戦後70年の節目を迎える今年。歴史や領土に関心が集まることから、政府は4月7日、島根県・竹島や沖縄県・尖閣諸島などの領有権をめぐる対外発信の強化策を発表しました。
これまで地元の図書館や各研究機関に分散していた、日本の領有権を裏付ける資料約1500点を一元化したデータベースを作成して公開。また、外交・安全保障に関するシンクタンク・日本国際問題研究所のHPには、日本の領有権の正当性を説明する有識者論文4本の英訳を載せるほか、岸田文雄外相が7日の閣議で報告した2015年度版【外交青書】も、06年以来の英語全訳を行う方針です。
こうした戦後70年の”外交戦”に対して、中韓も素早い反応を見せています。
文部科学省による教科書検定で、中学の社会科の教科書すべてに「尖閣諸島は日本の領土である」と明記されたことに対して、中国外務省は「日本国内の動向に重大な懸念」と不快感を示しました。
一方、韓国外務省は15年度版【外交青書】について、「教科書に続き歴史に逆行する行為を繰り返した」との声明を発表しています。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q国際社会への正当性主張というのは比較的大人しい外交戦法のようにも見受けられますが、教科書改定も合わせると、結構強気ですよね?
Aそうだね。安倍内閣の意向が色濃く反映されてる感じだね
昔は中韓に抗議を受けないようなバランスを取った教科書だったし、そんなに政府の意向が反映されることはなかったのだけどね。今でも公平・中立ということにはなっているけど、教科書検定は最終的に文部科学大臣の認可が必要だから政府の意向が反映されやすい。
安倍総理は「アンシャンレジーム(旧体制)」打破を目指していて、第1次政権で教育基本法の改正を行ったくらいなので、戦後教育を改革する思いは強い。
正当性主張は大人しいと言うけど、領土問題について他国は不介入だから、中韓へ向けてのメッセージだとしたら結構挑発的なんじゃないかな。
Q前回【外交青書】が全訳された9年前には何があったのですか?また、そもそも【外交青書】とはなんですか?
A【外交青書】とは、毎年外務省が発行するその年の国際情勢や日本の外交に関しての報告書のようなもの。
日本の立場などを国民にも認知してもらうために発行するもので、英訳しなくてもいいのにわざわざ英訳するということは、国際社会に訴えたい、ということなんだろうね。
9年前もやはり、戦後60年の歩み、という区切りの年の英訳導入だったようだ。今回ほど話題にもならなかったし、そんなに国際社会への訴えという感じではなかったと記憶してる。今回は安倍首相の意向が非常に色濃く出ているね。
(佐藤尊徳)
[参考:「領土の情報発信を強化 政府、竹島・尖閣諸島で理論武装」(日経新聞朝刊4面 2015年4月8日)]
[わかるニュース]
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