佐藤尊徳が聞く あの人のホンネ

SNS株式会社ファウンダー 堀江貴文「自分がいいと思うことは、どんな人にとってもいいことだと思う」

2014.3.10

経済

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写真/若原瑞昌

本当はとても情緒的なのに、「ビジネスには情緒が必要ない」という堀江さん。前号ではテレビの今後を語ってもらったが、今回はその続き。メディア全体が変わらざるを得ないだろうと感じさせる対談だった。

【前編】堀江貴文「仕事に情緒的なことを持ち込まない」

株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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SNS株式会社 ファウンダー

堀江貴文 ほりえ たかふみ

1972年10月29日、福岡県八女市生まれ。東京大学中退。元株式会社ライブドア代表取締役CEO、現SNS株式会社ファウンダー。1996年、東京大学在学中に後のライブドアとなる会社を起業し、2000年、東証マザーズ上場。インターネット関連事業で躍進する一方、大阪近鉄バファローズ買収、ニッポン放送買収騒動で注目を浴びる。2006年1月に証券取引法違反で逮捕され、懲役2年6ヵ月の実刑判決を受ける。2013年11月10日刑期満了。フォロワー約100万人のTwitter、メルマガ「堀江貴文のブログでは言えない話」を通して情報発信し続けている。『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』(ダイヤモンド社)が発売中。

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「人は自分が参加できるものにお金を払う」

尊徳 ライブドア時代にテレビ局を買おうとした時代から、テレビ局は何も変わらずにいました。

堀江 生のスポーツ中継や、ライブ映像を流すことがネットとの住み分けだと思うのに、つまらない番組を流している気がしますよね。視聴率のくびきから逃れられないから難しいでしょうけど。

それに、デジタルコンテンツにお金を払わなくなってきているので、コンテンツ事業者はビジネスモデルの転換をしなければなりません。音楽業界で、CDが売れなくなっていることを考えればよく理解できます。

尊徳 そんなこと言われると、僕がやっている電子雑誌なんか難しいじゃない(笑)

堀江 ……。

尊徳 (汗)……。話戻って、(コンテンツ事業者が)いつも生中継をするのは物理的にも無理ではないですか?

堀江 完全な生放送でなくとも、ネットの番組などでは、双方向で自分が参加しているというものに(視聴者は)お金を払っています。

尊徳 この雑誌も双方向で、コメントも受け付けているから、参加型のメディアですよ。

堀江貴文インタビュー

「革命的なきっかけがあれば一気に変わる」

尊徳 僕らメディアに対して何か思うことは?

堀江 メディア(media)は中間という意味です。IT化はその中間の伝達者が必要でなくなってきているのです。ネットを通じて、情報提供者とダイレクトでつながれるわけですから。

膨大な情報源から、キュレーション(情報を収集しまとめること)することしかなくなるのではないですか。一次情報源を報道するだけのものは、デジタルコンテンツにお金を払わなくなってきている現代において無価値に近づくと思います。

例えば新聞ですけど、通信社が流す情報は、新聞を読まなくてもネット上から取れるわけです。発信者のホームページでも、Twitterでもフォローすればいいのですから。橋下大阪市長がいい例です。

逆に記者のバイアスが掛かっていない分、直接情報に触れられます。社説などは署名原稿でもないから、多分に恣意的に感じられてしまうので、新聞を読まなくなりました。それでも情報は取れますから。そういう理由で、従来のメディアは世の中のニーズに応えていないような気がします。

私は、有料のメールマガジンでニュースを解説していますし、個々ではいろんな人たちが、さまざまに解説をして一般に受け入れられていますから、無署名で解説がないのでは、新聞は生きていけないと思います。

特に音楽業界などは顕著ですよね。紙の音楽雑誌は青息吐息で、情報はみんなネットで取るようになっています。アーティストから直接配信もされますし。音楽はデジタル化が進んでいるので、音楽メディアもネットが支持されていて「ナタリー」という音楽メディアが非常に伸びています。

それから、ネットの社会では短くコンパクトにまとめないと読まれませんよね。ここは紙媒体とは大きく違うと思います。

尊徳 ネットを駆使する年代が押し上がってくれば変わるのは必然のような気がしますね。

堀江 とはいえ、情緒的なものはありますから、ドラスティックに変わるとは私も思いません。ただ、革命的なきっかけがあれば、一気にいくと思います。

例えば、私が刑務所に入る前はそうでもなかったスマホが、爆発的に普及しました。便利だったので、私は入る前から使っていましたけど、世の中はそれほどでもありませんでした(注:堀江氏はスマホの打ち込みや検索が異様に早い)。だから、流れが来れば本当に早く変わると思います。

「面白いことをやり続けたい」

尊徳 堀江さんはこれからどうしていきたいのですか。

堀江 私もキュレーションメディアを準備していますから、いろんな人を口説いています。乗ってくる人は少ないのですが、そこで面倒だとか思ってしまう自分の熱意のなさがいけないところだと反省しています。

(アップル創業者の)スティーブ・ジョブズがすごいのは、ビジョナリー(先見の明があること)でありながら、面倒なことでも自分で進んでやりましたから。iTunesの成功は、音楽レーベルの経営者たちを自ら説得したからです。私が真似できない所ですね。

尊徳 今までで手掛けていないことで、やりたいことはなんですか?

堀江 やりたいことはたくさんありますけど、医療系のビジネスをやりたいです。究極は不老不死を目指したいですね。それは不可能でしょうけど、寿命を大きく伸ばしていきたいです。

クラウドを使って病院間での連携ができれば、医療費の削減にもなりますしね。ITを使えは簡単なことです。膨大なデータを蓄積しているオンライン問診システムは確立されていて、(自分のデータを入力すれば)9割方の病気はわかります。そこで、本当に医者に掛からなければいけないかどうかわかりますから、大病院での待ち時間の短縮や社会保障費の大幅削減につながります。

尊徳 また既得権の大きな邪魔が入りそうですけど(笑)。堀江さんがビジネスをやるそのモチベーションはどこから来るのですか。

堀江 自分がいいと思うことはどんな人にとってもいいことだと思うからです。(世の中への)不平とか不満もエネルギーになります。

――「たら」「れば」の話に意味はないが、堀江貴文氏がITのない時代に生まれたら何をしていたのだろう?とふと考えた。どの時代でも先見性を持って事を成し遂げただろう。しかし、話をすればするほどIT業界が生んだ怪物だと思った。この能力を日本のために使わない手はないし、微力ながら協力していきたい。

堀江貴文インタビュー
「堀江くん、ぜひ社会を変えていきましょう」(尊徳)