6月7日からドイツで行われている主要7ヵ国(G7)首脳会議(サミット)で、安倍晋三首相は今後5年間で1100億ドルに上る”質の高い投資”をする政府方針を説明。中国に対し経済面でのけん制姿勢を見せました。
安倍首相はサミット内で”G7としてのあり方”を力説。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を警戒した上で、「力による現状変更などの脅威にグローバルな視点で対応できるのはG7だけ」と連携を訴えました。
AIIBは運営方針や投資基準などが不透明であることが懸念されていて、創設メンバーに名を連ねているイギリス、ドイツ、フランス、イタリアに釘を刺した形になります。首相は「参加している国を批判するつもりはない。緊密な連携をとろう」とも述べ、日米は外から、欧州勢はAIIB内部から中国に対応していきたい考えを表明しました。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Q欧州各国の関心はどちらかというとウクライナ問題の方にあるようですが、安倍首相の考える「外からの日米、内からの欧州」という構図は実現するのでしょうか。
A日本の思惑通りに行くかどうかはわからないけど、そうなるんじゃないかな。
中国が脅威であることは各国とも変わらない。ただ、近隣国であり歴史問題(尖閣の領土問題など)を抱える日本と欧州は思いが違う。
アメリカは覇権主義(自国の利益だけを考えること)の中国を警戒しているけど、欧州は経済的な結びつきもあり、中国と正面から”こと”を構えたくない。それぞれ思惑が違うので、日本が考えるような中国包囲網にはならないと考えられる。
これから日本がどのように中国と付き合っていくのか真剣に考えていかないといけないよね。対峙していくのか、手を携えていくのか。
Q日本のインフラは”質”を強調しますが、対する中国は日本と比べてどうなのですか?
A日本は実績があるから”質”を強調するけど、中国主導が質において劣るかどうかはわからないよね。
南シナ海の埋め立てなど、中国の覇権主義は日本にとってもかなりの脅威だが、57ヵ国も参加したAIIBが質で劣るのかは投資が始まってみてからでないと判断はできないよね。
アジア開発銀行は、総裁も日本がずっと独占してきたので、中国が面白くないと思っても何ら不思議じゃない。日本もこの利権を上手く利用してきたのは間違いないのだから。
(佐藤尊徳)
[参考:「首相、中国けん制 アジア投資銀参加 欧州勢にクギ」(日経新聞3面 2015年6月8日)]
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