とうとう赤字に転落した日本マクドナルドの出口なき迷走

2014.11.10

経済

0コメント

一時期はデフレの勝ち組企業として、圧倒的な強さを誇った日本マクドナルド。上海の使用期限切れ肉問題で致命的な客離れを引き起こしたが、それがなくても業績は低迷していた。中興の祖を切って、カサノバ氏をCEOに就けたが前途は多難である。日本マクドナルドに何が起こっているのか。

予期せぬサプライヤーの裏切り

弱り目に祟り目とはまさにこのことだ。日本マクドナルドホールディングスが10月7日に会見を開き、2014年12月期の通期決算で、2001年の上場以来、初の経常赤字に転落する見通しであることが明らかになった。

最大の要因は、言うまでもなく、同社のサプライヤーの1つだった「上海福喜食品有限公司」が使用期限切れの鶏肉を混入させた「チキンマックナゲット」を製造していたことが、一部メディアによって明らかになったことだ。

報道された映像を見る限り、「福喜食品」の原材料管理はずさんを極めていた。食品のトレーサビリティーには世界的にも定評があり、消費者の食の安心・安全には、どの国よりも厳しい目を持っている日本だけに、報道のインパクトは強すぎた。
この報道は、当然のごとく顧客離れを誘発した。7月には全店売上高が対前年比で2桁のマイナスを記録したことが、何より深刻な事態を象徴している。

同社の場合、既存店売上高は、軒並み前年割れが常態化していたが、この減少幅を新店の売上で多少なりともカバーしてきた実態がある。好転の兆しが現れてきた客単価も一気にマイナス基調へ転じたのも痛い。

さらに8月には、この状況はさらに悪化、全店売上高はなんと対前年比25.7%減、客単価も同9.8%減、客数にいたっては同16.9%減と、惨憺(さんたん)たる有様。
9月になって、全・既存店売上高の減少幅は前月に比べ狭まったものの、依然、客数は15.6%減と予断は許さない状況だ。

日本マクドナルド

勝利の方程式にヒビ

日本マクドナルドの業績を見るとき、大きな指標となるのは客数の増減だ。なぜなら、同社の成長戦略は前任のCEOだった原田泳幸氏が立てた、「客数フォーカス」が前提となっているのだ。

低価格商品で集客し、高価格帯商品に誘導、利益を取っていくというのが”原田マジック”といわれた同社の勝利の方程式。目先の利益にとらわれず、脇目も振らず常に客数増にフォーカスしてきたのは、この戦略に絶対的な自信を持っていたからにほかならない。

原田氏から2014年2月にバトンを受け継いだサラ・カサノバ新CEOも基本戦略は同じ。それゆえ今回の大幅な客数減は、勝利の方程式を根底から覆すに等しいダメージを与えたと言っていい。

崩れる必勝パターン

価格戦略の迷走から経営危機に瀕していた日本マクドナルドを再浮上させたのは、2004年にCEOに就任した原田氏の力量であったのは確かである。
ただ、原田戦略も7年後の2011年にピークを迎え、その後、2年間は一転、2期連続で減収減益となった。要因として指摘されているのが直営店のフランチャイズ(FC)化。本部は、FC化させることで人件費等コストの削減が可能となり、同時に高い利益を享受することが可能となる。

しかし、多くの前例を見てもわかる通り、無謀なFC化は現場レベルでのサービス低下の温床になる危険性もはらんでいる。FC化したすべてに当てはまるとは言わないが、少なくとも、これが原因でリピーター率を減少させた店舗もないとは言えない。このピンチからいかにして脱出するかが、カサノバ氏の腕の見せどころ。

新たな競合”コンビニ”

だが、ただでさえ同社を取り巻く外食環境は厳しい。近年、コンビニが店内にイートインコーナーを設置、欲しいモノだけを単品買いし、気軽に食するというライフスタイルが、多忙なビジネスマンや、お一人様OLにも定着。

また、マクドナルドが「プレミアムローストコーヒー」を擁し、需要を創出した低価格のできたてコーヒーも、今や主役の座は完全にコンビニにとって代わった。並行してコンビニ各社は、中食強化を打ち出し、弁当や総菜、スイーツ等のバリエーションも広げ、従来、弱いとされた女性層や高齢者層の取り込みにも成功している。

ファーストフード業界は景気低迷のなか、大手チェーンの多くは価格訴求力で売上を伸ばしてきた側面は否めない。ただ、ここへ来て低価格一辺倒に飽きてきた消費者も増加、多少価格は高くても、その品質に納得すれば財布の紐を緩める傾向がある。価格訴求のイメージが高かった大手コンビニのプライベートブランドも高付加価値ラインを市場に投入し、売上アップを実現している。

そんななかでは、まず”低価格で集客”というマクドナルドの必勝パターンも以前に比べ威力が半減しているのも確か。新体制になって同社が打ち出した「家族客の取り込み」も、今回の件で成功は遠のいた。
機動力に勝る新たな競合コンビニを相手にいかに戦っていくのか。業績低迷の立て直しを託されたカサノバ体制は誕生後1年を経ずにして早くも正念場を迎えることになった。

アイデンティティーをなくしたら衰退するだけ

日本マクドナルドの創業者である藤田田氏は、最初の出店を銀座にこだわった。それは、野のものとも山のものともわからないファーストフードのブランディングのために必要だったからである。

三越の銀座店長・岡田茂氏(後の社長)を口説いて、超一等地の銀座三越に出店を果たす。そして、私に語っていたのは、米国本社との契約で30年後に上場することが決められていたので、30年後から逆算して経営を行なっている、ということだった。

それを考えると、今の日本マクドナルドの迷走はどうだろう。30年後を見据えて経営をしていた時代からは考えられないほど、行き当たりばったりに見える。変化の激しい時代になったとはいえ、企業のアイデンティティーをなくしてしまっては衰退するだけだ。果たしてこの先どこへ向かうのだろうか。