ロシアのプーチン大統領が、イランへの高性能地対空ミサイル「S300」の禁輸措置を解除する大統領令に署名しました。
国連安全保障理事会は、核開発疑惑を抱えるイランに対して2006年から何度も経済制裁を行っていて、アメリカやイスラエルは、ロシアにミサイル供与の見送りを要請していました。
そんななかでロシアが禁輸措置解除に向かったのは、米英独仏中ロとイランが、イランの核問題をめぐる枠組み合意をまとめたから。その内容は、イランが核能力を制限し、抜き打ち審査を受け入れる態勢を確認できれば制裁を解除するというもの。
ロシアは「売却環境が整った」と判断しましたが、米欧はイランが合意を履行するまで制裁を解除しない方針のため、強い反発がありそう。イランが「S300」を導入すると、対立するイスラエルの空爆作戦は困難になり、軍事バランスが変わる可能性も指摘されています。
ロシアにはイランへの経済・軍事両面での影響力を拡大する思惑があるようで、欧米が禁輸対象としているイラン産原油とロシア産穀物のバーター取引を開始。2014年から続くウクライナ危機を通して、プーチン政権が欧米への配慮を捨てつつあるとの見方もあります。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q記事中にイスラエルの空爆作戦とありますが、そもそものイランとイスラエルの対立にはどのような経緯があるのでしょうか?
Aもともとはイスラエル対中東諸国(アラブ人)と考えた方がいい。
ユダヤ教が多いイスラエルは、中東の中でもほかの国と宗教が違う異質な国。かつてパレスチナ人とユダヤ人は一緒の地に住んでいたが、ナチスのホロコーストなどで迫害を受けたユダヤ人が、イスラエルに国家を樹立。それが今のパレスチナとイスラエルの紛争の元だ。
もともとの構図としては、イスラエル対アラブ諸国。イスラエルはアメリカの後ろ盾もあり、敵国に囲まれた地理からも、核武装しているであろうことは公然の事実。
イスラエルは圧倒的な武力でこの地に居続けないと、いつ迫害されるかわからないので、アメリカの敵で核武装の危険があるイランと対峙してるんだ。その前はイラクと対峙していたし、対アメリカとの関係によって中東の各国と敵対関係になっている。
単一民族の日本人にはなかなか理解しにくいところだよね。
Qアメリカとキューバの歩み寄りのニュースがあっただけに、アメリカ側が進めた冷戦構造後の時計をロシア側が巻き戻したような印象を受けます。ウクライナ問題など、なぜロシアは孤立を深めていくのでしょうか?
Aロシア対欧米、という構図がある以上、ロシアとしては引けないんじゃないかな。
親ロシアだったキューバがアメリカと手を握ったとなれば、これからも反米の国が親米になってもおかしくはない。そうなると、ますます孤立化してしまうので、その前にくさびを打っていく必要があるのでしょう。
(佐藤尊徳)
[参考:「イランへのミサイル禁輸 ロシアが解除」(日経新聞朝刊7面 2015年4月14日)]
[わかるニュース]
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