政治

迷走する民主 新代表はどう立て直す?

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民主党は2015年1月18日の臨時党大会で、新たな代表を決める。代表選には長妻昭元厚生労働相、細野豪志元幹事長、岡田克也元外相の3氏が立候補。党の再建策などを巡って論戦を繰り広げているが、議論はかみ合っていない。「自民党に対抗しうる野党」への再建は前途多難だ。

自民党に対抗しうる政党をどう作る

安倍晋三首相が不意に仕掛けた2014年の”抜き打ち解散・総選挙”。与党は公示前に続いて衆院の3分の2議席を維持。2012年衆院選で惨敗を喫した民主党は3桁の議席獲得を目指したが、公示前より11議席増の73議席にとどまった。

表面的な数字を見ると善戦したようにも見えるが、1998年の結党以来の獲得議席数と見比べれば違った姿が見えてくる。民主党は2000年の初めての衆院選で127議席獲得。自由党と合併した2003年衆院選では177議席と勢力を伸ばした。2005年の郵政選挙では議席を大きく減らしたが、それでも113。次の政権獲得選挙では個別政党として過去最多の308議席を占めた。再び政権の座を手放した2012年は57で、歴史的大惨敗だった。

つまり「2回続けて惨敗した」というのが正しい表現。しかも東京1区から出馬した海江田万里前代表が比例復活もできずに落選。野党第一党の党首が落選したのは、1949年の片山哲・社会党党首以来、実に65年ぶりだった。

与党が強かったから勝った、というわけではない。衆院選後の世論調査では「ほかに投票先がなかったから」との回答が多く、消極的に与党に投票した有権者が多かったことが浮き彫りになった。投票率の低下が、組織力の強い与党に有利に働いた側面もある。
自民党の「一強多弱」をどう打ち破り、自民党に対抗しうる政党を作るか。これが今後の野党にとって最大のテーマである。

岡田氏が一歩リード

代表候補の細野氏が描くのは「野党再編」だ。2014年の衆院選直前には維新の党や旧みんなの党(2014年11月28日解党)と新党を作るべきだと海江田代表に働きかけ、却下された経緯がある。民主党の支持母体である日本労働組合総連合会(連合)内には労組を敵対視してきた橋下徹大阪市長への警戒感が強いため、橋下ら大阪系を除く維新の党議員らと新党を作る構想もあった。

今回の代表選では党内から幅広い支持を得ようと表向きは再編論を封じているが、細野氏の推薦人には長島昭久氏や松本剛明氏ら積極的な再編論者が名を連ねる。「一度信頼を失った『民主党』の名前には限界がある」として、党名変更を公然と主張する声もある。細野氏が代表に就任すれば、中長期的に維新などとの再編を目指すことになるだろう。

これに対し、岡田氏は緩やかな野党連携を主張する。岡田氏は2014年の衆院選で代表代行として野党の候補者調整を担当。実際に民主党が土壇場で候補を取り下げた愛知12区で維新の党の候補が選挙区当選を果たすなど、一定の成果を残した。
前回の衆院選では民主と維新の競合区が約20残ったが、今後調整が進めば共倒れを防ぐことも可能。こうした選挙区調整や国会での共闘で自民党に対抗しようというのが岡田氏や、岡田氏を支持する穏健派議員らの考えである。

一方、旧社会党系や労組系の支持を得る長妻氏は自主再建論を主張。集団的自衛権の行使反対などリベラル色の強い政策を前面に出し、自民党との対決色をあらわにしている。憲法改正などを主張する維新の党とは組まず、あくまでも単独での生き残りを目指す。

勝敗のカギを握るのは党員・サポーター。代表選は合計760ポイントを奪い合う仕組みで、所属国会議員と参院選の公認内定者に計265ポイント、地方議員に141ポイント、党員・サポーターに354ポイントを割り振った。つまり全体のほぼ半分を党員・サポーター票が占めており、彼らの投票行動が勝敗を左右する。

メディアの世論調査によると、現状では最も有権者から支持を得ているのが岡田氏。それに細野氏、長妻氏が続いている。岡田氏は国会議員票も手堅くまとめているため、現状では最も有利とみていいだろう。ただ、死角は年末に行った目の手術。岡田氏の行動に限界がかかるなか、細野、長妻氏がどれだけ全国を飛び回って支持を拡大できるかが勝負の行方を決める。

党勢低迷の要因は政策不一致

3候補が党の再建に必要なものとして口をそろえるのは、党内における意思決定プロセスの改革だ。与党時代には震災対応や消費増税をめぐって方針を一致させることができず、党内のゴタゴタや分裂を招いて支持率が低下。野党転落後も安保政策などに関して明確な方向性を打ち出すことができず、党勢低迷の要因となっている。

ただ、これにはガバナンス(統治)の問題だけでなく、所属議員の政策の不一致に根本的な原因がある。民主党には、岡田氏のような元自民党から輿石東参院副議長のような旧社会党まで幅広い議員がおり、思想や政策まで多種多様。現状の寄せ集め集団のままで安保政策や憲法改正など重要な政策の方向性を決めるのは難しく、自民党のように「いったん決めたことには全議員が従う」システムとすれば、再び党の分裂を招きかねない。

2015年の国会では集団的自衛権の行使容認に向けた法整備など重要な論戦が控えている。新代表は分裂覚悟で徹底的に議論し、党内の方向性をまとめられるかが焦点となる。党内の方向性がまとまらなければ再編機運も高まらない。
4月には党の組織力を左右する統一地方選、2016年の夏には参院選がある。野党再編を目指すにせよ、自主再建するにせよ、新代表に残された時間的余裕は少ない。

民主党は時代の徒花か

民主党が本当にもう一度政権交代を望んでいるのであれば、いつまでも労組依存だけでは勝つことができないだろう。労組依存のために改革はできないだろうと見られたから国民に支持されなかったのだろうし、それがまだわかっていないところに限界がある。

今回は守旧派対新体制派の争いで、守旧派の方が多数いる。活発な議論をして党内の活性化につなげるのならいいが、どうもそうは見えない。
民主党は、このままでは自民党の55年体制の反省を促すためだけの党で、存在価値のなくなった時代の徒花(あだばな)で終わってしまう。中堅には優秀な人材もいるのに、いつまでたっても新たな名前が出てこない……。残念な党だ。