社会

イスラム国の標的に 試される日本のテロ対策

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20日、イスラム国を名乗るグループが、拘束している日本人2人を人質にとり、身代金を要求する映像がネット上に流れました。身代金は2億ドル(約236億円)で、イスラム国の被害を受けているシリアやイラクなどの国に対して、安倍政権が人道支援を目的に拠出する金額と同額。

安倍政権は人命第一で人質解放に全力を挙げる一方、「決してテロに屈しない」と姿勢を崩すことはなく、各国と連携してテロ対策の取り組む意を表明しています。

ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説

Q.ついに日本人がイスラム国の標的になりました。日本得意の人道支援でこのまま対策をとっていくんでしょうか? 各国と連携って何をするんでしょうか?

A.今後は政府の判断だけど、テロリストと交渉すれば同じ手法でエスカレートしてくる。

 残念ながら返してもらえる保証もないし。一度交渉に応じて、次に5千億ドル要求されたら? 交渉するときとしないときの境目は? と世論も畳みかける。
 1977年のダッカ日航機ハイジャック事件で、福田赳夫首相がハイジャック犯の要求を飲んだときも、人質が返ってきたにもかかわらず世界から相当なバッシングがあったから。

 日本の立ち位置としては、国際社会の一員として英米と同歩調を取らざるを得ないんじゃないかな。各国と連携とは、情報の交換やテロリストたちへの対応を同一にしようということ。交渉には応じない、という(スタンスを取る英米各国と同一行動をとる)のも連携。

 イスラム国の資金源になっている油田も密輸してるから、麻薬の資金源と同じように断つのが難しい……。断つ努力はしていると思うが。

Q.「テロ」と言っていますが、暴力による脅迫しかしないイスラム国に政治的な理念はあるんですか?

A.自分たちが信仰する「スンニ派」の考えのもと、理念はあるんじゃないかな。

 そもそもイスラム国とほかのイスラム圏に違いはないと思う。運用する方法が異なるだけ。集団的自衛権だって憲法だって解釈の違いで見方が変わっちゃうじゃない? 宗教の解釈も都合のいいように解釈してしまえば、自分を正当化できる。

 例えば他教は邪教だと解釈すれば、他宗教を崇拝する国はみんな敵だ、ということになる。暴力を肯定する宗教なんて聞いたことないけど。いずれにしろ、イスラム国は宗教の教義で自らを正義のように振舞い、不平不満を周囲にぶつけてるだけの独りよがり野郎だ。

 僕はお互いに暴力で解決できることは何もないと思う。でも、だからといってイスラムの教えを否定したり、風刺したりするのはどうだろう。たぶんそれも解決策にはならない。

 極端な貧富の差をなくす政治的努力や、文化的な違いを理解することがないと、テロはいつまで経ってもなくならないと思う。
(佐藤尊徳)

[参考:「『イスラム国』日本を標的 2邦人殺害警告、2億ドル要求 中東政策に試練」(日経新聞朝刊1面 2014年1月21日)]

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