であり、筆者の周りでもアプリを通じて、結婚相手や交際相手を見つけた人が多数いる。

その内の一人は、理系男子で大学・職場でもほとんど出会いが無かったが、アプリを通じて多くの女性と出会い、失恋を経験しながら最終的に自分を好きになってくれる相手と結婚した。また、身体障害を抱え、歩行が困難な筆者の知人女性は現在、アプリを通じて出会った複数の男性から求愛されているそうだ。アプリが便利なのは間違いなく、例の3つのパターンにはまらなければ、まさに「楽して楽知らず」なのだ。