元民進党のリベラル派が立ち上げた立憲民主党が”予想外”に支持率を伸ばしている。衆院選の情勢調査では与党、希望の党に次ぐ第3勢力となる勢いで、元民進の無所属議員と合流して野党第一党になる可能性もある。最近は”リベラル政党不要論”も囁かれてきたが、今もニーズがあるのか。かつての55年体制のように、再び保守・自民党とリベラル政党の2大政党に向かっていくのだろうか。
2大政党体制を崩した小池都知事&前原氏
戦後、日本の政権は保守政党である自民党が担い、リベラル政党である社会党が野党第一党であり続けた。しかし、1993年に自民党が野党に転落すると、55年体制は崩壊。野党再編を経て2000年代は自民党と民主党による2大政党体制となった。大半は自民党が公明党とともに連立与党だったが、2009年から約3年間は民主党が政権の座を担った。
今回の衆院選で、20年近く続いてきたこの体制を一気に崩したのが小池百合子都知事と民進党の前原誠司氏だ。
民進党内でも保守派で知られる前原氏は今年9月、蓮舫氏の後任として民進党の代表に就くと、小池氏が立ち上げた希望の党への合流を表明。次期衆院選には民進党から候補者を出さず、全候補者の希望への合流を目指すとして党内の理解を得た。
しかし、実際には憲法改正や安保法制への賛成という”踏み絵”を迫り、リベラル系やベテラン議員を排除。民進党を真っ二つに切り分けた。「政治思想がバラバラ」という民主党時代からの最大の課題を、一瞬で解決した格好だ。
希望の党の支持率は急落の誤算
小池、前原両氏の狙いは「保守系改革政党」の樹立。かつてのみんなの党や日本維新の会が志向した路線だ。2人の狙いは的中したかのように見えたが、誤算があった。
小池氏が「(リベラル派は)排除する」と発言したことがきっかけで、小池氏への反感が広がり始めたのだ。希望の党の支持率は急落し、逆に排除された議員たちが立ち上げた立憲民主党への期待はうなぎのぼり。
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— 立憲民主党 (@CDP2017) 2017年10月2日
大手マスコミの世論調査では、希望の党と立憲民主党の支持率が並ぶ水準まできた。同じく希望の党から排除された無所属議員の多くも全国で健闘している。
立憲民主党は準備不足から候補者数が78人にとどまったが、マスコミの情勢調査によると「40議席台後半も視野にはいってきた」という。選挙後に民進党出身の無所属議員や民進党に残った参院議員らと合流すれば、希望の党より大きな勢力となる可能性がある。
なぜ、立憲民主党への期待が膨らんでいるのか。主な理由は小池氏への反感が広がったこと、そして枝野幸男元官房長官ら立憲民主党のメンバーへの同情が広がっていることだ。日本人は源義経や西郷隆盛のように敗戦覚悟で筋を通す”侍”に弱い。
揺り返す保守&リベラルのニーズ
しかし、立憲民主党への期待が膨らんでいる最大の理由は、安倍政権の立ち位置にある。自民党も旧民主党と同じく右から左まで、つまり保守からリベラルまでさまざまな思想の議員がおり、安倍晋三首相は党内で”最右翼”に位置する。
政治的には時の与党が左右どちらかに寄れば寄るほど、逆のポジションが空くと言われる。安倍政権が憲法9条改正など保守的な政策を掲げれば掲げるほど、リベラル的な政策のニーズが高まるのである。
ただ、この状態がいつまでも続くとは限らない。安倍首相の後継として最有力視されているのは岸田文雄政調会長だが、岸田氏は党内きってのリベラル派として知られる宏池会の会長。仮に岸田政権が誕生すれば、今度は野党に保守的な政策が求められる可能性がある。55年体制のように保守与党とリベラル野党の図式がこのまま続くとは考えにくい。
小池氏への期待が急激にしぼんだこと、そして安倍首相が保守的な政策を推し進めている今だからこそ、立憲民主党への期待が高まったが、これは一時的なブームとみるべきだ。そもそも国民の大半は、戦後から続く”右対左”の論争に辟易としている。内心で人々は、経済政策や社会保障政策をめぐるまっとうな議論、そしてまっとうな議論をする政党を待ちわびている。