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パナソニック 細菌数測定装置「細菌カウンタ」 細菌の定量測定を身近にする

2014.01.10

技術・科学

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パナソニックが開発・商品化した「細菌カウンタ」は、例えば、口腔内の細菌数をたった1分※1で測定するという測定装置である。

※1 測定環境により測定時間が異なることがあります(最大で約1分30秒/回)

歯周病予防のニーズから生まれた

人間の口腔内には、700種類を超え、100億個を超えるほどのたくさんの細菌が潜んでおり、適切にケアをしないと1兆個になるとも言われている。近年、日本人が歯を失う原因として、虫歯以上に歯周疾患、いわゆる歯周病が挙げられている。

歯周疾患は、初期段階での自覚症状がほとんどないため発病に気付かない人が多いが、厚生労働省の調査では、日本人の55~74歳の歯周疾患の罹患率は約50%といわれている(2005年調査)。また、歯周疾患は歯を失うだけでなく、肺炎や糖尿病、心筋梗塞などさまざまな疾患の引き金になるともいわれている。

歯周疾患の目安となる口腔内の細菌数の定量評価には、大学や研究所、民間の微生物検査会社などの専門機関で、細菌培養装置を用いた培養法による細菌の検査、測定が一般的に行われている。

しかし、シャーレ上に検体を塗布し、インキュベータという装置を使用して一定温度で巣細菌を増殖しコロニー(集落)数をカウントする培養法では、1回の測定に2日(48時間)以上かかる場合もあり、時間的にも費用的にも測定への負担が大きく、これまで臨床の現場で細菌数を測定し、その結果をもとに判断をしたり処置をすることは非現実的なことであった。

2011年に制定された歯科口腔保健法、さらに2012年4月から施行された周術期口腔機能管理の保険点数付与などにより、口腔内の衛生環境を定量的に評価するための細菌数を測定したい、というニーズが急速に高まり、細菌数測定機器の発売への期待が高まった。そのような背景のもと、パナソニックが歯科医・大学研究機関と協力して開発していた細菌カウンタを、製品として2012年5月25日に販売を開始した。

迅速、簡単、高精度な細菌数測定が新たな価値を生む

細菌カウンタによる細菌数の測定は、今まで実現できなかった細菌数測定を身近にすることで潜在的なニーズが掘り起され、新たな価値を創造することにもなっている。

虫歯や歯周病(歯肉炎や歯周炎)は細菌感染症のひとつであり、予防するためには歯ブラシや歯間ブラシ、糸ようじ、舌ブラシなどでのセルフケアが一般的である。歯科クリニックや歯科健診では、フッ素を塗布したり歯石を取ったりすることで予防をしているが、これらのセルフケアの主の目的は細菌数を減らし感染を防ぐためのものである。こうした際に、細菌の存在を定量的に示すことで予防の必要性、重要性を啓発することに使用されている。

また、免疫力が低下した状態である癌や全身麻酔を必要とする手術の前後では、肺炎予防や手術後の早期の回復を期待して、口腔内の清掃(口腔ケア)を行うが、その際の口腔内の細菌数を減らすことが重要とされており、医療現場での活用が始まっている。

歯科クリニックや職域での歯科健診においては、口腔内の細菌数をその場で健診受診者へ示すことができるため、口腔の状態の診断と細菌数による客観的な指標を用いて口腔衛生指導のアドバイスを行なったり、口腔内の細菌が全身疾患との関連があることの啓発を行う、といった取り組みが始まっている。

細菌カウンタの使い方

細菌カウンタの使い方は、現場での使用を考慮していて、いたって簡単である。特に、長時間の研修や教育・トレーニングは不要である。

まず、本体にセンサーチップと純水が入ったディスポーザブルカップをセットする。次に専用の滅菌綿棒を用いて、被測定者の測定対象部位(たとえば舌)をこすり検体を採取する。このとき、滅菌綿棒に付着する検体量は、こするときの圧力に影響を受けるので、細菌カウンタに付属の「定圧検体採取器具」を使用する。その後、検体の付着した滅菌綿棒をディスポーザブルカップにセットし、ふたを閉じるだけである。

※一回の測定当り、ディスポーザブルカップ1個、センサーチップ1個、細菌カウンタ用滅菌綿棒1本が必要。

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測定消耗品 DU-AC02NP-H
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定圧検体採取器具 DU-AE01NT-H

ふたを閉じると、細菌カウンタの内部ではディスポーザブルカップの回転によって、水中へ細菌を浮遊させた状態で攪拌が開始される。その後、DEPIM法による細菌数測定を開始。細菌数を算出後、ふたが開くと同時に測定結果が本体表面の液晶ディスプレーに培養法とほぼ同等な数値として表示される。また、7段階のフェースマークで細菌数のレベルを表示する。なお、細菌数はディスポーザブルカップの水中1ml内の細菌数(細菌濃度)である。

DEPIM法

パナソニックの独自技術。DiElectroPhoretic Impedance Measurement(誘電泳動インピーダンス計測)の略。

細菌数の測定結果は、本体内部に測定日時とともに記憶される(最大5,000件)。このデータは、パソコンを接続して取り出すことができるので、研究や業務での有効活用ができる。

なぜ1分で測定できる?細菌カウンタの測定の原理とは?

この技術はそもそも1990年代後半にさかのぼる。当時、浴槽のレジオネラ菌が社会問題になり、その迅速な細菌検査を実現したいというニーズがあった。このニーズを解決するため九州大学とパナソニックとの共同研究によって、1分で細菌数を測定できるという測定原理を開発した。その測定原理は、当時既に知られていた誘電泳動と、さらに新たにインピーダンス計測における抵抗値の変化率を組み合わせた、パナソニック独自の細菌検出技術であり、その名を「DEPIM法」と名付けた。

パナソニック独自の細菌検出技術、DEPIM法とは?

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細菌に電圧をかけて捕える「誘電泳動」を利用した、パナソニック独自の測定技術DEPIM

具体的にDEPIM法とは、精製水の中に細菌を浮遊させた状態で水中に配置した微細電極に交流電圧をかける。その時、細菌が瞬時に分極し、細菌が微細電極に集まってくる(トラップ)。交流電圧をかけた直後の交流インピーダンス(キャパシタンス成分)のわずか数十秒間の時間的変化率が、細菌の濃度(具体的には1ml当たりの細菌数)と見事に比例することから、細菌数を算出(換算)する、という技術である。

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開発したこの測定原理の技術を使用し、2001年頃から、まず口腔内細菌数の迅速測定を実現するために製品化したのがパナソニックの「細菌カウンタ」である。実験室でない現場でも、簡単に、特別なトレーニングも不要で、誰でも細菌数を測定・確認ができる細菌数測定装置として約12年間の開発期間を経て、2012年5月25日に発売された。

DEPIM法はグローバルでも高く評価

この新しい細菌数測定の技術であるDEPIM法については、2012年11月に、ある論文が英国工業技術学会(IET:The Institution of Engineering and Technology)から「IET ナノバイオテクノロジープレミアムアワード(IET Nanobiotechnology Premium Award)」を受賞している。その論文とは、パナソニック ヘルスケア株式会社の濱田了(はまだ りょう)氏が九州大学、日本歯科大学の教授らと共同発表した論文「DEPIM法に基づいた迅速な口腔内細菌測定装置の開発」である。

次の5名による共同受賞

濱田 了 (パナソニック ヘルスケア株式会社)

末廣 純也 教授 (九州大学 大学院システム情報科学研究院 電気システム工学部門)

中野 道彦 助教 (九州大学 大学院システム情報科学研究院 電気システム工学部門)

菊谷 武 教授 (日本歯科大学 大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学、口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長)

古西 清司 教授 (日本歯科大学 生命歯学部 微生物学講座)

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受賞した濱田了氏

今後の展開

口腔衛生の重要性は、自分の口で食事をし、健康であり続けるために重要であるばかりでなく、全身の疾患の予防、さらには手術や看護、介護のなかにおいても、口腔ケアがますます重要になってくる。予防の場、治療の場、看護の場、介護の現場のニーズにいち早く対応した細菌カウンタは、新しい価値、ソリューションを生むきっかけとなる。B to B事業にシフトすることを発表したパナソニックの先進的技術を搭載した商品である。

政経電論せいけいでんろん

「政経電論」の編集部です。佐藤尊徳(そんとく)編集長の下、若い世代に向けて政治・経済・社会問題を発信しています。イノベーションや働き方改革、北欧型の社会保障、国防、原発、クジラ等に注目中。

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