なぜ、日本の銀行は儲からないのか このままでは構造不況業種の仲間入り

2015.5.11

経済

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メガバンクは2015年3月期決算で過去最高益を更新する見通しだ。トップの三菱東京UFJ銀行の実質業務純益(本業の儲け)は、初めて1兆円を超えるとも見られている。要因はいくつかあるが、最も大きいのはアベノミクスによる大幅な株価上昇や金利の低下に伴い、銀行が保有する企業の株式や国債などの有価証券に膨大な含み益が生じているため。その売却益が収益を下支えするが……。

なぜか冴えない銀行幹部の顔色

これまで予防的に積んでいた引当金が、企業業績の回復などから必要額が減り、巨額な”戻り益”となってメガバンクの収益を底上げ。さらに、海外の銀行や貸出資産を買収するなどした外貨建て資産が円安で膨れ上がっている。外貨建て資産は利回りも高く収益に大きく寄与。メガバンクの海外部門収益は早晩、全体収益の半分に達するとみられている。
邦銀各行は”この世の春”を謳歌しているように見えるが、なぜか銀行幹部の顔色は冴えない。中には「このままでは銀行は構造不況業種の仲間入りしかねない」(メガバンク幹部)と危惧する声まで聞かれる始末だ。

その根底には、国内での収益力の著しい低下があり、本業の儲け(コア業務純益)が下げ止まる気配はない。預金と貸出の差である”利ザヤ”は限りなくゼロに近づいており、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行ですら2004年9月期の総資金利ザヤはマイナスに沈んでいる。貸出を伸ばせば伸ばすほど利益が食いつぶされる構図は、恐怖以外のなにものでもない。

住宅ローン金利は「もはや事務コストや優遇金利を加味すれば利益が上がらない金利水準」(メガバンク幹部)という。背景にあるのは、日銀の異次元緩和による長期金利の低下と、金融機関の競争の激化だ。

一方、「企業の資金需要が盛り上がりを欠くなか、個人の住宅ローンは数少ない有望市場だった」(同)といわれ、未だ金融機関の競争が収まる気配はない。「ほぼ利益が見込めない住宅ローン市場で、少しでも焦げ付きが発生すれば赤字に転落する金融機関が出かねない」(金融庁関係者)と懸念されている。

黒田総裁の言うことにゃ

2015年2月12日の経済財政諮問会議での黒田総裁の発言に金融界は驚きを隠せないでいる。田総裁のオフレコ発言は衝撃的だ。

「欧州の一部は日本国債を保有する比率を恒久的に引き下げることにした」

安倍首相が消費増税の先送りを決めたのを受け、日本国債の格付けが引き下げられた。これを受け、欧州の一部は日本国債の保有はリスクが高いと判断し比率引き下げに動いたというわけだ。

さらに、「実はドイツ、アメリカ、イギリスなどが強硬に、銀行が自国の国債を持つことについても資本を積むべきであると主張している。日本やイタリアが反対しているためなかなか合意に至らないと思うが、ドイツや米国が自国でそういった規制を導入する可能性がある」と、国際会議の舞台裏を明らかにした。

オフレコ発言のすぐそばにある危機

BIS(国際決済銀行)でも、国債はデフォルトする可能性がゼロの商品と位置付けられてきた。しかし、2009年のユーロ危機を契機に、国債の信用に疑問符が付き始めている。今やギリシャ国債がデフォルトする可能性は皆無ではなくなってきている。

そして、日本はGDP(国内総生産)の2倍を超す約1000兆円の国債を、イタリアもGDPとほぼ同額の国債発行残高を抱える。そして、その国債の大半を保有しているのは自国の銀行にほかならない。

国債はリスクがあるために相応の資本を積まなければならないとなれば、銀行は国債の売却に動く可能性が高く、金利は急騰しかねない。どうにか均衡を保っている日本やイタリアの財政は破綻の淵に立たされよう。

楽天やLINEに置いてけぼりを食らう銀行の行く末は…

銀行にとって国債など海外の規制強化を外憂とすれば、内憂は異業種からの浸食であろう。ある地銀幹部は次のように指摘する。「Suicaのような新しい決済手段も普及し、事業会社の銀行参入が当たり前なのに、われわれは異業種に出ていけない、モラルハザードが起きている」。

コンビニエンスストアでの公共料金の支払いが広がるなど、銀行の本来業務である「決済業務」が他業態に浸食されている。特にEコマース(電子商取引)が社会に広く浸透するなか、商流と決済を一体化したサービスが急速に伸びてきており、業務制限のある銀行は置いてきぼり状態だ。楽天のネット通販の年間取扱高は2兆円を超え、無料通話・無料メールアプリを提供するLINEも2014年12月に電子送金・決済サービスを開始した。

金融庁・金融審議会のある委員は次のように示唆する。「金融環境は大きく変わり、これまでの(銀行の)ビジネスモデルは成り立たない」。銀行も進化しなければ生き残れない岐路に立っている。

利益の大半は社会に還元しろよ

免許事業者(参入障壁が高い)である銀行が、利益の極大化を目指すことが理解し難い。経済の血流である銀行の多くは、金融危機時に公的資金が導入されることもしばしばだ。利益を上げるには、顧客に負担を負わせるということと同義。お金を貸して感謝されることもあろうが、その利益の大半は社会に還元しろよ、と思うのは私だけだろうか?

それに、邦銀は平均給与が高いので、外資系との競争に勝てないのだ。外資系金融機関は、非常に給与が高いイメージだが、メリハリがついていて、万遍なく高いわけではない。

だいたい利用者の利便性を図らずして儲からないのは仕方がない。そういう経験をした私からしたら、そんな企業はいらないとさえ思うが。