18歳選挙権解禁後初の衆院選 240万票は3極対立の構図にどんな影響を与えるか

2017.10.10

政治

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18歳選挙権解禁後初の衆院選 240万票は3極対立の構図にどんな影響を与えるか

3極が対立する構図に大きな政局の動きを感じる今回の衆議院議員選挙。実は18歳・19歳が投票する初めての衆議院選挙だ。かねてから主権者教育を訴え、全国の高校・大学に政治に参加する重要性を伝えているお笑いジャーナリスト、たかまつななさんも、この期間、無償で出張授業を行うなど力を入れている。

 お笑いジャーナリスト

たかまつなな たかまつなな

1993年7月5日生まれ。新宿を開拓した先祖を持つ名家に生まれる。フェリス女学院中高卒。2016年、慶應義塾大学卒。現在、慶應大学大学院、東京大学大学院情報学環教育部の2校に在学。2013年に「ワラチャン!U-20お笑い日本一決定戦」(日テレ系)で優勝。お笑いジャーナリスト、お嬢様芸人、株式会社笑下村塾取締役。

たかまつななオフィシャルサイト

Twitter:@nanatakamatsu

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18歳選挙権解禁後、初の総選挙

10日10日、公示日を迎えた衆議院選挙。今回の総選挙は、安倍首相による大義の無い解散、小池都知事率いる新党・希望の党、民進党の分裂によって設立された立憲民進党と、話題が豊富。

それらに隠れてなかなか話題にならないが、実は10月22日は、2016年に18歳選挙権が解禁されてから初めての衆議院議員総選挙の投票日。昨年の参議院選挙に続き、政権選択選挙にも、これまで参政していなかった約240万人の有権者が加わることになる。

自民党の支持者は保守層が主だが、浮動票が要の希望の党立憲民主党をはじめとする野党にとって、18、19歳が持つ240万票はないがしろにはできないはず。

“打倒安倍政権”を掲げる野党が、彼らにとって重要なイシューを掲げているとは言い難いが、初めての投票が、政局が大きく動く可能性のある総選挙というのは、今後の政治への関心度に大きく影響することになりそうだ。

投票率で選挙結果は変わる

かねてから主権者教育の重要性を訴えてきたお笑いジャーナリスト、たかまつななさん。以前、編集長との対談に登場いただいたこともありその活動には注目していたが、今回の総選挙に向けた普及活動にはより力が入っているようだ。

たかまつさんは、9月の解散から投票日までに関東から関西、四国、福岡などの10校以上の高校・大学を巡り(10月6日現在)、1500人以上の受講生に対して、お笑いを用いて選挙に参加する意義を伝える出張授業「笑える!学べる!政治教育ショー」を実施予定。しかも選挙期間中は無償で出張授業を行うという。

10月4日は、十文字学園女子大学(埼玉・新座)に在学する1年生約20人に向けて授業を行なった。

政治教育ショー

「皆さま、ごきけんよう~」

冒頭は、「民主主義とは何か」「リーダーはどのように選ばれるか」など、政治の仕組みについての基本的な内容から。著書『政治の絵本』(弘文堂)にもあるが、少女漫画風の挿絵とともに平易な言葉で語られる政治はなんともわかりやすい。

基本知識を学んだ後は、ワーク形式の「逆転投票シミュレーションゲーム」。与えられた役割を演じるロールプレイングゲームで、大学生たちは18歳~80歳までの役になりきり「50歳以下、選挙権廃止!」をテーマに賛成・反対の意見を交わす。ここで学ぶのは、世代の人口と投票率が選挙結果を左右することだ。

仮に80代、60代が賛成で、40代、20代、10代(18・19歳)が反対した場合、多数決では反対派が勝つが、そこに世代別の人口と投票率を換算すると、反対派は負けてしまう。この逆転劇が起こるのが今の日本の現状だ。

第24回参議院議員通常選挙(平成28年7月)の投票率

10歳代が46.78%、20歳代が35.60%、30歳代が44.24%、40代が52.64%、50代が63.25%、60代が70.07%、70代以上が60.98%。全体では54.70%。 ※総務省より

政治教育ショー2

たかまつさんの授業は、お笑い芸人としての軽妙な語り口もそうだが、ワーク形式が肝なのだと感じる。話を聞くシーンではおとなしい受講者も、ワークになった途端にテンションがガラッと変わり、盛り上がった場面がいくつもあった。

賛成・反対に分かれて意見を言い合うその様子は、議論がヘタ、同調主義といわれる日本人でも、同世代同士なら議論できることの可能性と、その重要性を示しているようだ。受講者も「これまで積極的に政治のことを知ろうとは思いませんでしたが、授業を受けて選挙に参加してみようかなと思いました」と楽しんで学んだ様子だった。

お笑いジャーナリストは3極対立をどう見る?

政治教育ショー3

たかまつさんに、18歳・19歳へ主権者教育をする意義について聞いた。

「今回の衆議院選挙は歴史的にも転換点になると思います。安全保障や憲法など、戦後70年で取り残されてきた課題がたくさんありますし、政局が動く選挙なのでぜひ投票に行ってほしいと思い授業させていただきました」

今回の選挙は、自公与党、希望・維新、立憲民主・共産・社民の3極が対立する構図になっており、大きくは自公連立か否かというのが焦点になっている。たかまつさんは、有権者の立場からすると、良い面があると言う。

「政権交代は、保守の分裂でなければ起きないのだということは都議選のときから感じていました。ただ、有権者にとっても選択肢が増える動きが出たことはいいことだと思います」

では、リベラル派が結党した立憲民主や、野党共闘についてはどうだろうか。

「野党がちゃんと政権を担うのだという政策で一致点を探すのは良いと思います。若い人にマニフェストを読んで政策で一致するところに投票してと言っても、(ひとつの)党の中に政策の違う人がいるというのは説明がしにくいので。やっぱり、政権交代は常に起こる可能性は秘めていた方がいいと思います」

将来的には投票率の低い20代への授業も展開していきたいというたかまつさん。今後、芸人100人を巻き込みたいという「笑える!使える!政治教育ショー」はムーブメントを起こすか?

政治教育ショー4