6月22日で日韓国交正常化50周年を迎えました。21日には岸田文雄外相と韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が都内で会談し、関係改善へ努力することを確認。世界遺産登録問題についても双方が登録に協力することで合意しました。
これまで韓国は「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録について、一部施設で植民地時代に朝鮮半島出身者が強制徴用された歴史があるとして反対。一方、日本は産業遺産の対象は強制徴用とは時期も背景も異なるという立場で、意見対立が続いていました。今後は、韓国の推薦する「百済歴史遺跡地区」と協力して世界遺産登録を目指していきます。
また、日中韓での3ヵ国首脳会談を年内早期に実現することも申し合わせました。その際に、これまで行われてこなかった安倍首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領の初の2国間の首脳会談を開くことも検討します。
明治日本の産業革命遺産
九州5県と山口、岩手、静岡に広がる産業遺産群。19世紀末~20世紀初頭に日本が近代産業国家になったことを示すとして、日本がユネスコに推薦したもので、「軍艦島」(端島)などを含む23資産で構成されている。
ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説
Qこれまで韓国がかたくなに反対してきた「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録ですが、なぜ相互協力という形に転じたのですか。
A本音では、日本と決裂まではしたくない。落としどころを見つけた、という感じかな。
韓国は経済的にも日本との決裂を望んでいるわけじゃない。結びつきが以前よりも低下しているとはいえ、隣国の日本と絶交することまでは求めてないから。だから朝鮮人の強制徴用事実を反映する、という日本側の妥協にうまく乗って、国内世論的にも落としどころをつけた。
重要度が下がっているとはいえ、日本との関係が悪化すれば、日韓関係を気にしているアメリカにも顔が立たないし、以前から修復したいと思っていたはず。日韓国交正常化50周年のこの時期を大義名分にした、ということ。
Q朴槿恵大統領との首脳会談はなぜこれまで行われてこなかったのでしょう?
A支持率が下落し続けて、日本の首相に会う余裕がなかったから。*
韓国にとって日本というのはいろんな意味で重要な国。仲良くし過ぎれば、内政的にたたかれるし、離れ過ぎれば、経済的には厳しくなるし。ということで、歴代大統領もその関係に苦慮してきた。
朴大統領はたまたま就任直後から経済指標も落ち気味になったし、国内世論が厳しい状況になった。また、セウォル号の沈没の対応などで批判にさらされるなどしてきた。
歴代韓国大統領は、日本を仮想敵にすることが自分へ矛先が向かわない一番簡単な手段と考えてきたけど、それ以上に韓国経済の落ち込みが激しいので、日本と関係修復する大義名分のある今、手打ちをしよう、となったのでしょう。
(佐藤尊徳)
[参考:「日韓関係改善へ努力 世界遺産登録で協力」(日経新聞朝刊1面 2015年6月22日)]
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